パグ太郎の<昭和の妖しい映画目撃者>

昭和の映画目撃談&時々その他いろいろ

【アニマル・ハウス】今だから分かる?スーパーダメ大学生コメディ

「アニマル・ハウス」(1978製作/1979日本公開)。

ブルース・ブラザース」(1980)「狼男アメリカン」(1981)のジョン・ランディス監督の名を一躍有名にしたコメディ。

当時、大爆笑喜劇という触れ込みだったので、劇場まで行ったんですよ。

でも、残念ながら中学生だった僕と友達は面白さが全く分からなかったんです・・・

さて、今見るとどうなんでしょうか?

 

(あらすじ)

アメリカの某大学。

男子学生クラブの中でも最も格式の高い「オメガハウス」にやんわりと入部を拒否された、落ちこぼれ新入生二人組は、学校の中で最もお下劣な最低集団「デルタハウス」に入部することになる。

しかし学長は「オメガハウス」と手を組んで、「デルタハウス」を追放しようとしていた・・・

 


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アニマル・ハウス パンフレット表紙

 

岐阜での封切は自由劇場っていう、ちょっと小さな劇場。

同時上映は「アメリカン・グラフィティ」(1973)。

アメリカの青春映画で、監督は「スターウォーズ」(1977)を撮る前のジョージ・ルーカス。日本公開は1974年で、この時はリバイバル上映でした。

評価の高い映画で、全編に流れるオールディーズを集めたサントラもヒットしました。

 

 

「アニマル・ハウス」は当時流行ったナショナル・ランプーン誌(ハーバード大学のユーモア専門誌からスタートした有名雑誌。1998年に廃刊)が作った第一弾映画。

 

舞台は1962年のアメリカの大学。

同時上映の「アメリカン・グラフィティ」の時代設定も1962年。

この組み合わせは1962年のアメリカの学生生活縛りだったんですね。

(「アニマル・ハウス」は大学生、「アメリカン・グラフィティ」は高校生ですが)

 

この1962年は、実は隠れキーワードだったんじゃないでしょうか。

当時のアメリカはベトナム戦争に本格介入が始まったばかり。

また黒人の公民権運動は真っ最中でした。

 

つまり、まだ白人と黒人の間に壁があり、学生はベトナム戦争に疑問を抱いてない時代なんです。

 

だから、この映画の大学生に黒人はいません。

黒人が出てくるのは、白人の学生パーティーの会場で歌うバンドと、黒人たちが集まるバーに主人公たちが迷い込んだ時だけです。

だから黒人たちが集まるバー(白人禁止)に、彼らが入った瞬間に敵対視されるのが「笑い」になるわけです。

 

また、のちに大学で吹き荒れる反戦デモのかけらもなく、軍事教練をするチームが学内にあるぐらいです。(これもイジリのネタになってる)

 

これは今回見て、「なるほど~」と思った点でした。

 

さて、この映画の宣伝で主役扱いされていたのは、ジョン・ベルーシ

唯一無二の存在で、傍若無人のキレキャラをやらせたら右に出るものはいません。

役柄も超ハチャメチャキャラなので、存在感はあります。

でも主役ではありません。

寧ろ、話と関係なくずっと暴れている感じ。

 

狂言回しは「デルタクラブ」の会長とオッター+新人二人。

彼らを中心に、ダメ集団「デルタハウス」のメンバー、メンバーと付き合ってる女学生(カレン・アレン)、マリファナでラりってる大学教授(ドナルド・サザーランド)が入り乱れて進んできます。

 

カレン・アレンは「レイダース/失われた聖櫃」(1981)や「スターマン/愛・宇宙はるか」(1984)でも可愛いかったですが、この映画でも相変わらず可愛いです。僕のお気に入りの女優の一人です。

 

そしてドナルド・サザーランド

この人はめっちゃ好きです。

「M★A★S★H」(1970)や戦略大作戦(1970)と同じく、この映画でもぶっ飛んでる非常識キャラですが、そういう役を演じさせると本当に上手い

息子(「24」のキーファー・サザーランド)は、まだ父親の域には達してないと思います。

 

ちなみに主人公たちのライバル「オメガハウス」のメンバーに「あれ?ケヴィン・ベーコンに似てる奴がいるなぁ」と思ったら本人でした。

この映画がデビュー作だそうです。

 

そして今回判明したのが、ギャグの大半が下ネタだった、ということ。

この下ネタを中学生の僕が理解できなかったことが、面白く感じなかった要因の一つかも。

 

だから、今回見た率直な感想は、結構面白い!

これが大人になるってことですね。

 

そして何よりも、僕がこの映画を見た数年後に、ぐーたらのダメ大学生を経験したことも大きいです。

そのお陰で、この映画のキャラ達のバカバカしさをずっと身近に感じることが出来ました。(笑)

 

人生経験って偉大だ。

 

きっとあの時代を懐かしむ気持ちもあったんでしょう。

 

でも、冷静に考えれば、なんであんなダメ人間製造機みたいな時間を懐かしむのか不明過ぎますけど。

 

この映画って言ってしまえばドタバタ喜劇なんです。

一歩間違うと混沌としちゃうところを、ジョン・ランディス監督は登場人物やエピソードをテキパキとさばいていて、観客を迷子にさせません。

この辺りに才気を感じさせますが、やはり映画の完成度という点では「ブルース・ブラザーズ」や「大逆転」(1983)のレベルにはないです。

 

pagutaro-yokohama55.hatenablog.com

 

実は同時上映の「アメリカン・グラフィティ」の面白さも分からなかったんです。

こっちも今見たら分かるんでしょうか。今度見てみたいと思ます。

 

さて、この映画、実はスタッフが結構豪華。

製作がアイヴァン・ライトマン(「ゴーストバスターズ」シリーズの監督)、脚本がハロルド・レイミス(俳優として有名)だったんですよ。

みんな、「アニマル・ハウス」から巣立っていったんですね。

 

この映画、エンドクレジットで「登場人物のその後」っていうフェイク解説があるんです。

そのうちの一人が「彼は後にナショナル・ランプーンの編集長になった」とあるので、脚本家としてクレジットされているダグ・ケニー(ナショナル・ランプーンの共同設立者)の半自伝かもしれませんね。

 

ダグ・ケニーの自伝映画「意表をつくアホらしい作戦」(2018)はNexflixのオリジナル作品として配信されてます。

ちょっと日本語タイトルがアレですが、こっちも是非見てみたいです。

 

ちなみにナショナル・ランプーンを描いたドキュメンタリー映画もあって、「Drunk Stoned Brilliant Dead: The Story of the National Lampoon」(2015)というんですが、日本未公開&未ソフト化のようです。

 


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どこかが日本語字幕付きのDVDを出してくれないですかね?

 

「アニマル・ハウス」はPRIME VIDEO、Nextflix、U-NextのサブスクにはなかったのでDVDレンタル屋を利用しました。

 

現在、DVDは入手可能です。

このDVDはスペシャルエディションで、特典として「その後のデルタハウスのメンバーはどうなったか?」というフェイクインタビュー集が付いてます。勿論、オリジナルの役者さんが演じてるとか。

これは見てみたいので、買ってしまうかも、です。