パグ太郎の<昭和の妖しい映画目撃者>

昭和の映画目撃談&時々その他いろいろ

【TATOO<刺青>あり】宇崎竜童のチンピラぶりが最高

当時、見たことなくて、今でも気になっている映画が何本かあります。

その一本がこれ、「TATOO<刺青>あり」(1982)。

天下のキネ旬で年間6位になっているし、ブルーリボン賞のベストテン入りもしてます。

このブログにややふさわしくない(?)、正当な映画ですが、意外と通俗的に面白かったのでご報告します!

 

(あらすじ)

中学生の時に殺人事件を起こし、少年刑務所を出てきた主人公は大阪のクラブで働く。何事も強引に進めていく彼だったが、自分のわがままが原因で恋人に去られたことをきっかけに、銀行強盗へと突き進んでいく・・・

 

この映画は、僕の世代なら知らない人はいないという有名な事件を下敷きにしています。

1979年に大阪で起きた三菱銀行人質事件。30人以上を人質に42時間立てこもり、その間に取った行動が残虐・異常だったことから、昭和史に残る事件でした。

三菱銀行人質事件 - Wikipedia

 

ただし映画では事件そのものは最後にさらっと触れられるだけであり、物語はそこに至るまでの主人公の破滅ぶりに焦点が当てられています。

 

とにかく宇崎竜童さんの破滅的なチンピラぶりが、ハマり過ぎていて最高です。

本業はミュージシャンなのに、実は俳優じゃないの?というレベルの上手さ。

(関西弁も上手いなぁ、と感心してたら、宇崎さんは京都出身なですね。「港のヨーコ、ヨコハマ、ヨコスカ」をヒットさせてるから、勝手に神奈川か東京出身だと思ってました)

他の作品でも宇崎さんの演技は自然体でいいなぁ、と思ってましたが、この作品では「上手い!」と唸ってしまいました。

 

チンピラと言っても、ただの悪いやつじゃないんです。

暴力的だが薄っぺらくはなく、自分なりの理論で動いている。

刺青を見せびらかしながら、「俺はヤクザじゃなねぇ」とイキり、ヤクザを蔑視する。

彼にとっての刺青は、虚勢ではなく、自己主張なんですね。

だから「TATOO<刺青>あり」っていうタイトルなのかな、と思いました。

 

そんな「複雑なチンピラ」を、宇崎さんは共感は得られないけど、この先どうなるか見てみたい、と観客に思わせるギリギリの線で演じています。

これは凄い。

気に入らないと恋人に暴力を振るうくせに、翌朝には自分が殴って出来た痣に優しく湿布を張ったり、彼女が逃げた実家まで夜通し車を飛ばして行って、土下座をして「戻ってきて欲しい」と懇願するような二面性もよく演じ分けてました。

 

そして彼を破滅へと導くことになってしまう恋人役は関根恵子さん。

めっちゃ美人というワケではありませんが、しぐさや立ち居振る舞いがすごく魅力的。

主人公が「二人は運命だから離れられない」と言って、暴力を振るったり、わがまま放題なのに彼女への気持ちが変わらないのに対し、関根さんがどんどん冷めていく様が印象的でした。

 

二人の関係のクライマックスは、終盤に主人公が逃げた彼女の居所を突き止めて、そこを尋ねるシーン。

「俺らは離れられん運命なんや」と無理やり抱こうとする主人公に、ヤクザの女になっていた彼女は「本物の男が好き」と言い放って去っていきます。

 

見下していたヤクザ者に恋人を取られ、

「恋人のヤクザは本物の男だが、お前は違う」と蔑まれ、

何でも思い通りに出来る、世界を自分中心に回したる!と生きてきたのに、一番思い通りにしたい女が思い通りにならならず、

刺青は何の役にも立たない、

 

そんな冷たい現実を初めて目の当たりにしたら、そりゃ、破滅へまっしぐらですよね。

「これで、こいつ詰みだな」っていうカタルシスは最高です。

この構成は上手い。

 

ラストは例の人質事件ですが、サラっと流したことで、映画の焦点が、「有名事件」ではなく、そこに至る男の生きざまであることが明確化されて良いんじゃないでしょうか。

 

最初から最後までしっかりと芯が通っていて、無駄が少ないので、分かり易いです。

スピーディーな展開、内面まで掘り下げられた登場人物達の立ち居振るいとそれを実現した出演者の演技もあり、一気に見ることができます。

 

出演者は他にポール牧さん、植木等さん、西川のりおさん、泉谷しげるさん等がゲスト出演してます。またオープニングの歌は泉谷しげるさんでした。(エンディングは宇崎竜童さん)

このように実は豪華な布陣なんですが、画面からお金がかかってないのが分かるぐらい低予算映画です。

(ちなに低予算の雰囲気はありますが、超B級映画にある安易な安っぽさはありません)

そのため出演料もスズメの涙ほどだったようですが、それでもこれだけの人が集まったのは、まさに熱意ですね。

 

そんな熱意の塊だからこそ、映画の完成度が高いのかも。

 

今回はAmazon Primeで視聴しました。

さすが名作だけあって新品のDVDも手ごろな価格で手に入るようです。

 

 

 

この映画は「フライングキラー」や「バーニング」のようなリアルに妖しい映画ではなく、本当に普通に良い作品です。

妖しくないので、本来であればこのブログの趣旨から外れてるんですが、是非、映画好きの人には見て貰いたいので報告しました。