「普通の人々」(1980)でアカデミー助演賞を取り、当時勢いのあったティモシー・ハットンと、俳優として上り調子になってきたショーン・ペンの共演作。
実話に基づいた社会派ドラマ「コードネームはファルコン」(1985)。
これも初めて見たのは映画公開から数年後に、レンタルビデオでした。
スパイ映画ってことで、ちょっと期待してたんですが、思いっきり外された上に、頭の中で話が整理されず、???となった記憶があります。
さて、今回見直して、見方は変わるんでしょうか?
(あらすじ)
神学校を中退し、父親の勧める軍需会社で勤め始めたクリストファーは、そこでCIAが秘密裏に他国の政府に介入していることを知る。彼の幼馴染で、麻薬に溺れる金持ちのアンドリューは麻薬取引の現行犯で逮捕され、何とか逃れる方法を模索していた。クリストファーはCIAの汚いやり口に怒りを覚え、秘密裏に持ち出した国家機密を、メキシコにあるソ連大使館に持ち込む案をアンドリューに持ち掛けた・・・
ティモシー・ハットンとショーン・ペンの共演はこの映画で2作目。一作目は「タップス」(1981)。
士官学校の反乱を描いた映画なんですが、反乱グループのリーダー役のティモシー・ハトンで、ショーン・ペンは彼の親友で反乱の中心グループの中で、一番良心のある男を演じてました。
その後、彼がキレ系の演技でキャリアを伸ばしていったことを考えると、ちょっと珍しい役だったと言えます。
ちなみに中心グループの中ですぐに頭に血が上る男を演じたのはトム・クルーズ。
やはりこの映画が実質デビュー作でした。(その前に「エンドレス・ラブ」(1981)にちょい役で出てたらしいです)
「タップス」は渋めの映画ですが、かなり面白い作品だったので、是非いつかレビューしたいです。
さて、話戻って「コードネームはファルコン」って日本語タイトルが、めっちゃプロのスパイが主人公みたいに見えますよね。
原題は「ファルコン&スノーマン」。
どちらもソ連が主人公たちに付けたコードネーム。鷹狩が趣味のティモシー・ハットンがファルコン。麻薬中毒のショーン・ペンはスノーマン。スノー(雪)は麻薬の隠語ですね。
コードネームはありますが、二人はプロのスパイではありません。
正義感の強いティモシー・ハットンは、たまたまバイト(?)で入ったCIAの関連会社で、CIAの汚いやり口を知ってしまい、義憤からソ連に情報を流そうとする。
幼馴染みで麻薬に溺れているショーン・ペンにメキシコにあるソ連大使館に情報を売り込みに行かせる。
物事が上手くいったが何度も情報を売るうちに、二人の思惑がずれてきます。
正義感から情報を売ったものの、そのことに悩み始めるティモシー・ハットンと、情報を売ったことで思いがけず大金を手にしたことで、もっとカネが欲しくなり、勝手にソ連にたかろうとするショーン・ペン。
ショーン・ペンがソ連にルールを破って金をたかろうとしたことから、物事が破綻していきます。
この映画は国家機密を売るスパイ感よりも、破綻していく若者の姿に重点が置かれてます。
若気の至りってやつですね。
最後までなんとか逃げ切ろうとするショーン・ペンに対し、ティモシー・ハットンは途中で逃げるのを諦め、静かに悟って、逮捕を待ち受けます。
そしてラストは刑務所に入る二人と、子供のころの二人の映像が重なって終わり。
幼馴染み故に、友だち感覚であったが故に、勢いでやってしまい取り返しのつかないことをしてしまったという現実が重いです。
これはスパイ娯楽作ではなく、シリアスな青春&社会派ドラマでした。
見るの側にも体力(精神力)が要りますが、重いなりにもかなり楽しめました。
良く出来た作品だと思います。
監督が、ちょっと影のある社会派風味の娯楽作を得意としていたジョン・シュレンジャーだからでしょうか。
しかし、今さらながら、何故、初めて見た時、面白さが分からなかったのか?
何故、初めて見た時、話がよく理解てまきなかったのか?
当時の自分なら十分に楽しめただろうし、理解出来たはず。
謎です。
それぐらいサスペンス感満載のスパイ娯楽作という勝手な先入観があったんでしょう。
だからこの佳作を正当に見ることが出来なかったとしか言えません。
音楽を担当したのは人気ジャズギタリストのパット・メセニー。
主題歌は、このブログでも再三取り上げているデヴィッド・ボウイ。
彼が歌う主題歌「This is not America」(パット・メセニーとの共作)の歌詞がずっしりと来ます。
This is not America
A littele piece of you, The little peace of me will die for this is not America.
ここはアメリカじゃない
君の小さな一部が、僕の小さな平和が、これがアメリカじゃないから死ぬことになる・・・(訳 パグ太郎)
この曲は名曲だと思います。
終盤にメキシコでショーン・ペンを捕まえた警官が「ここはアメリカじゃないからな(This is not America)」と吐き捨てるように言ったセリフと掛けてあるんじゃないかなぁ、と思います。
主演のティモシー・ハットンは、彼の本領である生真面目ぶりがこの主人公のキャラに見事にマッチしてます。
そして何よりもこの映画に緊張感を与えているのが、ショーン・ペン演じる麻薬中毒の親友。
家族に疎まれ、麻薬に溺れ、ソ連との約束事が守れなくなっていき信用を失っていく様はハラハラドキドキします。
こういうチンピラ演技をさせたら、本当にショーン・ペンは上手いです。
今なら85点はあげられる、そんな映画でした。
DVDは廉価版価格よりは、ちょい高めの通常版が手に入るようです。