このブログでよく取り上げるパターンとして、「小学生の時(主に70年代)に、映画雑誌をホラー好きの友達と読みながら、この映画見たいよなぁ、と言ってたB級映画を実際に見てみる」というのがあります。
今回取り上げるのも、そんな一本。
タイトルは「ザ・カー」(1977)。
黒塗りの不気味な車が人を襲ってくるホラー。
タイトルがそのままんでストレート過ぎます。
友達のウチダ君と雑誌スクリーンの「ザ・カー」の広告を見ながら、何の根拠もなく「きっと面白いに違いない」と盛り上がってました。
一応、岐阜でも公開したハズです。
薄っすらとした記憶からすると、ピカデリーという映画館。
当時、小学生だけでは映画に行けず、かといって親がこんな超B級ホラーに連れて行ってくれるはずもなく、結局そのまま観ず仕舞いでした。
そして、月日が44年も流れ、ついに見てみることにしました。
(あらすじ)
サイクリングを楽しむカップルに、突如、黒い車が襲い掛かる。続いてヒッチハイクをしていた大学生が同じ黒い車に殺害。小さな街に黒い車の被害者が増えていく。保安官である主人公はこの車を捕まえようとするが・・・
いやー、ちょっと小バカにして見始めたんですが、意外に面白かったです。
徹頭徹尾70年代ホラー映画の手法を、手抜きなく、丁寧に作られた映画。
撮影や展開、ラストシーン、エンドクレジットまで、本当にキチンと作っています。
勿論、70年代B級映画に変わりはないし、目新しさは全くありません。
70年代B級ホラー映画を見慣れた目には、「なーんだ、よくある映画じゃん」ってなるはず。
でも、ここまで70年代B級ホラー映画のテイストを最初から最後までキチンと堪能出来る映画ってとても少ないのでは?
更に褒めてあげたいのは、その手のB級ホラー映画によくある「雑だなぁ」「安っぽいなぁ」という部分がほぼなく、面白さのエッセンスだけをきれいに凝縮しているイメージなんです。
だからと言って、やっぱりB級映画には変わりないんですけどね。(笑)
舞台はアメリカの田舎町。
それも半端ない田舎。
「犯人の車は〇〇通りを北上してるぞ」って無線が入るんです。
普通、〇〇通りっていったら住宅地を想像するじゃないですが。でも車が走ってるのは、何もない荒野にある一本道。
アメリカ原住民(インディアン)も多く住んでいて、居留地の話も出てきます。
まぁ、そんな場所です。
謎の車が何故、こんな田舎を選んで暴れているか不明です。
(間違いなく予算の問題だと思いますけど)
この映画、何故、人を襲う自動車が生まれたのか、何故人を襲うのか、本当に人は乗っていないのか?といういったことを一切説明しないんです。
この振り切り方は立派です。
B級映画って、そういう理由を無理やりつけて、反対に安っぽくなるケースが多いんですよ。事故で死んだ人の恨みだとか、悪魔が復活した時にたまたま近くにあった車に乗り移ったとか。
説明されてても映画的な面白さが増さないことが多いんですよね~。
そういうのは止めて人間VS謎の車の戦いに焦点を絞ったのは正解。
よく襲っている理由が分かると、次の犠牲者も大体目途がついちゃいますよね。
でもここで登場する車は、存在も含めて謎なので、無差別殺人の不気味さがあります。
ちなみに謎の車が「悪魔」なんじゃないか?という暗示はあります。
例えば謎の車に追われた人たちが墓場に入ると、何故か謎の車は墓場に入れず(多分、神聖な場所だから?)、その前でイライラしてドリフトを繰り返すとか、ラストの爆発の炎が一瞬悪魔の姿に見えるとか、です。
悪魔の姿は「たまたま」そう見えたのか?という演出にしてあるのが良かったですね。
あと謎の車が現れる前に突風が吹く、ラッパを吹いている謎の車が現れる、またはクラクションをラッパのように鳴らして現れる、女性が荒野に逃げ込むなど、「ヨハネの黙示録」をなぞっているそうです。(Wikipendiaより)
とにかくこの謎の車が、前述の墓場に入れなくてドリフトしたり、時々イライラした感じでクラクションを鳴らしたりして、妙に人間臭くって良かったですね。(暴走族っぽい、とも言えますが)
パトカーを崖から突き落とす時も、一旦ギリギリで止めて保安官がドアを開いて崖下を見て「まじかよ、止めてくれよ」って言うと、ゆっくりジリジリと押していくシーンも、車がニヤリと笑いながら押してる感じがしてナイスでした。
さて、実はこの映画のテンションを上げてるのは、謎の車だけじゃなくて、人間ドラマ。
登場人物は多くないんですが、性格が弱かったり、過去を引きずってたり、家庭内暴力があったり、と、それぞれ悩みを持っていて、それがドラマにちょっとしたメリハリをつけてます。
学校の先生で、主人公の恋人というヒロインが出てきます。
彼女は行動力もあり、墓場に追い込まれた時は彼女が囮になってみんなを助けます。
絶対に彼女がクライマックスで主人公と一緒に謎の車を倒すと思ってました。
でも、途中で謎の車に殺されちゃうんですよ。
他これにはちょっと驚きました。
さて、主演はジェームス・ブローリン。
70年代に良質な娯楽作に主演してました。
僕らの世代には「ウェストワールド」(1973)、「カプリコン・1」(1978)、「悪魔の棲む家」(1979)を覚えてる人が多いんじゃないんでしょうか。
そこそこかっこよくて、そこそこ頼りがいのあるキャラを得意としてた記憶があります。
正直、一流俳優ではないけれど、どの映画でも適材適所的な活躍をする俳優でした。
最後に劇場で観た彼の出演作は「ジャグラー ニューヨーク25時」(1980)。サスペンスかミステリーだったと思うんですが、どんな映画がさっぱり覚えてません。これもいつか見てみたいと思います。
B級娯楽作が好きな人なら、気軽に楽しめる映画だと思います。
今更TVで放送されることはないでしょうが、もしどこかで見る機会があれば、「拾い物」という気持ちにはなるので見てもいいんじゃないでしょうか、そんな映画です。
この映画を見ていたら、「同じ頃に、この映画に似た車が襲ってくるホラー映画があったなぁ」と思い出しました。
当時、何で同時期に似たような映画が作られたのか不思議に思ったので、記憶に残ってたんです。
調べたら、前年に無人の車が襲ってくる「クラッシュ!」(1976)という映画が公開されてました。
ただこっちの映画は女性が夫に復讐をするために、無人の車を操る、みたいな話なので、「無人の車が襲う」っていうところ以外は「ザ・カー」との共通点はなさそうです。
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