パグ太郎の<昭和の妖しい映画目撃者>

昭和の映画目撃談&時々その他いろいろ

【スターダスト】実話の映画化だけど、実話である必要はあったのか?

2020年の映画だけど、舞台設定が70年代なのと、個人的に好きなミュージシャン、デヴィッド・ボウイの話なので、レビューします。

 

若きデヴィッド・ボウイを主人公にした映画「スターダスト」(2020年製作/2021年日本公開)。

4枚目のアルバム「ハンキー・ドリー」(1971)発売の頃を描いてます。

僕が大好きなデヴィッド・ボウイがどう描かれているか興味があったので、レビューします!

 

(あらすじ)

イギリスで評価を上げつつあったデヴィッド・ボウイは、自信作「ハンキー・ドリー」を抱えて、アメリカに乗り込んできた。アメリカでプロモーションツアーを行うはずが、レコード会社にはそんな予定も、予算もなく、広告マンを一人つけるだけ。二人は車に乗って、演奏出来る場所を探して、アメリカを旅することになった・・・


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爆発的に売れる前のデヴィッド・ボウイの話。

イギリスではそこそこ知名度が上がってきたけど、アメリカではまだまだ新人扱いの時代。

伝説的な名作「ジギー・スターダスト」(1972)の直前です。

 

プロモーションのためにアメリカに行くんですが、思い描いていたのとは違い、全く相手にされずに苦悩するっていうのがメインのお話。

 

正直、「うーん」という出来でした。

 

まず主演のジョニー・フリンが、雰囲気も含めてデヴィッド・ボウイに似てない

これは致命的。

ボヘミアン・ラプソディー」(2018)のような、そっくりさんでやってくれとは言いません。

でも、もうちょいデヴィッド・ボウイらしさを出して欲しかったです。

 

キャラ的には貧乏ながら、彼をサポートしてドサ回りをする宣伝マンの方が魅力的でした。

 

それに輪をかけて、デヴィッド・ボウイのカリスマ性や天才を感じとる場面が皆無。

「彼の曲は次の時代を先取りしてるんだ」みたいなセリフで説明して終了、みたいな感じばかり。

アメリカでは理解されず、売れていない時代の話だとしても、この映画のデヴィッド・ボウイは、ただのコミュ障のわがままミュージシャンにしか見えません

 

これじゃ、アメリカで売れなくて当然。

 

見ている方が「なんで、彼の才能に誰も気づかないんだ!」って憤慨するような作りにして欲しかったですね。

寧ろ、観客は彼のわがままに振り回されつつ、ドサ回りに付き合う宣伝マンに方にシンパシーを感じるハズです。

 

クライマックスは、かの有名な架空のロックヒーロー「ジギー・スターダスト」を演じるという<覚醒>ですが、そこに至る道筋の書き込みがあまりにも不足しています。

 

途中まで成功する気配がないミュージシャンなので、最後に成功したと言われてもピンときません。寧ろ、取って付けたような唐突感があります。

 

覚醒の理由も、どうやら「アメリカで苦労したから」ではなく「精神を病んだ兄」の影響。

 

じゃ、大半の時間を費やしてるアメリカでの話は何だったんでしょうか?

このクライマックスと全く関係ってことですか?

 

それとも最後にジギー・スターダストを演じる姿を見せないと、デヴィッド・ボウイらしさのない映画になっちゃって意味をなさないから、無理矢理取持ってきたんじゃないかって、勘繰っちゃいます。

 

ひょっとして徹底しノンフィクションに拘ったのかもしれません。

実話を再構築することなく、実際にあったエピソードを繋ぎ合わせてるだけに見え、結果として、焦点が定まらない、ただの売れてない頃のアメリカでのスケッチ描写集になっています。

 

これだったらデヴィッド・ボウイを下敷きにした架空のミュージシャンの話にして、映画として盛り上がるエピソードや展開を作り込んだ方が、間接的にこの映画よりデヴィッド・ボウイを感じられたかもしれません。

 

以前からデヴィッド・ボウイを知ってる人は、いろいろと脳内補完が出来るし、ジギー・スターダストで大成功を収めるというオチも知ってるからいいけど、デヴィッド・ボウイのことを知らない人にしてみたら、この映画は不可解過ぎます

 

まぁ、デヴィッド・ボウイファンで、脳内補完が出来たからと言っても、この映画が楽しめるかは疑問です。

 

最後に劇中で有名な歌はほとんど出てきません。

やはり著作権の問題があったのかも。

 

DVDは手に入りますが、お手頃という値段よりはちょい高めです。

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