ウォルター・ヒルと言えば「男臭いカッコいい映画」を撮る監督と認識されてます。
「ストリート・オブ・ファイヤー」(1984)や「ウォリアーズ」(1979)なんかがいい例です。
でも作品によっては「勢いだけでドラマ性が薄い」「男はカッコ良く描けるけど、女性は添え物」「話が不自然」になることもしばしば。
先日レビューした「ザ・ドライバー」(1978)はその典型例です。
なので期待して見ると「あれ、意外にイマイチだったなぁ」ってこともあります。
そんなワケで今回観たのは彼が監督した西部劇「ロング・ライダーズ」(1980)。
実在した有名な無法者ジェシー・ジェイムズを主人公に据えた映画です。
子供の頃からこの映画のことは知っていたんですが、観たことはありませんでした。
さて、今回はカッコいいウォルター・ヒルが見れるんでしょうか。
早速レビューします!
(あらすじ)
無法者として高名を馳せてる主人公ジェシー・ジェイムズは、同じ南部の村出身の仲間たちと強盗に明け暮れる日々を過ごしていた。アメリカ政府は彼らを捕まえるために、有名なピンカートン探偵社を雇う。しかしジェシー・ジェイムズ一家を家族同然と思っている村人達は、北部出身の彼らには全く協力しなかった。そんな中、ピンカートン探偵社はジェシー・ジェームズが母親の家に隠れてると考え、家の中に煙幕弾を投げ込む。しかし煙幕弾が予期せぬ爆発をし、強盗団とは無関係の一番下の弟が死んでしまう。村人たちは更にピンカートン探偵社に非協力的になっていく。
そんな中、主人公は長年待たせてた恋人と結婚。それを期に仲間もそれぞれ家族や恋人と時間を過ごし、身を隠していた。
しかし資金が尽き再び強盗をすることになるが、主人公は仲間の反対を押し切り、自分たちの地盤である南部ではなく、北部であるミネソタ州の銀行を襲うことを決めるのだが・・・
いや、これは面白かった。
主人公たちのカッコ良さもあるんですが、ドラマとしてキチンと作り上げられてるんですよ。
描かれてるのは彼らだけではなく、その家族や敵のピンカートン探偵社。
ただの男っぽい、男だけの映画では終わってません。
話の軸はギャングVSピンカートン探偵社との対決という、ウォルター・ヒルの特徴である男臭いドラマなんですが、そこに家族や恋愛のドラマを上手く絡めてありました。
彼の作品の中で、ここまで女性たちのドラマがきちんと描けている作品は数少ないんじゃないでしょうか。
話全体も起伏、起承転結全てがきちんと作られていてGOOD。
また銃撃戦を始め、アクションシーンもふんだんにあって娯楽作としてもかなり良質です。
主人公たちに撃たれた敵がスローモーションで屋根から落ちたり、倒れたりするシーンがふんだんに出てきます。
これは「バイオレンスの帝王」サム・ペキンバー監督の十八番の演出法。
ウォルター・ヒルからサム・ペキンパーへのオマージュかもしれません。
終盤で主人公が焦りからか判断を誤っていき、破滅へと転がり落ちていくところも哀愁があって、ただの悪漢ドラマ以上のものがありました。
とにかく全てがバランスいいです!
