「刑事マルティン・ベック」(1976製作/1978日本公開)
渋い刑事ドラマです。
原作は有名な「刑事マルティン・ベック」シリーズの「唾棄すべき男」だそうです。
すみません、僕は読んでいません。
(あらすじ)
病院に入院中の警部が何者かに惨殺された。刑事ベックと仲間たちは、捜査を進めるうちに被害者が悪徳刑事だと知る。犯人は被害者に杜撰な対応をされたことで妻を亡くした元警官だと分かるが、その時、彼は自動小銃とライフルを持って、ビルの屋上に上がっていた・・・
この映画、原作者はスウェーデンの方、舞台もスウェーデン、そして制作もスウェーデンという、生粋のスウェーデン映画。
70年代ぐらいまでは、こういうヨーロッパの娯楽映画って、普通に日本で上映されてたんです。俳優のアラン・ドロン(仏)やマルチェロ・マストレヤンニ(伊)って日本でも人気あったし。
最近はイギリス映画を除くと、ヨーロッパ映画=文芸作になっていて、娯楽作はなかなか目にすることがないのが残念です。
当時、この作品はB級娯楽作品として公開されたようです。
僕も劇場で見たのですが、当時の岐阜あるあるで、何かと同時上映でした。
そしてお目当てはこの映画ではない方の映画でした。が、それが何か思い出せません。
今度、帰省をしたら、図書館で当時の新聞広告を探してみたいと思います。
前半の捜査をしていくところは、渋い人間ドラマ。
まぁ、主人公のマルティン・ベックを始め、主要な刑事の半数が初老の疲れたオジサンというのがリアル。当然、アクションシーンはありません。
日本の刑事ドラマなら、ベテラン刑事がのらりくらりしながらも、人情味を交えつつ、キレのある推理をして、若手の相棒がそれを尊敬する、みたいな展開になりますが、マルティン・ベック刑事は怒鳴り、部下を問い詰め、捜査のためなら相手に嫌な思いをさせるのも厭わないキャラ。間違った人間を容疑者と決めつけたり、と人間味がありありです。
そんなキャラに支えらたドラマは、渋くはあっても、飽きることはないです。
また街並みや人の雰囲気が、明らかにアメリカ映画とは違い、本当にヨーロッパ風(当たり前ですけど)なのも個人的には面白かったですね。
後半になると、唐突に犯人がビル屋上からライフルと自動小銃で警官を狙う展開に。
警察側の主人公もベックたち初老のオジサンから若手の刑事にシフトしてアクションシーンが増え、一気に娯楽作っぽくなります。
狙撃された警察のヘリコプターが街中に墜落するシーンなんて、結構迫力があります。
だがそんな盛り上がりの中、突然ベック刑事が「犯人確保に俺が行く」とビルに入っていきます。
そして屋上をよじ登り、上半身を出したところで犯人と目が合い、
バン!
胸を撃たれて、そのまま下のバルコニーに落下。
いや、防弾チョッキをきているから、ここから反撃だな?と映画的には思うじゃないですか。主人公だし。
そしたら胸から血がゴボゴボ。あれ?死んだ???
撃たれたことに気づいた若手が、意識のないベック刑事を救出。そのまま突入し、犯人を確保し次の瞬間に、画面が真っ暗になり、エンドクレジットが流れて映画が終わります。
え?確保の後の余韻も、その後もなし???
マルティン・ベック刑事の生死も不明・・・
あらすじとしては、班員逮捕で実質終わっているから、いいのかもしれませんが・・・こういうところがスウェーデンテイスト??
この映画、日本では洋画の歴史に埋もれたB級扱いだと思いますが、アメリカ映画や日本映画とは違ったスウェーデンテイストが気にならなければ、よくで出来た刑事ドラマの佳作です。
振り返ると、21世紀になってからこういう手堅い娯楽作品って、随分減ったんじゃないでしょうか。
確かに観客からすると、1800円の入場料で、こじんまりした娯楽作品では元が取れた気がしないっていうのもありますが・・・
個人的には好きなんですけどねー。
余談ですが「刑事マルティン・ベック」シリーズは、スウェーデン国外でも人気があったらしく、日本では角川書店から翻訳も出てます。
また1973年に、このシリーズの「笑う警官」が、アメリカでアメリカで映画化されてます。これも見てみようと思ってます。
(主演はウォルター・マッソー。日本でのタイトルは「マシンガンパニック/笑う警官」)
今回はレンタルDVDを利用して視聴しました。
サブスク系にもないし、新品のDVDも廃盤になっているようです。