パグ太郎の<昭和の妖しい映画目撃者>

昭和の映画目撃談&時々その他いろいろ

【処刑ライダー】予想したことがそのまま起こる80年代MTV復讐劇

きっとこうなるだろうなぁ、という展開がそのまま起こる映画、「処刑ライダー」(1986製作/1987日本公開)。

名前はオドロオドロしいですが、結構軽い映画です。

 

劇場公開前のプレビュー上映で見たんですが、その時の印象は・・・

 

「箸にも棒にもかからない」

 

さて、今見るとどうなんでしょうか?

 

(あらすじ)

アメリカの田舎町。街道ではレースをふっかけて、勝ったら車を取り上げる不良たちが幅を利かせていた。そんな街に一人の男がフラリと現れる。その日から謎の車のレースをしかける不良たちが事故死する事件が頻発する。そして不思議なことに、被害者は目を抜かれ、事故に遭う前に死んでいたことが分かる・・・


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この映画を見たは今は亡き東京国際ファンタスティック映画祭

その映画祭で、なんとなーく面白そうってだけで、前知識もなく見たのがこの映画。

その時のタイトルは「死神レーサー」

何故か劇場公開時には「処刑ライダー」に変更されてました。

何があったのか分からないけど、「死神レーサー」も「処刑ライダー」もあんまり変わらない気がするのは僕だけでしょうか。

 

ちなみにその映画祭では「ダークスター」(1974)や「ゴーストハンターズ」(1986)、「悪魔のいけにえ2」(1986)、「ポルターガイスト2」(1986)、「エル・トポ」(1971)、「エレメント・オブ・クライム」(1984)も見ました。

今から思うと、どれもわざわざ映画祭で見なくても良かったかなレベル、だったかも。

お祭りって言葉に浮かれた、若気のいたりですね。

 

さて、「死神レーサー」もとい「処刑ライダー」そのものは、青春+サスペンス+SF(ホラー)を足して4で割ったような出来

話は極めてシンプルで、「俺を殺して、彼女を横取りしようとした奴らは、全員ぶっ殺す」ってだけ。

 

主人公は不良グループに殺されて蘇ったって設定なんですが、どうして甦ったかという説明は一切ありません。

一応、生前と蘇りでは顔は違うみたいです。

 

主人公が復讐する不良が絵に描いたよな奴なんですが、「お前は俺の女だ」と言って付きまとってる主人公の彼女(一旦しんでるから元カノ?)にエッチどころか、キスさえもしません。

彼女のいるところに現れては「俺の車に乗れ」って言って、家まで送り届けて「忘れるな?お前は俺のものだからな」と言って去っていきます。

これ、よく考えたらアッシー君ですよね?

 

そんな不思議設定がチラホラあるものの、見ている方も「まぁいいか」ってなるような映画。

 

典型的な深く考えたら負けの映画です。

 

一応、不良グループはカーマニアという設定。

街道で早そうな車を見つけたら一方的にレースを挑んで、ちょっと汚い手を使って勝ったらその車を頂くことを繰り返してます。

そんな設定なんで、レースシーンがいっぱい出てきます。これは結構迫力あり。

そしてレースが始まると、80年代に流行ったハードロックがガンガン流れるんですよ。

オジー・オズボーンモトリークルー、ボニー・タイラーなどなど。

今は廃盤になってるサントラも人気があるようです。

そんな彼らに交じって、ライオンというバンドが2曲提供。

日本でしか売れなかったと言われるバンドですが、僕は好きで、来日公演も見に行きました。

この映画に使われてる「Never Surrender」って曲は悪くないですよ。

Never Surrender

Never Surrender

  • Lion
  • ポップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

当時は「フットルース」(1984)や「トップガン」(1986)といった映画で使われた曲から全米トップ10入りする曲が出てきて、やたらと有名ミュージシャンを集めてヒットチャート狙いのサントラを作るのが流行ってました。