こんなに面白い映画だったら、もっと早く観ておけば良かった・・・

40年以上前の西部劇ですが、今見ても古臭さは全くありません。
1970~80年代って、「ミズーリ・ブレイク」(1976)、「アウトロー」(1976)、「天国の門」(1980)、「シルバラード」(1985)等、現代風の西部劇が何本か作られた時期でもあります。
(「明日に向かって撃て!」(1969)や「小さな巨人」(1970)、「ソルジャー・ブルー」(1970)といったニューシネマっぽい西部劇が下地にあって、1976年がアメリカ建国200年だったので、その関係で西部劇がよく作られてた記憶があります)
現代風と言っても同じく伝説の無法者ビリー・ザ・キッドを主人公にした「ヤングガン」(1988)のように当時の若手スター達(エミリオ・エステベスやチャーリー・シーン、キーファー・サザーランド)を大量に出演させて若者狙いのアレンジではなく、あくまでも実力派の役者を揃えた正統な西部劇なので、肌触りとしては「ほどよく」現代化されている感じです。
(ちなみに僕は「ヤングガン」も大好きです)
イメージとしてはサム・ペキンパー監督の「ビリー・ザ・キッド/21才の生涯」(1973)に近いです。
pagutaro-yokohama55.hatenablog.com
面白いポイントが配役。
まず史実の主人公たち(ギャング団)は兄弟の集まりなんですよ。
ジェームズ兄弟(2人)
ヤンガー兄弟(3人)
ミラー兄弟(2人)
フォード兄弟(2人)
それを本当の兄弟俳優に演じさせてること。
これは当時も話題になりました。
ジェームズ兄弟はステイシーとジェームズ・キーチ兄弟
ヤンガー兄弟はデヴィッド、チース、ロバート・キャラダイン兄弟
ミラー兄弟はデニスとランディ・クエイド兄弟
フォード兄弟はニコラスとクリストファー・ゲスト兄弟。
それぞれちゃんとした演技の出来る俳優なので見ていて違和感なし。
この拘りのキャスティングは凄いです。
でも、残念ながらホンモノの兄弟を配した効果はあったかというと、それはあんまりなかったかなー。
他の映画で見る他人同士が演じる兄弟役とあまり変わりませんでした。
この配役は話題作りの側面が強そうです。
その中で存在感があったのは、主演のジェシー・ジェームズ役のジェームズ・キーチではなく、デヴィッド・キャラダイン。
さすが様々な映画で存在感溢れる役をこなしてきただけはあります。
悪役(主人公の元旦那)のビルを演じた「キル・ビル」シリーズ(2003-2004)といった大作から、僕が愛する超カルトB級映画「デス・レース2000年」(1975)の主人公まで、どんな映画でも印象深いです。
この映画で彼だけが家族とか恋愛とか、そういうものとは縁のない男を演じ、アウトロー感が一番ありました。
(馴染みの娼婦とのビミョーな関係が良かったです)
余談ですがこの映画の脚本にはテイシーとジェームズ・キーチ兄弟も参加しています。彼ら兄弟の持ち込み企画だった気がします。
最後に音楽を担当しているのはライ・クーダー。
アコースティックのブルーズやカントリーを得意とするミュージシャン。(映画音楽専業ではありません)で、オリジナル・アルバムもたくさん出してます。
ミュージシャンとしてもライブを行っていて、僕も1994年に奈良・東大寺の前庭でやった音楽フェスティバル「AONIYOSHI」で彼を見ています。
ただし当時はあまりライ・クーダーのことを認識していなかったので、当時は全く分からず、実は最近になって出演を知ったのですが・・・
(お目当てはINXS、ジョン・ボン・ジョヴィ+リッチー・サンボラ、ボブ・ディランでした)
この映画でも古典的な西部劇で使われるオーケストラを使ったスケール感のある曲ではなく、オーソドックスなアコースティックギターやバイオリンを使いながら、古くさくないスコアを書いています。
音楽もボブ・ディランが担当した「ビリー・ザ・キッド/21才の生涯」の手法に似てます。
ボブ・ディランは更に映画に違和感のない「天国の扉」というロックの名曲を作ったという点で一枚上手てしたが。
ウォルター・ヒルはライ・クーダーのことを気に入ったのかその後、「ストリート・オブ・ファイヤー」、「クロスロード」(1986)、「ジョニー・ハンサム」(1989)など6本で彼と組んでいます。
本当に拾いモノでした。
やっぱりなんやかんや言いながら、僕はウォルター・ヒルの映画は好きだって、って認識させられました。
西部劇にはちょっと興味あるけど、古臭いのはちょっと・・・という人には丁度いいかも。
残念ながら新品DVD/Blu-rayは入手困難です。
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