70年代は、文芸的な内容でも、娯楽作に仕立て上げるのが当たり前の時代。
そういう意味では、娯楽作と文芸作の垣根が今よりずっと低かった気がします。
今回レビューする「王になろうとした男」(1975製作/1976日本公開)も、そんな70年代の典型的な娯楽作。
原作は有名作家キップリングの小説。
ショーン・コネリーとマイケル・ケインの共演っていうだけで、僕の世代の映画好きはワクワクするはず。
随分前から見たいと思ってた作品です。
実は先日、BSで放送されてたんてすが、それを知ったのは放送の翌日。
ショックでした。
そうなったら意地でも見たくなるので、泣く泣くサブスクで鑑賞。
さて、どんな映画だったんでしょうか?
(あらすじ)
インドで新聞社の特派員をしているキップリングは、英国の退役軍人である主人公二人と出会う。彼らはアフガニスタンの奥地に、インドの諸侯が支配していない地域があり、そこに王国を築くといい、王国を築く誓いの立会人になってくれと頼まれる。
そして二人は盗賊や厳しい自然を残り越え、アフガニスタンの奥地カリフィスタンに辿り着く。そこで近代戦闘の知恵を駆使し、近隣の村から略奪にあっている村を助ける。主人公の一人ドレイボットは、刺さった矢が服の内側にあったメダルに当たって、血が流れなかったことから、村人から伝説の王だ、と勘違いされることになる・・・
あれ?
ずっと見たことない、と思ってたけど、冒頭やショーン・コネリーの欺瞞がばれるところ、最後にマイケル・ケインが王冠を被ったドクロを置いていくシーン等は覚えてました。どうやら昔、テレビでやってたのを見てるみたいです。
キチンと見てないから、脳内で「見たい」っていう気持ちが、「見た」に上書きされてなかったんでしょうか。
正直、派手さのない映画です。
今時のハラハラドキドキの連続みたいな娯楽性はありません。
原作は「ジャングルブック」で有名なラドヤード・キップリングの同名小説。
映画は原作同様に、キップリングが山師的な二人から聞いた話を回想する形式です。
苦労してアフガニスタンの奥地にたどり着き、軍隊の経験を生かして、王国を築くものの、やがて夢と欲に溺れて、破滅していくという栄枯盛衰のドラマなんですが、そんあ奇想天外な話を奇想天外っぽく見せず、まるで本当にありそうな話としてグイグイ見せてくれるところがポイント。
普通に良質のドラマです。
作品の肌触りとしては、同じショーン・コネリー主演で、同じ年に作られた「風とライオン」(1975)のような立ち位置の作品と言えます。
pagutaro-yokohama55.hatenablog.com
主人公の二人以外の登場人物はほぼ全員脇役というレベル。
女性なんて終盤で主人公が一目惚れする女性ぐらいです。
それもほとんどセリフらしいセリフはないし。
(ちなみにその女性を演じてるシャキーラ・ケインは、名前から分かる通りマイケル・ケインの奥さんです)
こんな男臭い(?)骨太のドラマをまとめ上げてるのは名匠ジョン・ヒューストン。
男臭い映画を作らせたら、ピカイチの監督です。
アカデミー賞やゴールデングローブ賞など有名な賞はほとんど受賞している、ガチの名監督です。
言い換えれば、ジョン・ヒューストンだから、主人公の男二人にガっと焦点を当てた、ブレない骨太の映画になったんじゃないでしょうか。
僕の好きな、変な脇道に逸れず主題をしっかり見せてくれる作りの映画です。
そんなワケで、必然的にこの映画の見所は、ショーン・コネリーとマイケル・ケインという、二大俳優の息の合った演技合戦になります。
ベテラン俳優が、自分達のキャラを存分に利用して演技合戦するって、どんな時代でも映画ファンにはたまらないですよね。
今回もショーン・コネリー、マイケル・ケイン共に自分のキャラを生かしつつ、勝手に王国を作っちゃおうとする胡散臭い山師っぽい男を上手く演じていています。
その胡散臭さの中にも、マイケル・ケインは計算高さ、ショーン・コネリーの威風堂々した感じを出す上手さがあって、見事にキャラ立ってるんですよ。

偽物の王様だったショーン・コネリーが最後、処刑される時に、マイケル・ケインに「すまなかったな」と、ちょっと余裕を感じさながら謝り、マイケル・ケインの「仕方ないさ」って応じるシーンもいいです。
ショーン・コネリーの、いつも沈着冷静でユーモアを忘れないキャラと、マイケル・ケインのどことなくサバサバと運命を受け入れるキャラが生かされてるシーンでした。
また主人公二人を助けるグルカ兵ビリーが、忠誠心溢れる男を演じてナイス。
ラバに乗って逃げろ、と言われても「グルカ兵は歩兵ですから!」と、剣を片手に突っ込んでいって、「今のうちに逃げて下さい」という男気。
そんな彼が最初は相手を倒していくんだけど、数で敵わず、敵に囲まれてボロボロにやられるシーンは涙。
何故かマンガ「男組」の終盤の仲間を庇って死んでいく主人公たちを思い出しました。
さて、映画の最後はバッドエンドだけど、同じ自分の王国を築く男を描いた「地獄の黙示録」(1979)のような殺伐さはありません。
観ているこちらは、彼らを応援しつつ、「こんなバカバカしい話が上手くいくはずないよな。どこかで破綻しそうだな」っていう、意地悪な気持ちも抱くと思うんです。
だから僕はこのバッドエンドも「こんなに上手くってたのに残念」っていうより、「儚い夢って、やっぱりあっさり終わるんだよなぁ」って受け止めちゃいました。
超傑作でも、超娯楽作でもありません。
今の基準からすると小作品と言えるかもしません。
それでもショーン・コネリーとマイケル・ケイン、そしてジョン・ヒューストンという組み合わせが生んだ映画は、ドラマ好きなら楽しめます。
観たら、「拾い物だったかも」って思うんじゃないでしょうか。
現在は単品でのDVD/Blu-rayの入手は困難なようです。
(ショーン・コネリー・フィルムセットというボックスセットに収録されてます)
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