戦争映画って大体、第二次世界大戦とかベトナム戦争とか、実際にあった戦争を舞台にしたものが多いと思うんですが、たまに傭兵が描かれる映画が作られます。
中学生~高校生ぐらいって、そういう傭兵がカッコいいっていう中二病的な発想になる年頃。
そんな時期に公開されたのが傭兵映画「ワイルド・ギース」(1978)。
ちょっとしたオールスターキャストの映画です。
公開当時に見に行ったんですが、ちょっと中途半端な気持ちになりました。
さて、どこが中途半端だったのか、それとも子供だから本当の大人のロマンが分からなまったのか、早速検証します。
(あらすじ)
ベテラン傭兵の主人公は、イギリスの富豪にアフリカの某国の元大統領の救出作戦をい依頼される。それは現政権のトップで、外国に反発のある将軍を追放し、元大統領を返り咲かせることで、見返りとして銅鉱山の利権を手に入れるためだった。主人公は何人かの仲間に声を掛けてチームを結成。募った兵隊と一緒に訓練をこなし、アフリカに潜入。見事に元大統領を救出した。しかし同時期に富豪は現政権の将軍を手を結び、銅鉱山の権利を手に入れる。もはや元大統領は不要となり、作戦自体を闇に葬ろうとする・・・
当時見たのは岐阜の自由劇場という半地下の、小さめの洋画館でした。
同時上映もあったと思うんですが、覚えてません。
出演はリチャード・バートン、リチャード・ハリス、ロジャー・ムーア。ハーディ・クリューガー。
結構、名優揃いです。
パンフレットやポスターでも4人が、がっつり出てます。
「ワイルドギース」と言えば、このイラストだと思うんですけど、実はパンフレットでは、これ、裏表紙なんですよね。
個人的には、当時からちょっと盛り過ぎ&古めかしすぎるんで、あまり好きじゃないんですよね。
ちなみにパンフレットの表表紙の方が僕は好きです。
傭兵ってキビキビして、冷徹で、またそれがカッコいいっていう、勝手なイメージがあるんですよ。
(「エクスペンダブルズ」シリーズになると行き過ぎですけどw
)
でもこの映画の傭兵たちって、ちょっとそのイメージからかけ離れて、人間味があり過ぎるんです。
その上、全体的に出演者の年齢が高過ぎ。
特に主演の4人。
リチャード・バートンは、「冷徹な殺人鬼」と呼ばれるプロの傭兵隊長ですが、アル中っぽいし、何よりも年齢が高過ぎ。隊長なので、シニアでもいいのでは?と思うところもあるんですが、最前線でマシンガン片手に戦う姿がイマイチなんですよ。さすがに名優なのでそれなりに見せてますが、実戦のプロっていう感じは薄かったです。
リチャード・ハリスのベテラン作戦参謀は悪くなかったですかね。インテリっぽいし、意外と戦闘服で前線にいても違和感ないんです。ベテラン役はこの人一人で十分だったんじゃないでしょうか。
ロジャー・ムーアは丁度「007/私を愛したスパイ」(1977)の翌年なので、現役感はあります。でも、この映画でも女好きだけど、腕利きの傭兵、ってジェームス・ボンドみたいな役なんですよね。女好きって言ってもゴルゴ13みたいに一晩だけの関係じゃなくて、昭和の中小企業の社長みたいに、いろんなところに彼女がいるっていうキャラなんですよね。ちょっとプロの傭兵のイメージから離れてません?
さすがに当時スパイ映画の主役を張ってるだけあって、現役感はあります。
一応、設定上は「何でも運転・操縦出来る」という特性があるんですが、一番最後の飛行機での脱出シーン以外で生かされなかったのは残念。
ハーディ・クリューガーは、悪人だか善人だか分からないキャラを上手く演じてます。黒人差別をするけど、「俺は金のために戦うだけ。主義主張は関係ない」と一番傭兵っぽいです。
救出した元大統領(黒人)をバリバリ見下しているものの、彼を背負って移動しているうちに、元大統領の理想に共感し、「くろんぼ」呼ばわりするのを止め、最後は元大統領を守るために死んでいくのはムネアツです。死ぬまで元大統領に親し気にせず、セリフの端々でお互いに敬意を払うようになっていくのが分かる展開も男気があっていいです。
今回見直して、「ハーディ・クリューガーが死ぬシーンって、こんなにグっとくる展開だったのか」というが再発見でたのは良かったです。
さて、話の方ですが、前半1時間弱は準備&訓練。
あれ?こんなに準備する部分が長かったっけ?
