今回の映画は「フェノミナ」(1985)。
監督はイタリアン・ホラーの芸術家、ダリオ・アルジェント。
70年代に映画を見始めた人にとって忘れられない「サスペリア」(1977)の監督で、日本でも彼のマニアは多いです。
ダリオ・アルジェントと言えば、ゴブリン。
彼の有名な映画の音楽は、ほとんどゴブリンというバンドが担当しています。
「サスペリア」の有名なテーマ曲も彼らの作品です。
そんなゴブリンが数年前から、川崎にあるクラブチッタというライブハウスで、映画+ライブというイベントをやっています。
今回は第4弾「フェノミナ」上映+ライブだったので行ってきました!
(あらすじ)
スイスの田舎町。バスに乗りそびれた少女が何者かに惨殺される。同じ頃、大物映画スターの娘であるジェニファーが、スイスの寄宿制女子学校に転校してくる。彼女は何かに導かれるように夢遊病者となり、昆虫学者の家にたどり着く。昆虫学者は彼女が昆虫と意思疎通が出来る能力の持ち主ではないかと語る。
その頃、学校の周りでも少女が行方不明になる事件が起こっていた・・・
このイベントは、まずはゴブリンが音楽を担当した映画が上映されます。
その時、何とスクリーンの前にいるゴブリンが主要なBGMを生演奏してくれるんです。
そして映画見が終わると、休憩を挟んでライブという構成。
過去3回は「サスペリア」「サスペリア2」(1975)「ゾンビ」(1978)の上映でした。
まぁ、言い換えればダリオ・アルジェント祭でもあるわけです。
※「ゾンビ」の監督はかの有名なジョージ・A・ロメロですが、ダリオ・アルジェントは製作資金集めを手伝い、音響効果も担当してました。ヨーロッパ公開版はアルジェントが編集をし、音楽を全面ゴブリンの曲に差し替えられてます。最初の日本公開版はこのダリオ・アルジェント版を更に再編集してものでした。
勿論、彼のどの映画も小学生・中学生の頃の僕にはツボだったわけです。
そんなこともあって、子供の頃からゴブリンの音楽は大好き。
いつか、一度ライブを見てみたいと思ってたのです。
このイベントも第一回から知っていましたが、結構チケット代が高額だったのと、仕事が忙しかったのもあって、見送ってました。
(結局、そこまではファンじゃなかったってこと??)
今回は上映が「フェノミナ」ということで、意を決して見に行きました。
実は主だったアルジェント映画は、ここ5年以内に見直してるんですが、唯一ご無沙汰しているのが「フェノミナ」。
というか、学生の頃に名画座で見て以来、30数年ぶりです。
確か大学が終わってから、友達を誘って綱島にあった「綱島映画館」(現在廃館)で見ました。
三本立てで、同時上映は「デモンズ」(1985)と「ティーンウルフ」(1985)だった気がします。
ここの映画館、学校の近くの電柱に、よくポスターが貼ってあったんですよ。
この時もポスターを見て、行く気になったんです。
しかしこんな三本立てに付き合ってくれた友人(映画マニアではない)は偉いですよね(笑)。
さてオープニングは、田舎を走るバスの映像からスタート。
ここからして、全く記憶にありません。
言われてみれば覚えてるのは有名なジェニファー・コネリーがウジ虫だらけのプールで溺れそうになるシーンぐらい。
ラストは見ているうちに「あー、こうだったなぁ」と思い出しました。
とにかく最後まで記憶にあるシーンはほぼ皆無。
まるで初めて見る映画のようで、新鮮な気持ちでした。
でも、面白かった?と問われると「・・・・」。
あらすじは、いつものダリオ・アルジェリア節といいましょうか、整合性とか、謎解きとか、そういうのはありません。
ショッキングなシーンをそれらしく繋いで、それらしくミステリー仕立てにしてます。
唐突な展開が連発するのも相変わらず。
今回は謎の殺人鬼vs昆虫と意志疎通が出来る美少女。
彼女は虫の気持ちが分かることがバレて、転校してきた寄宿舎でイジメられるんです。
この辺りは「キャリー」(1976)っぽいでしょうか。
彼女が昆虫学者の力を借りて、殺人鬼を追い詰めようとするんです。
誰もがそこで謎解きを期待するじゃないですか?
