70年代後半に突如火が付いたスーパーカーブームって、みなさん知ってますか?
子供たちの間で、フェラーリ、ポルシェ、ランボルギーニ等の高級スーパースポーツカーが爆発的な人気となった現象です。
スーパーカーの写真集やカードは勿論のこと、エンジン音を集めたレコードまで出てました。
僕なんて、今だに当時のスーパーカーのミニカーが欲しくてたまりません。
そのブームの火付け役となったのが、池沢さとし先生が少年ジャンプに連載してたレース漫画(?)「サーキットの狼」。
僕の世代で知らない男の子はいません。
そんなマンガの実写化「サーキットの狼」(1977)を今回初めてみました。
あの頃の熱い気持ちは、蘇るのでしょうか?
(あらすじ)
F1に憧れる主人公は、自動車整備工場とバイトで頭金を貯め、憧れのロータス・ヨーロッパを手に入れる。彼は公道レースで連戦連勝し、「ロータスの狼」と呼ばれるようになった。そんな彼の前にポルシェに乗る男、早瀬左近が勝負を挑んでくる・・・
当然、マンガは読んでました。
僕の記憶の中では「頭文字D」みたいな公道レースだったんですが、この映画で最初、主人公が相手にするのは箱乗りするような暴走族。
レースもジグザク走行して相手を妨害したりと、レースっていうより、バトルっぽいです。
あれ?これは走り屋じゃなくて、暴走族マンガ?
調べてみると、どうも原作もそのようです。
多分、僕は最初の方はすっ飛ばして、スーパーカー同士の公道レースになってから読んだみたいです。
さすがスーパーカーブームの火付け役だけあって、スーパースポーツカーがいっぱい出てきます。
そして登場する度に、テロップで名前、排気量、馬力、最高速度が説明されます。
スーパーカーファン狙いですね。
僕も全部覚えてました。
「六つ子の魂、百まで」を体現してます。
その中でも、やっぱり印象的なのは主人公の乗る赤いラインの入ったロータス・ヨーロッパ。
今でもこの車は乗ってみたいなぁ、と思わせます。
(実はうちの近くのダイニングバーに時々停まってるので、ガン見してしまいます)
ちなみに茨城県には「サーキットの狼MUSEUM」というのがあって、マンガに登場したスーパーカーが大量に展示してあるみたいです。
池沢早人師 サーキットの狼MUSEUM公式サイト (ookami-museum.com)
行ってみたいですねぇ。
個人的な見解ですが、この原作が何でヒットしたかというと、レースマンガではなく、ファンタジーマンガだからじゃないでしょうか。
だって二十歳前後の、それも超お金持ちでもない若者が、何故か数千万円クラスのスーパーカーに乗ってるんですよ。
その上、ポルシェ VS ロータス・ヨーロッパみたいな、夢のバトルを繰り広げるわけです。
これをファンタジーと言わずして、何と言うんでしょうか。
さすがに当時、小学生の僕らでも分かりました。
でも、今読んでも、「そんなことあるわけないよな~」と思いつつ、楽しめてしまう自信があります。
(これをファンタジーではなく、リアル路線にしたのが「頭文字D」なんじゃないかって勝手に想像してます。藤原豆腐店かっこいい!)
そんなマンガの映画化ですが、キャラ設定は大まか原作通りっぽいです。
主人公のお姉さんがモデルではなく、バーの経営者とか、ヒロインが女暴走族じゃなくて、修理工とか、ちょこちょこ変えてたり、端折られてしまったキャラ(フェラーリの女豹やハマの黒豹っていうキャラがいた気がします)もいますが、僕の曖昧且つ大雑把な記憶からすると、大筋には影響のない改変だった気がします。どうでしょう?
