子供の頃にテレビで見て、かっこいい!と思った映画の一本が「風とライオン」(1975製作/1976日本公開)。
ショーン・コネリーがアラブの族長を演じてます。
これがとっても似合ってるんですよ。
コスプレに見えない。
かなり男臭いドラマだった記憶のある、この映画をレビューします。
(あらすじ)
20世紀初頭のモロッコ。列強が自分の国に進出してくることに憤りを感じていた族長のライズリは、アメリカ人の邸宅を襲撃し、二人の子供と母親を拉致する。彼らを利用しアメリカと交渉しようとするライズリ。振舞は野蛮だが、人質に取った母親と子供たちは大切に扱う男だった。自国民を誘拐されたルーズベルト大統領は、武力を以て人質を奪還を国民に約束する・・・
監督・脚本はジョン・ミリアス。
男臭い、ちょっと右寄りの映画を作らせたら天下一品の監督です。
「地獄の黙示録」(1979)の脚本や、アメリカがソ連に占領され、高校生たちがゲリラになる「若き勇者たち」(1984)、息子がベトナム戦争で捕虜になっている父親が、息子の戦友を集めて、単独で終戦後のベトナムに奪還作戦に向かう「戦場の7人」(1983)、アーノルド・シュワルツェネッガーを一躍有名にした「コナン・ザ・グレート」(1982)を監督するなど、その男臭さに迷いはありません。
僕が贔屓にしている監督の一人です。
彼がこの映画の監督だと知りませんでした。
そんな彼の最盛期の作品ですから、面白いのは当たり前。
当然、ショーン・コネリーとヒロインであるキャンディス・バーゲンとの絡みにラブラブなんてありません。
お互いの気持ちを目と目で語り合うだけ。
それも愛情と友情と尊敬が入り交じった気持ち。
かっこいいー。
ジョン・ミリアスの映画を見てると、日本のサムライ的なキャラが好きなんだなぁ、と思います。
(そんな話を雑誌でも読んだ記憶も)
彼のヒーロー像は、無駄なことは言わず、自分に不利益になってでも信念を通す男。
この映画の主人公はまさに、彼の理想のヒーロー。
日本人には、とっても共感し易いキャラなんじゃないでしょうか。
実は話としては、クライマックス以外に目を見張るようなエピソードはないんです。
あえて言うなら冒頭の主人公が市場を抜けて、ヒロインの家に乗り込むシーンと、騙されたヒロイン家族が人買いに売られそうになって
主人公が助けに来るシーンぐらい。
この映画の凄いところは人間関係の描き方。
何よりもヒロインを二人の子供のシングルマザーとにしているところから上手いなぁ、と思います。
旦那のいない勝ち気な女性と、父親がいないちょっとませた子供たち。
つまり主人公は、彼らの欠けたピースなんですね。
でもよくあるドラマみたいに、「お前を守っていく」とか、「これからは俺がお前の父親代わりだ」なんてセリフは一切ありません。
特に子供たちには、黙って背中を見せるだけ
野蛮なところもあるが、困った時は危険を顧みず助けてくれる。
その時に恩着せがましいことは全く言わない。
まさに昭和のお父さん。
この映画は、ヒロイン家族と主人公の交流というドラマと並んで、アメリカ政府とのやり取りがあるんですが、これも練られてました。
終盤まで主人公を排除するように見えたアメリカ軍の真の目的は、他国の排除だったことが分かり、クライマックスでは他国の軍隊に囲まれながら主人公と共闘するんです。
更にその戦いの中で、裏切ったと思った友人が、仲間を率いて窮地の主人公を助けにきたりと胸熱の展開に!
そして戦いが終わって、ヒロイン家族と別れることに。
涙ぐむヒロインに対し、ショーン・コネリーは何も言わずニヤリと笑うだけ。
そして走る馬に乗ったまま、少年が持ってるライフルを受け取って去っていくんです。
主人公とヒロイン、主人公と少年の気持ちが通じ合う、このシーンがカッコ良すぎます。
くーっ、渋い
かっこいい!
漢です。
そしてこの映画を盛り上げたのは、名匠ジェリー・ゴールドスミスの音楽。
エキゾチックな打楽器を使った音楽がふんだんに使われるんですよ。
音楽がないシーンがないんじゃないかってくらい、印象に残ります。
また映像への当て方がよくって、場面とのシンクロ度合いがかなり高く、音楽が見ている側の心情を盛り上げてくれます。
本当に素晴らしいスコアで、アナログLPでサントラは何度も何度も聞いたせいで、プチプチと傷の音が出るようになっちゃったんですよ。
CDで買い直したんですけど、今は廃盤・・・サブスクにもありません。(泣)
正直、70年代娯楽作品の風味が強く、今の映画に見慣れてる目には古臭く映るかもしれません。
でも隙のない、とっても出来のいい娯楽作品だと思います。
かっこよくて、渋い漢を見たい方は是非!
DVD、Blu-ray共に新品は入手困難なようです。
残念・・・