リチャード・バートンが依頼を受けて、元の傭兵仲間リチャード・ハリスとロジャー・ムーアを探して、説得するところは、傭兵ものの定番で悪くはないです。
特に引退して子供との生活に幸せを見出しているリチャード・ハリスを説得するところは、鬼ですね。
犯罪組織に追われてるロジャー・ムーアを救出するところは、街中で手榴弾を使うなど「大丈夫か?」という展開。
兵隊を鍛えるのに長けたベテランの軍曹も誘われて仲間になるんですが、彼が意外に準主役級の存在で、良い意味でドラマの人情部分に厚みを加えてくれます。
ちなみにハーディ・クリューガーは元々は仲間ではありません。
そこから50人の仲間を集めるシーンがあるんですが、これが結構ガッカリ。
ベテラン(老兵)が多いし、素人でも採用!とか、「やる気あるのか?」状態。
更にベテラン曹長が鍛えるシーンでは、「死ぬ~」とか言ってる老兵が目立って、「これで戦えるのか?これだったら若くて、現役感のある人間をスカウトしたら?」と思っちゃいます。
同じ頃に「戦争の犬たち」(1980)という同じアフリカを舞台とした傭兵映画があります。
映画の完成度として、「ワイルド・ギース」より下に見られてますが(まぁ、反論は出来ないですけど)、主演のクリストファー・ウォーケンとトム・べレンジャーはまさに今が現役の若きプロの傭兵という感じがしていました。
「戦争の犬たち」の情が入り込む余地のない粛々とした調査や準備のシーンと比べると、この映画はシニアの仲良し同窓会っぽいです。
「現役の時は、黄金の左足って呼ばれてたんだけどな~」ってサッカー部OB試合で、腹の出たオジサンが照れながら、一生懸命走ってる姿がダブります。
映画的にはロマンの部分って必要なのは分かりますが、ちょっと「ロマン」を入れる部分が違ってるかな、と。
出撃前日に「これから最後の休憩だ。朝まで帰って来なくていいぞ。街に行って酒飲んで、女と遊んでこい!」って言われて、兵隊がトラックの荷台にギュウギュウに乗って、浮かれて街に向かうシーンがあるんです。
戦争映画によくあるシーンなんですが、やっぱりカネを貰って戦う集団っぽくないですよね。
なんか、ちょっと情が入り過ぎたシーンは、昭和の日本の戦争娯楽映画を思い出しました。
傭兵映画ではありませんが、プロ感覚とロマン(情)のバランスは「鷲は舞い降りた」(1977)が最高だと思います。
後半の作戦実行から脱出までは、なかなか見せてくれます。
やはり見どころは最初に敵に襲われるシーン。
川にかかった橋でトラックが故障。立往生でているところに、怪しげな飛行機が近づいてきて、機銃掃射や爆弾投下を行い、傭兵たちの1/3が犠牲になります。この場面は初めて傭兵たちが守る側になったシーンで、緊迫感があります。
その後は数に物を言わせて襲ってくる敵の追撃をかわしながら、逃げるんですが、主人公たちが手榴弾を投げると、敵の兵隊が爆発で、ギャグみたいに空高く吹き飛ばされます。
そのシーンを見ながら「あー、テレビの新作映画紹介で、このシーンをよくやてった」と妙なことを思い出しました。
とにかく銃を乱射しまくって、何とかオンボロ輸送機があるところまで辿き、なんとか脱出するのがクライマックス。
ロジャー・ムーアが飛行機の準備をしている間に、お約束のように傭兵たちがバタバタと死にます。
そしてお約束のように、ちょっといい脇役(嫁さんの反対を押し切って駆け付けた軍曹など)は死んでいきます。
そして最後の最後でリチャード・ハリスが足を撃たれ、滑走する飛行機に飛び乗れず、リチャード・バートンが彼を撃ちます。(捕まると拷問されてから処刑されるから)
そんなボロボロの状態で、傭兵たちを乗せた輸送機は何とか飛び立って脱出するんですが、ここで何故か明るいマーチ調の音楽が流れます。
確かに脱出できたから、万歳なのかもしれませんが、主人公を自らの手で親友を撃ち殺さなければならなかったし、生き残ってる傭兵も1/3足らずで、みんなケガをしてズタボロ。
ここは万歳じゃないですよね。明らかに悲劇です。
だから重い旋律の音楽を充てるべきでしょ。
ここの音楽はセンスなさすぎです。
ラストシーンはちょっとだけ爽快、そしてちょっとだけホロリです。
後半の「切り捨てられる傭兵の悲哀」は、なかなか面白かったと思います。
これはカネで雇われた限り、傭兵は雇い主の都合で捨て駒にされるのも仕方ないという、僕の勝手なイメージに合ってました。
悪くはないですし、飽きるシーンも少ないですが、やはり僕が期待する傭兵映画のイメージから外れているので、満足度はそんなに高くないです。
監督のアンドリュー・V・マクラグレンは戦争映画や西部劇の多い人なので、人選的にいは間違いじゃなかったし、実際に演出は臭くなり過ぎず、良かったと思います。
やはり、僕がひかっかるのは、シニアの仲良し同窓会っぽいところでした。それがなければ、かなり凄い傭兵映画になったんじゃないでしょうか。
(でも、一般的な評価は高いみたいです)
そう言えば、「ワイルド・ギース」は戦争映画なのに、主題歌があるんですよ。
それも映画の内容にちょっと似つかわしくない爽やかなメロディの主題歌。
やっぱり、この映画の音楽担当、センスないかも。
(悪い曲じゃないし、こういうヒットし易い主題歌を強引につけるは、やっぱり70年代なのかも)
70年代のマニア向け戦争映画だから、i-tuneにないだろうな、と思ったら、ありました!
昭和の傭兵映画といえば、「戦争プロフェッショナル」(1966)もあります。
地味な作品ですが、これもいつかレビューしたいと思います。
(録画したビデオテープがあるんですが、ビデオデッキが動くかどうか怪しいです)
今回もPRIME VIDEOの100円レンタルのお世話になりました。
最近、古い映画が100円レンタルに出るので有難いですし、思いもかけない(忘れてた)映画にも出会えるので、個人的にはフル活用しています。
「ワイルド・ギース」はDVD、Blu-ray共に入手可能ですが、ちょっとお高めですかね。
リマスター版もありますが、更に値段が高いです。