パグ太郎の<昭和の妖しい映画目撃者>

昭和の映画目撃談&時々その他いろいろ

【エディ&ザ・クルーザーズ】バンドを描いた音楽映画かと思ったら、ミステリーだった

元々、音楽映画というジャンルが好きです。

ミュージカルではなく、音楽映画。

要はバンドやレコード店が舞台になってるような映画です。

ボヘミアン・ラプソディ」(2018)や「ドアーズ」(1991)といったミュージシャン実録物(「スパイナルタップ」(1984)も入るのかな?)や、「パイレーツロック」(2009)、「エンパイアレコード」(1995)、「あの頃、ペニーレインと」(2000年)といった音楽が重要なキーとなる映画です。

 

そんな一本が「エディ&ザ・クルーザーズ(1983)。

 

当時、映画雑誌で紹介されてたのに、何故か日本では劇場公開されませんでした。

音楽映画なので気になてったんですが、今まで見る機会がなかったです。

でもつい先日、AMAZONで格安DVDを見つけて、ついポチりました。

早速レビューします。

 

(あらすじ)

二枚目のアルバム制作中に、リーダーのエディが運転する車が橋から転落。遺体は見つからなかったが、リーダーを失ったバンドは解散してしまう。

18年後、ジャーナリストがバンドの特番を組むため、完成していたはずの幻の二枚目を探し、元メンバーを訪ねる。しかし誰も二枚目の行方を知らないどころか、元メンバーの家が次々と荒らされる事件が起こる。そして、エディが実は生きているのではないか、という疑惑までが浮かんできた・・


www.youtube.com

 

この予告編、かっこいいんですけど、ちょっとネタバレっぽいのが入ってるのが気になるところです。

 

この映画から全米7位のヒット曲が出ました。

ジョン・キャファティーの「On The Darkside」です。

僕らの世代の洋楽好きなら、知ってる人も多いんじゃないでしょうか。

On the Dark Side

On the Dark Side

  • John Cafferty & The Beaver Brown Band
  • ロック
  • ¥204
  • provided courtesy of iTunes

 

タイトルロールのエディを演じるのはマイケル・パレ

日本では、この映画の翌年に主演した「ストリート・オブ・ファイヤー」(1984)で人気が爆発しました。

SFファンには同じ1984年に主演した「フィラデルフィア・エクスペリメント」も印象深いですね。

pagutaro-yokohama55.hatenablog.com

粗野で不器用だけど、音楽に真摯な男を、ちょっと大げさだけど、いい感じで演じてます。キャラ的には同じ音楽映画の「ストリート・オブ・ファイヤー」の主人公と被ります。

実は「フィラデルフィア・エクスペリメント」でも同じような役だったことを考えると、マイケル・パレをエディにキャスティングしたのは正解でした。

 

そんなマイケル・パレ主演だし、主題歌もヒットしたのに、何故日本で公開されなかったんでしょうか。

ストリート・オブ・ファイヤー」がヒットした後に公開されたって、人はそこそこ集まったと思うんですよ。

なのに未公開。

不遇の映画です。

 

さて、実は勝手に「架空のバンドの山あり谷あり物語なんだろうなぁ」と思ってました。

で、見てびっくり。

 

この映画、ミステリーだったんですね。

 

きっかけはこのバンドが幻の2枚目を探し求める女性ジャーナリスト。

しかし彼女は主役じゃないどころか、あまり話に絡んできません。

(その上、何故か可愛くない。普通はジョディ・フォスターみたいな才色兼備の雰囲気を持った女優をキャスティングすると思うんですけどねー)

 

彼女は目指す「幻の2枚目探し」っていうのがミステリーっぽいじゃないですか。

でも、これはエディを回想するキッカケみたいな扱い。

映画の中でも元メンバーは「あの2枚目どうしたっけ?」「俺たち、持ってないよなぁ」程度。

必死に探している人は皆無に見えます。

 

この映画のミステリーは、バンドの解散劇。

 

観客は、冒頭でエディが橋から落ちて、バンドが解散になっちゃったことは知ってます。

回想シーンはバンドが上り坂の頃、まだメンバーがギクシャクしていなかった頃から、順を追って、エディが橋から落ちるまでの軌跡が描かれます。

 

これ、刑事コロンボの「最初から結末が分かっている謎解き」形式。

 

主人公はバンドのキーボーディスト兼作詞担当。

演じるのはトム・ベレンジャー

この映画の前後では、「戦争の犬たち」(1980)に準主役で出ていたし、「プラトーン」(1986)でも主役の一人を演じる等、既にそこそこの地位を築いてた俳優です。

 

一番最後にバンドに加わった彼が、女性ジャーナリストの2枚目探しに触発されて、18年ぶりに元のメンバーに会いに行き、各メンバーと当時のことを思い出すことで、エディの心情が分かっていきます。

 

要は主人公が元メンバーと順次合っていく話と、そこで繋がっていくエディの話が平行して描かれてるんです。

 

メンバーの中で唯一人の大学卒ということで、バンド内でちょっと浮いていた彼が、18年ぶりの出会いを通じ、みんなと邂逅していくというのも「隠れたもう一つの話」になっています。

 

ぶっちゃけ行っちゃえば、過去の回想も、友達巡りも、友情の再生も、一つ一つは独創性やヒネリに欠けていて、普通の話です。

マイケル・パレの魅力だけで引っ張ってるようなシーンがたくさんあります。

 

でも、この映画の出来は悪くありません。

3つの話がバランス良く収まってるからです。

トルコライスみたいなものです。

トルコライスが分からない方は下をクリック)

トルコライス - Wikipedia

 

小作品で、心に残るような感動や展開はありませんが、見終わった後、素直に「面白かった」と言える映画です。

 

日本で公開をしても良かったと思うんですけどね~。

 

ラストシーンは、電気屋のテレビで女性ジャーナリストが作った番組を観てニヤリと笑うひげ面の男。きっと、エディなんでしょうね。

ちょっと定番臭い気もしますが、この映画の終わりには見事にマッチしてました。

 

DVDは廉価版で出ています。