「ガントレット」(1977)はクリントン・イーストウッド主演・監督の刑事ドラマ。
「ダーティー・ハリー3」(1976)の翌年で、ダーティー・ハリー人気も一段落した頃です。
当時はやたら派手な銃撃戦が全面に押し出されてました。
初公開時に劇場で見たんですが、僕もそのシーンしか記憶にありません。
さてどんな映画だったのか、46年ぶりに見てみます。
(あらすじ)
フェニックスのしがない刑事の主人公は、新任の警察長官からラスベガスまで行き、留置所に入っている裁判の証人を連れてくるように言われる。ラスベガスに到着すると、証人の女性は「ここを出たら殺される」といって抵抗するが、主人公は無理やり連れだす。偽装して救急車でラスベガス警察署から連れ出し、途中でレンタカーの乗り換えようとするが、予定していたレンタカーが爆発。更に救急車で移動中に、謎のセダンに銃撃を受ける・・・
初めてこの映画を見たのは、確か岐阜の衆楽館だったと思います。
同時上映はピーター・フォンダ主演の「アウトローブルース」(1977)。こっちの映画も水上ボートで川を爆走するシーン以外、さっぱり覚えてません。ネットで調べたらアクションコメディとあったので、いつか見たいと思います。
さて、この映画が公開された頃から主演・監督で絶賛された「許されざる者」(1992)まで、クリント・イーストウッドは緩やかな低迷期でした。
簡単に言えば悪くもないけど、素晴らしくもない映画ばっかりが続くワケです。本人もダーティー・ハリーとはちょっと毛色の違った役に挑戦し続ているような感じでした。
そんな頃の一本が以前にレビューした軍事SF「ファイヤーフォックス」(1982)だったりします。
pagutaro-yokohama55.hatenablog.com
同時はクリント・イーストウッドの刑事ものということで、それなりに注目されていました。
ポスターやパンフレットもそんな調子でした。
超アクション巨編に見えません?
これ、日本だけの煽りイラストかと思ったんですよ。
でも、輸入盤のサントラも同じなので、世界共通のようです。
サントラの話はまた後で書くとして、内容ははっきり言って70点あるかないかの出来。
何とかクリント・イーストウッドのスター性で質を保ってる感じです。
ただし、クリント・イーストウッドじゃなかったら、もっと出来が悪いかと言われた、実はそんなこともないんじゃないかって気もします。
この映画、本当はしがない、やる気のない刑事が巻き込まれてくうちに、真剣に彼女を守り、悪と対決していくっていう話だと思うんです。
でも、イーストウッドって、刑事をやるとやっぱりダーティー・ハリーがダブるんです。雰囲気もそのまんまだし。
だから「本当は強いんでしょ?」って見ている方が無意識に思っちゃうんじゃないんでしょうか。
本人の責任ではないんですけど、やっぱり残念。
そういう意味で、「イーストウッドは、どんな映画でも、どんな役でも常にイーストウッド」っていうハリウッドスターの王道の人だと思いました。
(今はトム・クルーズがまさにそういうキャラですね)
もうちょっと芸達者な俳優だったら、前半は頼りない感じや有能ではない感じを出せたんじゃないかって思います。
後半の悪に立ち向かうシーンは、まさにダーティー・ハリーそのまんまな感じでしたし。
クリント・イーストウッドが保護する娼婦役はソンドラ・ロック。
イーストウッド映画の常連、ってうか実生活でもイーストウッドの恋人だった人です。
共演したのは全部で6本。女っ気の少ないイーストウッド映画の中では群を抜いてヒロイン的な存在だった人です。
とってもきれいな顔立ちですが、ちょっと華奢な感じと存在感の足りなさが、昔から個人的にイーストウッドと組み合わせは映画的にイマイチだなぁ、と思ってました。
ただしこの映画では鼻っ柱の強い娼婦役がめっちゃ似合っています。
終盤の主人公に愛情表現をする姿は、とってもかわいらしいです。
この映画に一番ハマってたのは彼女じゃないでしょうか。
さて、この映画をダメにしているのは、映画の売りとなっていたアクションシーン。
何十人も囲んで家を銃撃しまくるとか、車を待ち伏せて、何百発も浴びせるとか、主人公が防弾したバスで市庁舎に向かうクライマックスでは、道路の両脇の歩道とビルから何百人の警官が銃を撃ちまくるとか、どのシーンも見ている方が「こりゃ、あり得んだろー」と思わず言ってしまうような出来。
たった二人を殺すのに、家や車、バスが壊れるまで銃弾を撃ち込みまくる必要はないし、そもそも警官が命令とはいえ、それを街中でやるのは不自然過ぎます。
(ちなみに銃の撃ち方が明らかに不自然な警官役も多いです)
このシーンで、一気にリアリティがなくなりました。
ちょっと地味目の話を盛り上げるために、凄いシーンを盛り込みたかった気持ちは分かりますが、それがこの刑事ドラマをおとぎ話みたいにしてしまってると思います。
刑事ドラマってどこかでリアリティを確保しておくのが、見ている方もハラハラするんですけどね。
そしてダメなのはラストシーン。
あんだけ苦労して、証人を連れてきたのに、最後は悪玉が射殺されて終わり???
それじゃ証人を連れてきた意味なくない?
今まで、二人で頑張ってここまで来た意味がなくなるラストで、話はぶち壊しです。
そんなこともあって、アクションシーンとラストシーンを除けば、きわめて真面目で、且つスタンダードな刑事ドラマでした。
アクションシーンで盛り上げずに、話の捻りで盛り上げた方が良かったんじゃないでしょうか。
映画の出来は可もなく不可もなくでしたが、サントラは素晴らしいです。
特にオープニングを飾る「Br
leak Bad Big City Dawn」と、そのバリエーションの「Closer Look At a Closer Walk」が最高。
演奏はジャズ・サックスの名手アート・ペッパーです。
高校生ぐらいの時に「ワーナー映画名作シリーズ1 アクション編」というサントラのコンピレーション盤を買いました。
聴くなら他の楽団が演奏したやつじゃなくて、オリジナルのサントラがいいんだけど、お小遣いに余裕はないし・・・と悩んでいた僕にとって、めぐみの1枚でした。
入っていたのは「燃えよドラゴン」(1973)「ブリット」(1968)「ワイドルバンチ」(1969)「俺たちに明日はない」(1967)「大海戦史」(1959)「ロビンフッドの冒険」(1938)「ガントレット」だったんです。
それぞれから2曲づつ入ってたんですが、「ガントレット」からは「Bleak Bad Big City Dawn(汚れた街の夜が明けて)と「The Black Sedan(黒いセダン)」だったんですが、「Bleak Bad Big City Dawn」のクールさにハマり、単独で「ガントレット」のサントラレコードを買い、大人になったらCDで買いなおすぐらい、「ガントレット」の音楽が好きでした。
実はサントラレコードを買って分かったのは「ワーナー映画名作シリーズ1 アクション編」に収録されている「Bleak Bad Big City Dawn」は、そのバリエーションの「Closer Look At a Closer Walk」の方でした。レコード会社のミスみたいです。
ちなみに「ブリット」の音楽もカッコ良かったです。
今回もPRIME VIDEOの100円レンタルセールを利用して視聴しました。
DVDはお手頃な値段で手に入るようです。