子供の頃に見た映画の大半は、おおまかな印象と、どうでもいいシーンぐらいしか覚えてないです。
最近は、そのおおまかな印象が間違っているんじゃないかって思ってます。
特に「面白くない」っていう印象を持った映画は、「実は子供だったから、面白さが分からなかっただけ」なんじゃないかって疑ってます。
だから当時、「つまらなかったなー」と思った映画でも、「もう一度見てみよう!」という気の迷いが生じます。
そんな「当時面白くなかった」映画の一つが「類猿人ターザン」(1981)。
「つまらない」「監督が奥さん自慢をするために撮った映画」という印象しかありません。
そんな映画がPRIME VIDEOの100円レンタルにあったんです。
気の迷い発動。
さて、子供の頃の僕は間違っていたのか検証します!
(あらすじ)
子供の頃、自分と母親を捨てた冒険家の父を訪ねて、アフリカの奥地までやってきた主人公。そこで出会った父は無軌道な冒険家だったが、彼の探検に随伴することにする。その地は、人々が巨大で、強力な猿<ターザン>を恐れる場所だった・・・
記憶では同時上映は「タイタンの戦い」(1981)。
特撮の名匠ハリー・ハウゼンの遺作で、2010年に同名タイトルでリメイク&続編が作られてます。
そんな映画と何故、この映画が同時上映かというと、きっと「たまたま公開時期が同じだったから」だけではないでしょうか。
それ以外に考えられない組み合わせです。
映画ファンとしては、どんな組み合わせでも、岐阜で一本でも多くの映画が見れるだけで有難いんですが、ちょっと複雑な気持ちです。
勿論、僕の目的は「タイタンの戦い」の方。
既に見る前から「類猿人ターザン」の悪評は聞こえてましたが、入場料の元を取るために見ました。
ちなみに見たのはロイヤル劇場です。
出だしは普通です。
いや、往年の冒険活劇を彷彿させて、「悪くない」です。
「なんだ、僕の印象が間違ってたのか」
だが、そう思ったのもつかの間。
ヒロインが海岸ですっぽんぽんになって泳ぎだすところから、雲行きが怪しくなってきます。
とにかく彼女がひたすら美しいヌードを見せびらかします。
(確かに顔も綺麗だし、プロポーションがびっくりするぐらい美しい)
だけど、さすが綺麗なヌードでも長々と見せつけられると飽きます。
それぐらい長い。
この後は何かと理由をつけて彼女はヌードになったり、スケスケの恰好になったりする、彼女のちょいエロいプロモーションビデオ状態。
全て長い。
監督はヒロイン役のボー・デレクの30歳上の旦那、ジョン・デレク。
製作はボー・デレク本人。
プロモーションビデオというのも納得です。
ちなみにジョン・デレクの監督作は4本ありますが、うち3本は嫁さんであるボー・デレク主演。
どんだけ嫁さん好きなんだか。
ともかく、そんな本筋とは関係ない長いシーンが定期的に入ってくるので、せっかくの冒険話がブツブツと細切れになって、リズムが悪くなります。
せっかく名優リチャード・ハリスが、主人公の父親で、いかさま臭い冒険家を怪演してるだけに残念です。
これ、リチャード・ハリス中心の映画にした方が俄然面白くなったハズです。
あ、それだとデレク夫妻がこの映画を作る意味なくなりますね。
リチャード・ハリスと言えば、晩年はハリー・ポッターシリーズのダンブルドア校長役が有名だし、ヒット作・名作に何本も主演している俳優です。
(個人的には、爆弾処理のプロを演じた「ジャガーノート」(1974)が好きです。)
そんな彼が何でこんな映画に出てるんでしょうか?
お金のためだったのかなぁ・・・
ターザンは勿論出てきます。
当然、言葉が話せないという設定なので、セリフはなし。
「オウオウオー」っていういつもの雄叫びだけです。
後半はターザンとジェーン(ヒロイン)が恋に落ちるんですが、薄着で川につかっているジェーンに近づいたターザン。おもむろにおっぱいを触り始めて、やがて服の中に手を入れて触るんです。
設定としては「初めて見る女性の胸に好奇心を持った」ってことなんでしょうけど、ターザンの触り方が妙にエロいです。
まぁ、どうでもいいんですけど。
この後も意味不明な彼女のヌードシーンが何度も出て、最後は悪の族長をターザンが倒してTHE END!かと思ったら、エンドロールで、裸のジェーンがターザンとラブラブで転げまわるシーンが延々と映し出されます。
途中で映像が消えてエンドロールだけになるのかと思ってましたが、最後の最後までラブラブヌードが映し出されてました。
そんなワケで主人公はターザン・・・ではなく、ジェーンでもなく、ボー・デレク自身。
ポスター(DBDのジャケット)も、タイトルが「類猿人ターザン」なのに、彼女のイラストだけ。
ちなみにこんなシーンないですけどね。
ちなみに日本版のパンフレットは、ちゃんと「ターザン」っぽくなってます。
こっちの方が良心的ですが、残念ながら映画の本質を表してるのはDVDのジャケットの方です。
この映画で、彼女は最低映画に贈られるゴールデンラズベリー主演女優賞を受賞しています。
彼女の名誉のために書きますが、演技は決してド下手ではありません。中の下くらいです。
先に書きましたが、旦那監督、嫁さん主演でこの映画のあと、まだ二本作ってますが、どちらもゴールデンラズベリー主演女優賞と監督賞を取ってます。
(ボー・デレクはゴールデンラスベリー賞10周年記念の10年間最低女優賞も受賞しています)
他の二本は見たことありませんが、旦那による「嫁さんの(ちょっとエッチな)プロモーションビデオ」であることは間違いないでしょう。
この映画も結局、旦那がデレデレしながら「俺の嫁さん、見て。こんなに若くて綺麗なんだぜ。サービスに裸も見せてやるよ」という風に撮影したと想像されます。
製作の嫁さんも嫁さんで「私って綺麗でしょ?」なのかもしれませんが・・・
ちなみに残りの2本も彼女の製作です。
ある意味、最強の夫婦愛かも?
これも庇うわけではありませんが、撮影や演出自体は悪くないし、ロケのスケール感もあります。
ちゃんとした編集者がボー・デレクのシーンを適度にカットしてれば、それなりのB級娯楽作になったと思います。ただそれだとここまで馬鹿にされることもなく、歴史に埋もれて、完全に忘れ去られたハズですけど。
もうボー・デレクを見るしかないネタ映画。
そりゃ子供の時の「面白くない。何も印象に残らない」というのは正しかったです。
(ヌードシーンも綺麗だけど、ドキドキ感ないから記憶に残らないです)
ただし今回見て発見が全くなかったワケではありません。
<ターザンの触り方がエロい>ことは新たな発見でした。
さすがに当時の僕には分からなくても仕方ないですけど(笑)
そう言えばターザンの相棒としてオラウータンが出てきますが、オラウータンはアフリカには生息していません。
またライオンが海辺に来て、波の中に入ってくんですが、ライオンはそんなことしないんじゃないんでしょうか?
そういうところがイメージ先行で、雑です。
これを見て、反対に同じく80年代に作られた超真面目なターザン物「グレイストーク -類人猿の王者- ターザンの伝説」(1984)が見たくなりました。
DVDはお手軽に入手出来るようです。