この映画もそんな流れにある一本で、レースシーンは勿論、全体的に当時流行ったMTV風です。

 

さて、話は主人公が一人一人血祭りにあげていくんですが、正直、主人公自体はちっともピンチになりません。

普通は途中で反撃に遭ったり、罠にハメられたりする捻りがあるんですけど、そんなものはありません。

当然観客は主人公贔屓なので、超安心して見ていられます。

 

主演は一応チャーリー・シーンですが、意外に出演シーンが少なめ。

何故なら謎の車(復讐用)に乗ってる時は、黒づくめのレーシングスーツっぽい服(ちょっとマッドマックスが入ってる)とスモークの貼ったフルフェイス(顔は見えないですが、チャーリー・シーンは演じてないと思います)。

その上、ドラマの部分でも、不良たちや主人公の弟、元カノだけで話が進むところが多く、チャーリー・シーンが絡んでくるシーンは限られてます。

これで主演はちょっとなー、いかがなものか、というレベル。

 

そうなると、この映画の主役は黒づくめの男と復讐用の車

このレーシングスーツには、謎の金属パーツが付いてるんですが、不良を一人始末する度に、パーツが一つづつ消えていくんです。

どろろ」の百鬼丸の反対バージョンですね!

これも「なぜ消えるのか、そもそも何のか」といった説明はなし。

 

で、この復讐用の真っ黒なスポーツカーが、ちょっとカッコいいんです。

でも不良たちが「あの車はなんだ?フォルクスワーゲンなのか?」って言うシーンがあるんですが、当時のフォルクスワーゲンがそんなスーバーカー作ってましたっけ?

ここはフェラーリとかでしょ?(個人的にはマクラーレンって気がします)

処刑ライダー_ターボ・インターセプター

ちなみに映画の完全オリジナルではなく、実際にあるダッジ・ターボ・インターセプタ―という車が元になっています。あまり改造してないっぽいです。

でも動画や画像を検索すると、この車には「処刑ライダーの・・・」という説明がつくことが多いみたいです。

 


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ただ残念なのは、映画の中のこの車、手垢とか汚れが目立つんです。

こういう謎めいた車は、埃一つないピカピカじゃなきゃダメでしょ?

ここはスタッフの車を磨く根性が足りてません。

 

敵役の不良を演じるのはニック・カサヴェテス。知る人ぞ知る、異能の俳優&監督ジョン・カサヴェテスの息子。

アッシーくんなのは別にして、普通にステレオタイプの不良を演じてます。こういう映画では、変に凝るより、捻りのない悪役の方が分かり易くていいのかもしれません。

彼の手下達も、モヒカンのイカれたヤツがいたり、妙に気の小さいやつがいたり、自信満々のヤツがいたりと、教科書通り。

 

ラストはかっこよく去っていく(冥界に戻って行く)のかと思ったら、恋人と駆け落ち。あ、亡霊ではなく、生まれ変わりというか、実在する人物だったんですね。

 

そう言えばチャーリー・シーンが元カノと二人で田舎で泳いでいて、水の中で彼女が見つめ合ったら、肩から水着を脱いで、おっぱいポロリするシーンがあるんですよ。

この映画で、最初に見た当時のことを思い出すことはほとんどなかったんですが、このシーンは「あった、あった」と思い出しました。

元カノがエロオーラを出してるタイプじゃないのに、ポロリとするから妙にリアルな色っぽさがあったから覚えてたのかもしれません。

(B級映画って、あからさまにポロリ役と脱がない清純役に分かれてるっていうのなセオリーですよね?)

 

予定調和と言えばカッコいいけど、誰にでも先が分かっちゃう、捻りのないお話

本当にMTV全盛期のミュージックビデオの延長にあるような映画でした。

 

そういう意味で、さらっと見れると言えば、見れちゃうお気軽映画ですね。

 

DVDは手頃な値段で新品が入手できます。