虫を操って、犯人がいるかもしれない屋敷を突き止めるところまでは、それっぽい雰囲気です。
が、結局謎解きにはならず、「犯人分からないけど、もうアメリカに帰るわ」となったところで殺人鬼に捕まっちゃいます。
そこで「お前が殺人鬼だったのか!」となります。
そりゃ捕まえたヤツが殺人鬼だって、誰でも分かりますよね?
謎解きの要素ゼロ。
この場当たり展開、観客は完全に置いてけぼり。
敢えて言えば、これこそ「アルジェント映画を見てるぅ」と実感出来る瞬間です。
もう宗教なのかもしれません。
どう考えても、インスタントラーメンを食べて「学生の時、カネがなくて良く食べたなぁ。懐かしいなぁ」と思う気持ちに近いのかも?
(最近のインスタントラーメンは高いのもあるし、かなり美味しいです)
ただ残念なことに、アメリカで流行っていたスプラッター映画の影響なのか、猟奇殺人鬼が殺しても、殺しても甦るところや、アイアン・メイデン(殺意の閃き/Flash Of The Blade)やモーターヘッド(ロコモーティブ /Locomotive)、フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッド(トゥ・トライブス/Two Tribes)など、当時の若者が好きそうなバンドの曲を採用してしてること、いつもの原色を全面に出したライティングの演出がほとんどなかったり、と従来のアルジェント映画っぽくないところも多いです。
ダリオ・アルジェント映画を堪能するなら「サスペリア」か「サスペリア2」から始めることをお勧めします。
まぁ、そういう人が今どれぐらいるか分かりませんけど。
さて、この映画と言えば、なんといっても当時の話題の中心は初主演となったジェニファー・コネリー。超美少女ってことで注目されてました。
当時は騒ぐほど可愛いか?と思ってたんですが、今回見たら、評判通りかなり可愛かったんですよ。
あの時、何故そんなに可愛いと思わなかったのか謎です。
(僕の女性の趣味が変わったってことでしょうか?)
そう言えば今年は「トップガン マーペリック」(2022)も見たんで、ジェニファー・コネリーの昔と今を同時に見たことになりました。
あと、アルジェント監督の奥さん、ダリア・ニコロディもいつものように出演してます。またキーとなる昆虫学者はB級映画の常連ドナルド・プレザンスが演じています。
この辺りの配役はアルジェント印です。
さて、今回の上映会の目玉である音楽の話。
映画のBGM生演奏ですが、そもそもロック音楽を取り入れてたりしているので、彼らの音楽が使われてるシーンが過去3作に比べて少なめ。そのせいか、自分たちの曲だけでなくアイアン・メイデンの「殺意の閃き」をインストで演奏したりして、「間」を埋めてましたが、彼らの音楽を聴きに来た僕としてはちょっと残念な感じ。
やはり、彼らの曲が全面に使われた「サスペリア」「サスペリア2」「ゾンビ(ヨーロッパ公開版)」の上映会の時に見るべきでした。
これはヒジョーに後悔しました。
映画が終わって、30分の休憩を挟んで、今度は本格的なゴブリンのライブ。
その中で「サスペリア」等聞きたい曲の大半は聴けたので良かったです。
ただゴブリンっていうと映画音楽をイメージしがちなんですが、彼らの音楽ジャンルはプログレッシブロック寄りの4ピース(ギター、キーボード、ベース、ドラム)バンド。
映画音楽もロックっぽくアレンジされているのも多く、映画音楽の世界に浸るというより、まさに「ゴブリンのロックライブ」でした。
中には「シャドー」(1982)のテーマみたに、映画よりもかっこいいアレンジがされた映画音楽もありました。
ただ映画で使われた音楽を聴きたかった僕としては、期待外れ半分、意外な楽しさ半分といったところでした。
ちなみに入場する時に、6曲入りCD(新曲なのかな?)を貰いました。
ジャケットに「11月18日 川崎 クラブチッタ」とあるので、会場限定のようです。
写真はゴブリンのリーダー、クラウディオ・シモネッティさん。キーボード担当で、ゴブリン唯一のオリジナルメンバーです。実質、ゴブリンは彼のソロプロジェクトみたいです。
この映画はPRIME VIDEO、NetFlix、U-NEXTのサブスクでは見られません。
ブルーレイは手に入りますが、高めです。