パグ太郎の<昭和の妖しい映画目撃者>

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【パラダイス・アレイ】スタローン初期の人情物。戦わないスタローンも良い?

今やアクションスターの大御所として語られるシルベスター・スタローン

彼はチョイ役・脇役の長い下積時代を経て、「ロッキー」(1976)で一躍注目されました。

 

そんな彼の人情ドラマ「パラダイス・アレイ」(1978)をご存じでしょうか。

彼の半自伝とも言われている、こじんまりとして、ちょっとしんみりする映画です。

 

(あらすじ)

第二次世界大戦直後のNY。スラム街に住むイタリア人三兄弟の次男コスモはいつも金儲けをすることばかり考えているような男だった。しかし何をやっても上手くいかず、長男には真面目に働けと言われ、好きな女性には相手にされない。そんな時、ナイトバーでやっている賭けレスリングに弟を出し、一攫千金を狙おうとするのだが・・・

 

パラダイス・アレイ DVDジャケット


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「ロッキー」シリーズや「ランボー」シリーズ、近年では「エクスペンダブルズ」シリーズでアクションスターとし成功を収めてるシルベスター・スタローン

 

ただ時々、アクション以外の、いろいろな役にチャレンジしています。

きっと元々、脚本家・監督志望だったこともあり、アクションスターの枠から脱却したかったんじゃないんでしょうか。

 

特に「ロッキー」の成功の直後、ヒューマンドラマの俳優・脚本家を目指していたように思えます。

 

そんな時に出演したのが「フィスト」(1978)と今回紹介する「パラダイス・アレイ」。

 

「フィスト」は実在の労働組合のリーダーを下敷きにした文芸ドラマで、「パラダイス・アレイ」はニューヨークの貧民街に住む三兄弟の人情話。

 

どちらもヒットしなかったようで、この二作品の後は「ロッキー2」(1979)に出演。その後、「ランボー」(1982)でアクションスター路線を邁進するわけです。

 

さて、「パラダイス・アレイ」のスタローンは、脚本・監督・主演をこなしています。ちなみにこの映画が彼の初監督作品です。

 

更に何と主題歌まで歌ってるんですよ。

彼が主題歌を歌ってるなんて、後にも先にもこの映画だけなんじゃないんしょうか。

 

正直、歌は上手くないんですが、味があります。

それに曲自体の雰囲気や歌詞が、映画にマッチしていて、個人的には大好きな一曲。

特に出だしの、

 

Too close to paradise and too close to hell
And sometimes the difference is too hard to tell

が気に入ってます。

 


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主人公はイタリア系の3兄弟。

時代は第二次世界大戦直後。

 

将来を嘱望されてたのに戦争で負傷し、人生を捨てたように生きている長男。

いつも金儲けのことを考えてる、お調子者の次男。

ちょっと頭が弱いけど、腕っぷしが強くて、兄弟思いの真面目な三男。

 

スタローン演じる次男が、この映画の狂言回しである次男です。

 

ちなみに長男を演じるのはアーマンド・アサンテ

ちょい悪い役も、ちょいいい役も出来る俳優ですが、主演を張れるレベルの人ではありません。実際に主演作は「探偵マイク・ハマー / 俺が掟だ!」(1982)ぐらいでしょうか。

「プライベート・ベンジャミン」(1980)の主人公を裏切る恋人役が印象深いです。

 

pagutaro-yokohama55.hatenablog.com

 

閑話休題

 

前半はシルベスター・スタローンの次男が、あの手この手で調子よく金儲けに奔走する姿が描かれます。怪力の弟を利用して金儲けをしたものの、世捨て人の長男から「弟を食い物にするな。真面目になれ」と説教をされるダメ人間。

 

この時点でスタローンにしては珍しい、軽薄な男を演じています。

やることやなすこと、目の前のカネばかり。

他人を利用してでも人生を楽しく生きなきゃ、ってキャラが意外に合ってます。

 

しかし後半から話は一転。

 

田舎で恋人とボートハウスで暮らす夢を持つ三男は、腕力を生かして、何キロもあるデカい氷を各家庭に運ぶ仕事をしてます。

大したカネにはならないんですが、ボートハウスを買うために小銭を貯めている真面目な好青年。

 

この時代、電気冷蔵庫はまだ普及していなくて、彼らが住むイタリア人街では、毎日大きな氷を入れて物を冷やす冷蔵庫が主流。

彼はエレベーターのないアパートの階段を、重い氷を担いで上がってるんです。

 

ある日、一番上の階まで持って行くと「電気冷蔵庫を買ったから、氷はもういらないわ」と言われ、重い氷を担いだまま階段を下りていく三男。

 

その途中で、氷を階段に投げ出します。

 

砕けながら階段を滑り落ちていく氷の塊。

 

電気冷蔵庫が普及して、これから氷を運ぶ仕事がなくなっていくのを彼が悟ったことを暗示しているんですが、この表現が本当に素晴らしい。

彼のやるせなさが見事に描かれてます。

このシーンだけでも見る価値はあります。

 

そんな時、スタローンがナイトクラブ「パラダイス・アレイ」ででやっている賭けプロレスの存在を知り、弟にチャンピオンに挑戦させます。

三男は見事に勝利し、賞金を手にしたことで、スタローンは本格的に賭けプロレスをやらないかと弟に話を持ちかけます。

 

長男は反対しますが、スタローンと三男に説得され、三男に無理なことをさせないために自分がマネージャーをやることを条件に承諾。

スタローンは渋々、トレーナーを担当することになります。

 

ここから見事なドラマの転換をしていきます。

 

三男は連戦連勝。

最初は慎重だった長男は、どんどん羽振りが良くなり、三男をけしかけるようになります。やがてカネ優先になり、せっかくヨリを戻した恋人とも破綻。

 

反対にスタローンは、三男に負かされたチャンピオンがボロボロになっていることを知り、自分がやっていることに疑問を抱きます。

スタローンは今まで冷たくしていた、彼に好意を寄せる女性の愛を受け入れ、カネではなく幸せを実感します。

 

ついにスタローンは、カネ儲けに邁進する長男を諫め、三男にレスリングを辞めさせようとします。

 

この長男とスタローンのキャラが入れ替わっていく展開はお見事。

 

クリスマスの試合は、制限なしのデスマッチでは、血みどろになる三男。

反対していたスタローンも応援し、長男もカネのためではなく三男を応援。最後に勝利した三男に二人が抱きつき、兄弟の和が戻ったところで映画は終わります。

 

最後がややロッキーっちくですが、見終わって良かった~と思う映画でした。

 

小作品ながら、とにかく脚本が巧み。

兄弟それぞれの葛藤と心の揺れが上手に描けていました。

派手な盛り上がりはないし、大作ではありませんが、時間があれば、ちょっと見て欲しい一品です。

 

この映画を見れば、「ロッキー」(1976)の脚本(スタローン)がフロックではないことが分かります。

 

またスタローンの演技は、軽薄なお調子者ら、人に対して優しくなっていくキャラへの変化を自然に演じていて、まさにはまり役。

もしこの映画が成功していたら、彼は文芸ドラマの映画作家や、アカデミー主演賞を撮るような俳優になっていたかもしれません。

 

アクションスターの彼を十分楽しんだ世代ではあるんですが、やっぱり「もしも」を考えてしまうと、ちょっぴり残念です。

 

この映画はPRIME VIDEO、Nextflix、U-Nextのサブスクにはなく、DVDレンタルもなかったので、DVDを購入しちゃいました。