パグ太郎の<昭和の妖しい映画目撃者>

昭和の映画目撃談&時々その他いろいろ

【喜劇競馬必勝法】昭和のサラリーマン喜劇の王道を楽しむ!

「喜劇競馬必勝法」(1967)

当然、リアルタイムで見てないですし、TVでも見たこともありません。

もっと正直に言えば、つい最近までその存在さえ知りませんでした。

何でこんな映画を見たかというと、シリーズ二作目の「喜劇競馬必勝法 大穴勝負」(1968)が地元岐阜ロケだと知ったので、「まずはシリーズ1作目を押さえておくか」と思って、今回見ました。

古き良き昭和の喜劇をレビューします。

 

(あらすじ)

中堅電機会社に勤務するサラリーマンの主人公は仕事より競馬が大好き。仕事なんて退職金もらうまで適当に手抜きでやればいいという主義。片や新社長は会社の効率化を推し進める反面、3か月前から競馬にハマっていた。仕事をサボり競馬場にいた主人公は、同じく会議をキャンセルして競馬場に来ていた社長とばったり会う・・・

喜劇競馬必勝法 ポスター

オープニングのタイトル~主人公が勤めるアジア電気のCMまで、これぞ昭和っていう雰囲気が楽しめます。

現在の昭和ブームって大雑把に二つに区切れると思います。

 

昭和30年~昭和40年までの高度成長期時代

レトロ昭和と言えば多分、こっちですね。「三丁目の夕日」シリーズの世界。

 

昭和50年~昭和64年(平成初期)までのバブル期

こっちも最近はトレンディドラマやJポップなど、ブームみたいですね。

 

今回は勿論、前者。

ただ今作られるレトロ映画と違って、「リアルタイム」で作られてるので、「昭和レトロ見せます!」みたいな演出はなく、レトロ感が全面に出ているワケではありません。(もちろん、いたるところレトロですが)

 

この映画、とにかく出演している役者さん達が凄い。

ボンクラサラリーマンを演じるのは、当時人気が絶頂のクレージーキャッツのメンバーだった谷啓さん。本当にこの役がピッタリ。

そして競馬予想家には大物喜劇俳優伴淳三郎さん。この人はもともと芸達者ということもあり、実にそつなく、期待される役を期待通りに演じてます。

この他にも伴淳三郎さんの奥さんが京塚昌子さん、娘が小川知子さん、伴順三郎さんの弟子が山城新伍さん谷啓さんの奥さんが白川由美さん、といった豪華キャスト。

他にも小松政夫さん小林稔侍さん三木のり平さん丹波哲郎さんも出ています。

僕は出演している役者さんがベテランになってからしか知らないので、若かりし頃の姿を見て「おお」と思わず嬉しくなりました。

このキャスティングだけでも、当時の映画作りの熱気とパワーを感じます。

 

前半は競馬はベテランだけどボンクラな主人公に、社長が競馬を教えてもらう話。会社とプライベートの逆転劇は「釣りバカ日誌」シリーズに似てるでしょうか。

この前半の主人公は当時人気上り坂だった谷啓さん。期待通りの軽薄サラリーマンぶりが似合い過ぎます。

きっとこのまま社長と競馬のやり取りをしていくのがメインだろうなぁ、と思ってたら、後半は出張中の社長に頼まれた馬券代30万円を「どうせ当たるはずがない」と同僚と飲み食いに使ってしまったら、それが大穴になり、配当が500万円!になっちゃう展開に。

何とか社長が出張から戻ってくるまで500万円を用意しなきゃいけない。さてどうするか?っていう話になります。

 

谷啓さん達が500万の穴埋めをするために、「競馬で一発逆転を狙いたい」と頼み込んだのがベテラン競馬予想屋伴淳三郎さん。

ここで主役が谷啓さんから伴淳三郎さんにスイッチ。

予想屋の名にかけて一発大穴を狙いにいくため四苦八苦する姿が描かれます。

 

この主役のスイッチは本当に感心しました。

前半を若手の人気タレントを主役に据え、後半は大御所を主役の据えてトリを取らせる展開。

それも自然とつながるようになってる脚本は職人技です。

 

短い時間の中で起承転結あり、細かいピンポイントエピソードあり、谷啓さんの家庭と、伴淳三郎さんの家庭のそれぞれドタバタあり、と、ギッチリと詰め込んで、破綻もせず、楽しい91分でした。

本当に面白い喜劇って、時代が変わっても、ちゃんと楽しめるんですね。

 

その中で何が一番印象に残ったかというと、次々と出てくる大物芸人たちの達者な演技。

みなさん、ちゃんと役にはまったキャスティングをされていて、とっても生き生きしています。

あの時代の喜劇スターたちを楽しむにはとてもいい一本じゃないでしょうか。

 

大魔神」(1966)の時にも書きましたが、本当に日本の映画産業の黄金期は、特撮でも、こういうサラリーマン喜劇でも、ちゃんと面白いオリジナル作品に仕上げてしまうパワーがあったと実感しました。

いい時代だったんですね。

 

pagutaro-yokohama55.hatenablog.com

 

今回もPRIME VIDEOの100円レンタルを利用して見ました。

ただしDVDは現在、入手困難なようです。