オープニングのラッドカンパニーのロゴが懐かしいです。
そんな懐かしいロゴから始まる「白いドレスの女」(1981製作/1982日本公開)。
監督のローレンス・カスダンが「スターウォーズ・帝国の逆襲」(1980)や「レイダース・失われた聖櫃」(1981)の脚本家ということで、SFファンの間でもこの作品は注目されてました。
当然、封切りで見に行ったんです。
でも、全く面白くなくって、ラストシーンしか記憶にありません。
そんな映画ですが、今見たらどうなんでしょう?
(あらすじ)
主人公は小さな事務所でのらりくらりと仕事をしている弁護士。女好きの彼は、パーティーで白いドレスを着た人妻に声をかけるが断られる。しかし会話で得た情報から、翌日、彼女がいそうなバーに行き、再び声をかけ、彼女の家で関係を結ぶ。二人はのめり込むようにお互いを求めるようになるが、彼女の遺産相続の話から物事は怪しい方向に進んでいく・・・
予告編、セリフもキャプションもなく、音も風鈴だけってオシャレですね。
結論から書くと、意外や意外、かなり面白い作品でした。
この面白さが、当時何で分からかなったかな~。
言い訳を書かせてもらうと、勝手に、「手に汗握る(アクション満載の)サスペンス」と思い込んでた中二病の僕に、映画を公平に見る目がなかったんでしょうね。
この再発見パターン多いんで、当時、かなりの中二病だったことが分かります。
当時の自分を叱ってやりたいです。
内容は悪女物のクライムサスペンス。
最初は、行きずりの情事から二人が勢いでズルズル犯罪を犯していく話かと思ったら、実は全て仕組まれてたんじゃないか?っていう展開。
この展開のスムーズさ、ドキドキさは本当に良く練られた脚本です。
このドキドキの鍵となるのが、悪女の方ではなく、ウィリアム・ハート演じる弁護士のキャラ。
とにかく女好きのダメ人間。
弁護士としては、そこそこ有能そうだけど、仕事熱心じゃなく、適当な訴訟を適当にこなしてるだけ。
オープンタイプの赤いスポーツカーに乗ってるんだけど、錆が浮いてたり、埃にまみれてたりして、カッコよくないです。
女性とやることしか頭になくて、そのために仕方なく働いてる感じです。
女性は「ヤったらおしまい」みたいな扱いで、更にエッチの時はコスプレをさせるプチ変態ぶり。
女性の口説きかたも、「ヤらない?」みたいにストレートで、スマートさはありません。
そんなダメ人間がハマる「白いドレス」を着た人妻(実は魔性の女)。
最初は冷たくあしらってたのに、主人公が強引に来た時に、態度を豹変させて情熱的に彼に絡むんです。
そりゃ、こんな豹変されたら大半の男はイチコロです。
ここから暫く二人が裸で絡むシーンが続くんですが、よくある美しく抱き合ってるんじゃなくて、18禁ビデオっぽいエロさなんです。
なんでこのシーンの記憶がないのか不思議です。
高校生なら絶対に食いついてるハズです。
それぐらいセクシーっていうか、エロいです。
当時はそれが18禁っぽいエロさっことさえ分からなかったのかも(泣)
エロシーンが終わると、そこから怒涛の展開に。
彼女の行動は、最初「愛欲に溺れて、思いつきでやってる」ように見えたんですが、徐々に「綿密に計算されつくした計画」だったんじゃないか、って疑惑が沸いてくるんですよ。
その計画には間抜けで、自分の言うことを聞いてくれる弁護士が必要だったんです。
そして主人公は、二人が出会う前に、弁護士仲間が自分のことを彼女に推薦したことを知ります。
つまり、主人公の強引なアプローチにひっかかってしまったと思われた彼女が、実は最初の出会いから主人公をひっかけた側だったんじゃないか、と。
こうなると、どんどん主人公の間抜けぶりがクローズアップ
そして、ラストシーンで全てが彼女の思惑通りだったことがはっきりと分かります。
最後まで曖昧で謎めいたままで終わるっていうのアリなんでしょうが、こうしてはっきりとした方が、「あー、僕ら観客も騙されてた」っていう妙な納得感と満足感があって良かったです(?)
この辺りはさすが名うての脚本家の作品って感じですね。
ホント、なんで当時、この映画の面白さが分からなかったんだろ?
(何度も自問自答)
最初は「ただの情熱的な女」だったのが、終わる頃には「希代の悪女」という二面性を違和感なく演じていて、「さすがキャサリン・ターナー、上手い!」って思いましが、実はこれがメジャーデビューだったんですね。
びっくり。もうこの頃から大器の片りんが見えます。
そして、キーマンである、ちょっとかっこいいし、ちゃんと頭を使えばキレる(でも女に惚けて頭を使わないんですけど)けどだらしないという多面性のある主人公がハマってたジョン・ハートもこの映画が二作目。
当時無名に近い二人をキャスティングするなんて、本当に上手いです。
ちなみに爆弾作りの前科者役で、ブレークする前のミッキー・ロークが出てました。
無名時代からモソモソとした話し方がトレードマークだったんですねー。
脇を固める主人公の友人たち(検察官と刑事)も、いい味出してました。
主人公がヒロインに騙されて犯罪に深入りしてるんじゃないかと配しつつ、最後は主人公を逮捕しなければならないという役を、ちょっと軽さを交えながら演じてました。
あと印象に残ったのが撮影と音楽。
話のポイント、ポイントで出てくる映像が美しく、意味ありげなのも印象的です。
予告編にある風鈴のシーンもその一つです。
そして名作曲家ジョン・バリーの音楽。
舞台となるうだるような暑さの街の夜を、ちょっと気だるいジャスで表現してます。
これが最高。
この映画のサントラは、公開当時は発売されてませんでした。
後に限定版生産で発売さるということで、飛びついて買ったんです。
LPレコードが2,500円の時に5,000円だったかなぁ。
買ったのは今は亡きサントラ専門店SUMIYA渋谷店の通販だったと思います。
何で面白くなかった映画なのに、サントラを買ったかというと、音楽がジョン・バリーだったから。
その頃、彼が作曲した「国際諜報局」(1965)のサントラに凄くハマっていたからです。
そう言えば、そのレコードの一曲目はジョン・バリーの音楽ではなく、この映画を製作したラッドカンパニーのロゴが出るときに流れる音楽でした。
ラッドカンパニーは「炎のランナー」(1981)、「ブレードランナー」(1982)、「ライトスタッフ」(1983)、「ポリスアカデミー」シリーズ等、昭和の時代にブイブイ言わせてた映画制作会社。
昭和の映画ファンには思い出深い会社の一つじゃないでしょうか。
最後に製作したのが2007年なので、今はもうないのかもしれません。
こんなに楽しめる映画を「再発見」できて良かったです。
初めて見たときに「期待させて、こんなツマラナイ映画なんか作りやがって!」と思いましたが、大間違いでした。
ごめんなさい。
Blu-rayはお手軽な値段で手に入るようです。(DVDはちょっと高いです)