キングコングって何度も映画に登場してますよね。
最初にキングコングが映画に登場したのは「キングコング」(1933)。
その後、続編、リメイク、リブート、ゴジラとのバトル、メカコングとの戦いといろいろと登場。オリジナル版だけでも1976年と2005年に2回リメイクされてます
僕の世代にとって、最初にリアルタイムで触れたのは1回目のリメイク「キングコング」(1976)。
高層ビルの上で、戦闘機を鷲掴みにして吠えてるイラストにワクワクしました。
(あらすじ)
時代は現代。未発見の島を見つけた石油会社は、そこに石油が埋蔵されてると睨んで、探査船を送る。その島に謎の生物が潜んでいると考えて密航した生物学者、救命ボートで漂流しているところを助けられた女優の卵を乗せて、探査船はついに島に到着。しかし無人だと思っていた島には原住民がおり、ヒロインをさらってわコングの花嫁として捧げられることになった・・・
まぁ、この後はヒロインに恋したコングを捕まえて、ニューヨークで見世物にして一儲けしようと思ったら、逃げられて、最後はヒロイン片手に高層ビルに登る、っていうのはオリジナルと同じです。
その点ではオリジナルに比較的忠実なリメイクと言えます。
この映画は公開時に劇場で見ました。
岐阜駅の近くにあった日劇という、古くてうらぶれた映画館です。
ほとんど客がいなかった記憶があります。
でも大作扱いだったのか、当時の岐阜では珍しい同時上映なしの、一本上映でした。
余談になりますが、この頃(昭和50年前後)って話題の映画の公開前に、TVで1時間半~2時間の特番があったんですよ。
人気があったのが「007」、「SF映画」、「ホラー映画」(これは夏場がメイン)。
内容は映画の内容や見どころ紹介は勿論のこと、メイキングや同じジャンルの過去映画の紹介もありました。
007であれば「過去のジェームス・ボンドの秘密兵器を一挙見せます!」だし、ホラー映画では「(過去の)映画に登場したモンスター大集合!」、SFなら「全て見せます、宇宙人、超科学兵器!」と番組を膨らませてました。
勿論、このキングコングにも特番がありました。
その中で一番宣伝しまくってたのが、「今回のキングコングは最新の機械で動かしてる」ってこと。
そりゃ子供心に期待しましたよ。
めっちゃ、凄い映像が見られるんだって。
でも映画館を出る時は、「・・・・」でした。
そんなワケで、今回のレビューまで、46年間一瞬たりとも「もう一度見よう」という気になりませんでした。
監督のジョン・ギラーミンはオールスター大作「タワーリングインフェルノ」(1974)をヒットさせた後、ちょっと締まりのない大作をよく請け負って作ってた人。でもすぐに失速しちゃいました。
それでも見始めると意外にしっかりしてるなぁ、って思ったんですよ。
画面作りとかスケール感があって、なかなか上手い。
あれ?当時つまらないと感じたのは、こういう普通の映画的な良さが分からなかったのかな?と思ったんです。
が、それは間違いでした。
まず第一波がやってきます。
ジェシカ・ラング登場です。
のちにアカデミー主演賞を受賞する名女優です。
なんとこの映画がデビュー作。
演技は問題がありません。
問題はキャラ設定。
完全にスーパー天然さん。
謎の島へも「上陸したい、上陸したい」とピクニック気分。
更に上陸するなり、「私をつかまえてごらん。おほほほほ」って感じで、一人で森の方にダッシュ。
他の登場人物が大人映画的にリアルな設定(未発見の油田探し、謎の生物生存の可能性を探る動物学者)なのに、彼女だけが非リアルな行動を繰り広げます。
頭の中がお花畑の彼女に振り回される他の登場人物たち・・・
見ていてイラっとします。
ヒロインに感情移入なんて無理。
そして第二波。
この謎の島のジャングルに入ると、それまで重厚だったロケ中心の画面が、急にしょぼくなります。
背景の山は絵、地面はコンクリートの上に土を盛っただけ、植物もジャングル特有の自然に茂ってる雰囲気ゼロのスカスカ度・・・露骨にスタジオで組んだセットです。
あれ、このスタジオセットの雰囲気、どっかで見たことあるぞ・・・
遂にコング登場。
・・・
これ、着ぐるみだよね?
