今回取り上げるのはジョン・カーペンター監督作「ゴーストハンターズ」(1986製作/1987日本公開)。
当時ヒットした「ゴーストバスターズ」(1984)にあやかったようなタイトルですが、現代は「Big Trouble in Little China」と全く関係ありません。
典型的な昭和時代の邦題のつけ方です。
これも37年ぶりに見ますが、さてさてどうだったのか。
(あらすじ)
中国人の友達とトラック運転手の主人公は、友達の婚約者を迎えに空港に行くが、その婚約者がカンフーを使う集団に誘拐されてしまう。婚約者を追って二人はチャイナタウンに入り込むが、今度はそこで対立するギャングの抗争に巻き込まれてしまう。更にそこに謎の老人と超能力を使う3人組が現れる。やがて主人公たちは、謎の老人が現世に復活するために婚約者を自分の花嫁にするという計画を立ててるいることを知る・・・
ジョン・カーペンター好きなんで、前回に続いて連投です。
今回で彼の監督作を取り上げるのは3回目。(製作総指揮の作品も入れると4作目)
この映画、カーペンター作品の中でも「忘れられた作品」になってるんじゃないんでしょうか。
でも当時は第二回東京国際ファンタスティック映画祭(1986)のクロージング作品だったんですよ。僕もそこで見ました。
まぁ、だからと言って凄い大作か話題作ってワケではありません。
むしろ、カーペンター人気のお陰でクロージング作品に選ばれただけで、中身はいつものB級お手頃映画。
カーペンター監督が、香港B級娯楽映画を自分の解釈で作り直した「だけ」のこじんまりした作品です。
さて、最初、この映画の宣伝を見た時は香港映画の「ホワイトウォッシィング」版じゃないかと疑ってました。
だって主人公のカート・ラッセルは、同じカーペンター監督作品で、カルト的な人気を誇る「ニューヨーク1997」(1981)で、アウトローヒーローを演じてたんです。
(有名ゲーム「メタルギアソリッド」の主人公のモデルになった役ですね)
だからこの映画も、「きっと妖術にドタバタする中国人を、カート・ラッセルのタフガイがカッコよく助けて問題解決する」映画なんだろーなー、って予想したんです。
他にもヒロインらしき女性が3人出てきますが、二人は白人、もう一人のスージー・パイも名前はアジア系っぽいんですが、見た目はアジア系っぽくないです。
「あー、やっぱりヒロインも、もろにアジア系じゃウケないからかー」と。
だから「きっと白人至上主義の映画なんだ」思ってました。
まぁ、この頃の映画ってそれが普通だったし。
しかし、見終わっ後に思ったのは・・・
これ、カート・ラッセルが一番間抜けじゃん。
そういう映画でした。
簡単に言えば東洋(中国)の妖術使い退治の世界に、間抜けな白人が紛れ込んだ話。
本当に出てくる白人、全員がドンクサい。
カート・ラッセルは、何でも腕っぷしで片付けようとするけど、ずっと空回り。
問題を解決していくのは、相棒の中国人や良き妖術使いの老人を初めとする、チャイナタウンの住人たち。
主人公たちと行動を共にする新聞記者の女性(ヒロインの一人、白人)なんて、ずーっとキャーキャー騒いでるだけで、話的には全く何の意味もありません。
カート・ラッセルは主人公というより、狂言回しってとこでしょうか。
結局、チャイナタウンの住人達が、妖術使いの老人とその部下の超能力3人組から婚約者を取り戻す話。
カーペンター流の香港娯楽作へのオマージュではなく、普通にカーペンター監督が香港娯楽作を撮りました、といった方がしっくりきます。
まぁ、よく考えれば、もし間抜けな白人を出さなければ、ただの香港娯楽作もどきになってましたね。(笑)
だっていつもは頼りがいのあるタフガイ、カート・ラッセルが間抜けなキャラを演じて、笑いを取ってるからこそ、「ちょっと変わった映画」になったのかもしれません。
寧ろ婚約者を誘拐されるカート・ラッセルの相棒の中国人の方が、ユーモアを交えつつ、武術を駆使して戦うので主役っぽく見えます。
さて映画の出来としては、70点ぐらいでしょうか。
時間は99分と長くないし、ダレることなく楽しめます。
出てくるキャラも、妖術使う悪役たちや日頃は観光バスの運転手をしている、実は街を守る良い妖術使いの老人など、味があって魅力的。
娯楽作品としてはちゃんとツボを押さえいます。
(良い妖術使いを演じてるのは、名脇役のビクター・ウォン)
ワイヤーアクションを使った格闘シーンもあり、ユーモアを交えながらの話の展開はテンポも良く、ドキドキしながらも安心して見られるという娯楽作の定番の作り。
ただ凄く印象に残るようなところはなく、見終わったら「あー、面白かった」で終わって、数年後には所々は覚えていても、全体の話は忘れてしまうようなレベルです。
カーペンター監督の仕事ぶりは、A級にする気が全くない、B級映画職人という姿勢がいつもになく出ています。
お陰でカーペンター作品に時々見られる「突然安っぽくなる」「唐突に話の展開が雑になる」ことはほとんどありません。
(「突然安っぽくなる」「唐突に話の展開が雑になる」を堪能したい人は、「ゼイリブ」(1988)を見ましょう。)
pagutaro-yokohama55.hatenablog.com
そういう意味ではカーペンターの映画が好きなら見ておいていいかな、と思います。
オンデマンドにもないし、いつも通ってるレンタルDVD屋にもありませんでした。
今回は運よく宅配レンタルDVDのラインナップにあったので、借りてみました。
Blu-rayは結構お手軽な値段で見られているみたいです。