パグ太郎の<昭和の妖しい映画目撃者>

昭和の映画目撃談&時々その他いろいろ

【2001年宇宙の旅】世紀の名作SFを劇場で!

2001年宇宙の旅(1969製作)

説明不要の名作ですね。

この映画をこのコラムで取り上げるのも、どうかと思います。

名作だけでなく、「オネアミスの翼」(1987)同様にレーザーディスクもブルーレイも持ってるし、何年に一度は見ている映画。

そんな映画を何故書くかというと、実は38年ぶりに劇場で見たからです!

 

(あらすじ)

荒廃とした土地に類人猿の一群がいた。しかし彼らは弱く、虎や敵対する類人猿のグループに襲われ、衰退していた。彼らの前に謎のモノリスが出現。そこに触れると、彼らは近くに落ちていた動物の骨を手に取り、こん棒のように使えることを「発見」する。そして、その道具で動物を狩り、敵対するグループを打ちのめしていく。こうして彼らは人類の一歩を踏み出した。

時は流れ21世紀。月で同じようなモノリスが発見される。モノリス木星に向け電波を放っていた。数ヶ月後、人工知能を搭載した宇宙船ディスカバリー木星に向かって出発した。


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この映画が初公開されたのは、まだ幼稚園の頃。

当然、リアルタイムでは見ていません。

13歳離れた兄が映画好きだったので、物心ついた頃には家にこの映画のポスターが飾られていました。

やがて自分も映画好きになった小学生の頃に、「いつか見たい」と思った一本です。

初めて見たのは、高校2年ぐらいの時。リバイバル上映を岐阜の衆楽館という、大スクリーンの映画館で見ました。

この時は期待値が高かったのと、内容が哲学的なこと、当時の僕は派手なアクション系の映画が好きだったこともあり、実は途中まで睡魔との戦いでした。

 

2001年宇宙の旅 リバイバル上映時のパンフレット

次に劇場で見たのは、浪人時代。

名古屋の伏見にあった名画座でした。

確かボーリング場が入っているような複合娯楽施設の中にある小さな映画館で、「時計仕掛けのオレンジ」との二本立てで見ました。

 

この時も「ビジュアルは凄いけど、話は冗長だなぁ」って思ってたんです。

(余談ですが、今はどちらの映画館も閉館になってます)

 

それでも、やっぱり惹かれるものがあって、レーザーディスクを買ったり、ブルーレイを買ったりして、ちょこちょこ見てました。

そんで見ているうちに、冗長という印象が薄れていって、どんどん好きになっていったんです。

 

浪人時代以来、TVの画面でしか見ていなかった「2001年宇宙の旅」。

しかし、たまたま川崎のチネチッタで、ライブサウンドというシステムを使った特別上映があると知って、早速出掛けました。

 

劇場入り口に掲げられたポスター

後から調べたら、2018年にオリジナルの70ミリプリントで、国立フィルムセンターでの上映会もあったらしいんですよ。勿論、予約券は即完売だったみたいです。その後、各地のシネコンIMAXでも、大迫力上映会もやってたとか。

 

見たかった~

 

さて今回のチネチッタでの上映会は、多分完全版。

何が完全版かというと、

①最初は真っ暗なままクラシックが流れる

②途中で10分間の休憩が入る

③エンドクレジットが終わってからも、ワルツ名曲「美しき青きドナウ」が客電がつかないまま最後まで流れる、

があったからです。

昔、名古屋で見た時は①、②はなし、③は途中で切られてたような記憶があります。

 

久々に劇場で見た感想は、素直に面白かった、です。

 

劇場という「場」もあり、今回はずっとテンション高く見れました。

 

いやー、まさに完璧な映画だと思いました。

やっぱりキューブリックは凄いです。

 

この映画の特徴は、徹底して感情を排していること。

登場人物でほとんど感情を露にすることはありません。

だからこそ、メモリーを外されて、ただの機械レベルに落とされる時に抵抗する人工知能HALの姿が印象に残ります。

彼が「デイジー、デイジー・・・」と歌いながら機能を停止していく姿は、登場人物の誰よりも人間臭く感じました。

 

またどこを切っても嘘っぽさや、作り物っぽさがない映像美は圧巻です。

元々キューブリックがプロのカメラマンだったということもあるのでしょうが、とにかく画面作りに手抜きはありません。

隅々まで神経が行き届いているのが分かります。

物語の大半は宇宙が舞台なんですが、CGのない時代にどうやって撮影したんだろ?っていうような「特撮」というレベルをはるかに超えた完成度の高いシーンの連続。

スペースシャトルの中で浮遊するボールペン、遠心力を利用して擬似重力を発生させてる宇宙ステーションや船内等を見るだけでも一見の価値があります。

これがこの映画を古びさせない理由の一つでしょう。

 

ただ当時話題になったラストのスターゲイトのシーンだけは、昨今のSF映画のワープシーンを見慣れた目には古臭いと感じるかもしれません。

 

隙の無い美しい画面に、極力説明や感情が排除されて淡々と進む物語。

それが観客を神の視点にさせ、見終わった後に歴史ドキュメンタリーを見たような気にさせます。

 

当時、難解と言われたストーリーは、いろんなところで色んな解説が出尽くしたせいもあって、意外にすんなり入ってきます。

ただそういう情報のない人にとっては、何も説明のない人工知能HALの反乱やスターゲイトからスターチャイルトに至る展開は「何故?」「何?」となるかもしれないので、一回見て、いろんな解説を読んで、もう一度見ると断然楽しめます。

 

そしてこの映画を格調高くしているのは、BGMがクラシックっていうこと。

当時、SF映画全編にクラシックを使うなんて、かなり斬新でした。

(実はキューブリック監督が、「とりあえず」ということで趣味のクラシックを付けてみたところ、あまりにマッチしたので、そのまま使ったらしいです)

 

特にスペースシャトルが宇宙ステーションに向かうシーンで流れる「美しき青きドナウ」は最高。今てこそ、アクションシーンに静かな音楽を当てたりすることがありますが、当時はこうしたミスマッチは新鮮な驚きでした。

 

美しき青きドナウ(『2001年宇宙の旅』より)

美しき青きドナウ(『2001年宇宙の旅』より)

  • シティ・オブ・プラハ・フィルハーモニック・オーケストラ
  • サウンドトラック
  • ¥153
  • provided courtesy of iTunes

 

壮大で、哲学的なので、気軽には見れませんが、一定時間が経つと見たくなる中毒性のある作品です。

 

ちなみに続編の「2010年」(1984)という映画があります。監督は「アウトランド」(1981)など娯楽映画を得意とするピーター・ハイアムス、主演は当時売れっ子だったロイ・シェーダーでした。

そして出来た映画は、僕らの不安を裏切らない、この映画とはかけ離れたB級娯楽映画でした。それも65点ぐらいの出来の。

この映画のファンなら、間違いなく怒り心頭になるような作品で、多分、誰も続編とは認めてないと思います。

 

pagutaro-yokohama55.hatenablog.com

 

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