・・・
昔、早朝の神田駅でサルの着ぐるみをきてフラフラしている人を見たことがあります。
あの後ろ姿に似てます。
そしてコングは大蛇と戦います。
着ぐるみのコングが大蛇を自分から体に巻き付けて、一人で芝居をしてるように見えます。
大蛇の頭だけが不自然にコングに嚙みつこうと左右に動くんです。
どうやら頭をつってるピアノ線で動かしているようです。
あれ、このモンスター同士のバトルの雰囲気、どこかで見たことあるぞ・・・
思い出しました。
これ、完全に子供向けになった昭和のゴジラ(東宝チャンピオンまつり)でよく見た特撮です。
セットで作られたジャングル、明らかに人が入ってることが分かる着ぐるみの動き、怪獣プロレスと揶揄された不自然なバトル。
昭和生まれの子供たちには馴染みの東宝特撮です。
ハイテクじゃなかったのか???
あとで知ったんですが、機械はごく一部で、やはり基本は着ぐるみだったようです。
この着ぐるみのコング、何が一番問題かっていうと、体型。
手足の長さが明らかに人間。
ゴリラって手が長いのに、手足の比率が普通の人間と同じなんですよ。
(まぁ、人が入ってるんだから、仕方ないかも)
それがめっちゃ不自然。
その辺りは同じ着ぐるみでも、東宝の「キングコングVSゴジラ」(1962)のキングコングの方が作り物で腕を長くして、コング体型を再現しようと頑張ってたと思います。
この島で一番印象に残っていうのは、コングはジェシカ・ラングをさらうと、手のひらの上にのせて、指で服を脱がせようとするシーン。
この時のコングの顔が、リアルにニヤケてるんですよ。
セクハラ親父の顔です。
そんなところはリアルにしなくていいのに。
そんで、一瞬、おっぱいがポロンと出るんですよ。
同年代の友達(当時小学生)が今でも口を揃えて「覚えているのはあのシーンだけ」と言うぐらい印象的なシーンです(笑)
ってか、もうこの時点で、モンスター映画として破綻してますよね?
次の波はニューヨーク。
コングは大暴れし、人は踏みつけるは、電車は壊すわ、被害甚大。
高層ビルによじ登ると火炎放射器で攻撃されるコング。
(ちなみに今回登るのは911で崩壊した、今はなき貿易センタービル)
だが、主人公の動物学者が「やめろ!」
そしてコングが反対側のビルに飛び乗って、火炎放射器から逃れると、「やったー!」
まぁ、動物学者だから仕方ないんだろうけど、人がいっぱい死んでるのに「やったー」はないよね・・・
ヒロインもコングを殺さないで!を連発。
時代の流れとして、モンスターにも理解のある人物設定をしたんでしょう。
でも、あまりに人物像や話の深堀が出来てないので、ただ単に「他人の迷惑かえりみず、自分の主張だけを通しまくる」過激な環境保護団体みたいになってました。
これじゃ、主人公たちに感情移入は無理です。
見ている方もコングを応援した方がいいのか、倒された方がいいのか迷います。
きっと当時としての流行りの「悪がそのまま悪とは限らないし、善が必ずしも本当に善とは限らない」っていう風潮を、コングや登場人物に持ち込んだっぽいです。
きっと60年代のアメリカンニューシネマ以降の脱ハリウッド路線の影響でしょう。
でもその持ち込み方がヘタクソ過ぎて、映画に深みを与えるどころか、マイナスでしかありませんでした。
そもそもモンスター映画って、ある程度「悪と正義の対立構造」を作っておかないと楽しくないんですよね。
そして子供たちの心を打ち砕いた最後の波が、コングを倒す攻撃ヘリコプター。
え?ヘリコプター?
戦闘機ではなく、ヘリコプター?
またもやポスターに騙されました。
更にポスターは「昼」だけど、映画でこの場面は「夜」。
勿論、コングの体型も全然違うし。(しつこい?)
日本の特撮とは違ったハイテクで動くリアルなコングが画面いっぱいに暴れ、最後は最新の戦闘機とのバトルを期待していた子供たち。
だが彼らが見たのは、「露骨に着ぐるみのコングがちょこちょこ暴れ回り、最後はヘリコプターにハチの巣にされる東宝特撮のグレードアップ版みたいな映画」でした。
やっぱりあの時の感想は正しかったようです。
だって今回も見終わった後、「もう一度見ることはないな」って思いましたから。
まぁ、責任の半分は過剰に期待をさせたポスターと特番にあるとは思いますが。
ジェシカ・ラングもこの映画を黒歴史にしてるんじゃないんでしょうかね。
この映画はサブスク(AMAZON PRIME、Nextflix、U-Next)にはなかったので、レンタルDVD屋で借りました。
新品のDVDは手に入るようです。