走り屋(公道レーサー)として名を挙げた主人公が、周りの助けもあって最後は鈴鹿サーキットでちゃんとしたレースに出るっていうシンプルな筋なんですが、子供だましみたいな展開と、ご都合主義にまみれてます。
車高の低いスーパーカー(ロータス・ヨーロッパ)が砂地でドリフトしながらバトルしたり、鈴鹿サーキットのレースが途中から山道の公道コースに入ったりと、真面目なレース好き・車好きからすると「???」となるシーンが乱発ですが、もう、そこは架空の世界だと割り切るのが、この映画の正しい見方のようです。
リアルで、シリアスな話を求めるのなら、見ないことをお勧めします。
ただし、車のシーンになると、この映画はめっちゃ生き生きしてきます。
正直、この時代の日本で、こんなに迫力のあるカーチェイスのシーンが作られていたのはビックリでした。
当時の外国映画のカーアクションシーンにも引けを取らないし、今見ても十分迫力があります。
これは一見の価値あり、です。
それにしても首都高速でスピン、センタライン無視のバトルと、かなりやりたい放題なので、よく撮影出来たなぁ、と思います。
(まさかゲリラ撮影???)
きっと、この映画は、スーパーカーブーム真っ盛りに作られた、「スーパーカー・オールスターズの激走を見せる」のが目的で、話は「マンガの映画化」が分かる程度のレベルで、レースとレースの間のつなぎ程度の役割しか期待されてなかったのかも。
言い換えれば、例え話がしっかりしていても、レースシーンに迫力がなかったら、観客(スーパーカーブームにうかれて、見に来た人たち)にソッポ向かれるのが分かってたんじゃないでしょうか。
そういう意味で目的を達成した映画と言えます。
(映画ファンとしては不本意ですけど)
主人公は、いかにもマンガの熱血漢そのままです。
ただし「深く考えてない」直情キャラなので、感情移入はしづらいかも。
ちなみに主人公が目指すのは、当時のF1トップドライバーのニキ・ラウダ。
ニキ・ラウダが参戦した日本F1グランプリ@富士スピードウェイのシーンも出てきます。
ただしこのレースではニキ・ラウダは、豪雨のため自主的にリタイアするんですが、その顛末は「ラッシュ/プライドと友情」(2013)で見ることが出来ます。
「ニキ・ラウダ、待ってろよ!車のことは、大学の工学部で教えられるぐらいマスターしたんだぜ!」って言う割に、ちゃんとしたレースの世界に行くわけでもなく、高額ローンを組んで買ったロータス・ヨーロッパで公道レースに明け暮れてるのは、ワケ分かりません。やっぱり、ファンタジーだから?
主人公のライバル、早瀬左近の妹ミキがヒロイン的存在なんですが、女優さんの演技が下手過ぎて笑えます。更に女優さん自身が帰国子女なのか日本語がとっても下手。どうやら本業は歌手の方のようです。
勿論、ライバルの早瀬左近も出てきます。
ただし主人公と1対1の公道レースをするシーンもあるんですが、マンガほどのライバル感はなく、存在感はイマイチ。愛車はポルシェ911カレラRS。
ラストのレースシーンでは当時のトップドライバーである星野一義さん、高橋国光さん、そして日本人初のF1レギュラードライバー、中島悟さんなどが登場します。
そう言えば、この映画、ロッテが協賛してます。
冒頭から主人公がレース場でアイスクリーム売りのバイトをしてるんですが、画面いっぱいにロッテのアイスクリームの看板が映り、次に主人公が「ロッテのアイスクリーム、いかがですか!」と連呼します。
またロッテのクールミントガムを渡すシーンや、噛むシーンが不自然なぐらい何度も出てきます。
ラストなんて主人公がヒロインにクールミントガムを渡して、それぞれ噛むシーンで終了。完全にCMです。
いくら協賛とは言え、かなり露骨。
実は協賛ではなく、出資なのかもしれませんね。
それはともかく、スーパーカー世代が、軽い気持ちで見ると楽しめる作品じゃないでしょうか。
僕はそれなりに楽しめました。
DVDはそこそこの値段で入手可能です。