ホラー映画が流行った80年代、ガチで怖がらせるホラーじゃなくて、「バタリアン」(1985)みたいに笑えるホラーや家族で楽しめるホラーなんていうのも出てきました。
今回レビューする「フライトナイト」(1985)はそんな一本。
青春ドラマ風の吸血鬼モノ。
評判は悪くないみたいなです。
見たことがなかったので、今回見てみした。
(あらすじ)
ガールフレンドとなんとなくうまくいかない高校生の主人公は、隣に引っ越してきた男たちが女性を殺害して運ぶのを見てしまう。
彼は隣人が吸血鬼だと確信。しかし自分が目撃したこと知っていた相手は、隣人としてあいさつに来たフリをして彼を殺そうとするのだが・・・
彼女とエッチまでいけない童貞高校生が主人公。
隣に越してきた人たちの怪しい行動を見て、吸血鬼だ!と思い、ホラーヲタクの友だち、テレビのホラードラマで吸血鬼ハンターの役をやってるおじさんなどを巻き込んで、吸血鬼退治をしようとするってプロットは、ホラーなんだか、コメディなんだか分類しづらいタイプ。
ベースはライトタッチのコメディですが、シリアスなホラーテイストが混ざってます。
高校生たちがワーワーやってるところはコメディで、吸血鬼が出てくるとシリアスになるって言えば分かるでしょうか。
引っ越してきた隣人を覗き見たら、たまたま吸血鬼だった。
主人公は正体に気付かれたことを知った彼らに狙われるハメに。
ガールフレンドとヲタクな友達を巻き込んで、「何とかしなきゃ」ってなるんですが、ノリノリのヲタクな友達以外、誰にも相手にされない、っさぁ、どうする?ていう展開は青春ホラーコメディの鉄板パターンでしょうか。
その後、何故か、彼らが好きな吸血鬼番組に「吸血鬼ハンター役」として出演している俳優のところに助けを求めに行くんです。
え????
これ、コメディにしても、直球過ぎない?
高校生ならTVに出てる人がホンモノの吸血鬼ハンターじゃなくて、役者だって知っますよね?
そんな人に「本物の吸血鬼を倒すのに、力を貸して下さい!」ってお願いするのはアタオカじゃないですか。
ドタバタの笑いを取るための設定だとしても、かなり強引に感じます。
ここは主人公の理論思考がヤバいです。
ここはひと捻りして欲しかったですねー。
例えば有名な吸血鬼の本を辿っていったら著者がその役者で、「実はオレは本当に吸血鬼ハンターなんだ!役者は仮の姿なんだ」って自慢されるが、それも本当は自分をミステリアスに見せるために自費で出版した本だった・・・ぐらいの「なるほど」展開が欲しかったです。
反対にちゃんと伏線が貼られてたのは、イケメンおやじ吸血鬼が、主人公のガールフレンドに目を付けるっていうところ。
冒頭で、ガールフレンドと主人公が、気持ちのすれ違いでエッチできないシーンがあるんです。主人公はイケてない高校生ですが、彼女もちょっと奥手な女の子っていう設定。
つまりエッチしてないから、彼女は処女だってことを暗ににおわしてます(吸血鬼は処女好き)
更にイケメンおやじ吸血鬼バンパイアに誘惑された途端、彼女がノリノリで急にエロくなるのも、ちょっとダサい(きっと学校でもいけてない)主人公と、アダルティな吸血鬼を比べたら、そりゃメロメロになっても仕方ないなー、と思う展開でした。
意外だったのは、吸血鬼になってしまったヲタク友達。
普通はラストで何とか人間に戻れて、「あれ?俺、吸血鬼になってた???」ってとぼけるオチになりそうですが、この映画では退治されてしまいます。
そこは青春コメディではないですね。
に吸血鬼を倒して無邪気に喜んでる主人公たちに「おいおい、親友が死んでるんですが」と突っ込みを入れたくなります。
後半の吸血鬼 VS 主人公は、ちゃんと緊迫感あり、ラストの吸血鬼屋敷でのバトルは結構テンションが高く、シリアス系のノリで盛り上がりました。
全体的には青春モノ(コメディ)と吸血鬼モノ(シリアスホラー)が、ほど良くバランスしていたと言えます。
正直言えば傑作でもないし、出来も70点ぐらいですが、ホラーテイストのライトコメディという、とっても特殊なジャンルとしては合格かも。
単品だと「普通」だけど、セットになってるからお得感があるラーメン・チャーハン定食な感じですね。
だから見ている間に、ちょっとイラっとするところはありますが(笑)、総じて楽しく見れます。
本国では評判は良かったのか、続編(1988)、リメイク(2011&2013)があります。
さてこの映画も当時のMTVブーム&「フットルース」(1984)の流れを受けて、サントラもポップス/ロック系ミュージシャンのコンピレーションアルバムでした。
参加ミュージシャンはイアン・ハンター、ディーヴォ、スパークス、エイプリル・ワイン、オートグラフとちょっとバラバラ感があります。
僕が好きなWhite SisterのSave me tonightって曲もサントラに入ってますが、映画の中では流れてなかったと思います。
この時代のサントラは、話題になりそうな曲、ヒットになりそうな曲をかき集めておいて、劇中では何曲か使わないということはよくありました。
主題歌は「堕ちた天使」(1981)で全米1位を取ったこともあるJ・ガイルズ・バンド。
この曲を発表した直後に、解散しちゃいます。
つまりこの主題歌は彼らのラストソングなんですね。
なのに、この曲は彼らのアルバムには収録されておらず、収録されていたサントラは現在廃盤。
そのため現在は聞くことが出来ない状況です。
ただ悪くない曲ですが、「いい曲?」って言われるとビミョーですけど。