パグ太郎の<昭和の妖しい映画目撃者>

昭和の映画目撃談&時々その他いろいろ

【ジャガーノート】主人公の爆弾処理プロぶりがカッコいい!!!

前回、70年代サスペンス映画の佳作「オスロ国際空港/ダブル・ハイジャック」(1974)をレビューしましたが、今回も同じく70年代サスペンス映画の良作ジャガーノート(1974製作/1975日本公開)を取り上げます。

ちなみにこれもイギリス映画です。

 

これも子供の時にTVでハラハラドキドキしながら見た一本です。

さて、今見てもハラハラドキドキするのか、レビューします!

 

(あらすじ)

豪華客船がロンドンからアメリカに向かって航海に出た。その時、客船の船主会社の元に「ジャガーノート」を名乗る男から電話が入る。「船に7つの爆弾を仕掛けた。夜明けまでに身代金を支払わないと爆弾が起爆する」

イギリス政府はジャガーノートに屈せず、海軍の爆弾処理チームを船に派遣するこを決定。荒天の中を航行する豪華客船に、爆弾処理チームが乗り込むが、荒天の海に飲まれ、一人の隊員を失う。船内に7つの爆弾を発見し、そのうち1つを万全を期して機械による解体を試みるが、不慮の事態により、船員と隊員が犠牲になる。同時にロンドン警察は容疑者を絞り込み、犯人の検挙に全力を尽くす。しかし夜明けが一刻一刻と近づく中、爆弾処理チームのリーダーである主人公は残りの爆弾の解体に挑んでいく・・・


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これも「オスロ国際空港/ダブルハイジャック」(1974)みたいに主人公vs豪華客船に仕掛けられた爆弾、っていう図式がはっきりしてます。

 

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犯人を捕まえて爆破を止める、っていうより、「犯人を捕まえるのは大切だけど、現実的にタイムリミットに間に合わないから、自分たちで解体するしかないよね」っていうのが大筋。

そのため話の焦点は、軍の爆発物処理のエキスパートが、どうやって仕掛けられた6つの爆弾を解体していくかが焦点になってます。

 

犯人探し自体、爆弾解体と平行して描かれますが、そんなに比重は高くなく、物語のアクセント的存在。

 

犯人を始め、主人公や船長の「人としての背景」はあまり描かれません。

このキャラを掘り下げ過ぎないところが、サスペンス映画として、爆弾処理班に焦点に合わせた作りにピッタリでした。

見ている僕らを爆弾処理という軸でグイグイ引っ張ってくれます。

 

こういうシンプルな作りは、同じ70年代のサスペンス映画「パニック・イン・スタジアム」(1976)や「ジェット・ローラー・コースター」(1977)に近いです。

 

上記の二つの映画の犯人が、「一体何者で、動機が何だったのか」というのが一切描かれていなかったのとは異なり、この映画の終盤で、犯人は主人公の元上官であり、政府に不満があったという背景が描かれます。

特に主人公の元上官というのは終盤のキーワードであり、クライマックスの主人公と犯人の「切るのは赤のコードか?青のコードか?」というやり取りはかなり緊迫感がありました。

 

ただし、全く人間ドラマの部分がないかというと、そうではありません。

豪華客船であるという舞台設定を生かすために、主人公たち以外の乗客にミニエピソードがあります。

この辺りは「豪華客船という閉鎖空間に偶然乗り合わせたいろいろな人たち」がいることを実感させる、「グランドホテル」形式の構成です。

これが本筋の爆弾処理を邪魔しない程度に、スパイスとして程よく描かれます。

 

ジャガーノート_ポスター

この映画、主要登場人物のキャラがしっかりと立ってるところに好感が持てます。

 

主人公の爆弾処理チームのリーダーを演じるのはリチャード・ハリス

彼のプロぶりはかっこいいです。

いつも余裕をかますのような無駄話をしつつも、爆弾処理は沈着冷静。

彼が演じた「ワイルドギース」(1978)の副官に通じるものがあります。

信頼できる相棒を失った時、船長室で「こんなのやってられるか!もう止めだ!」って喚いて、酒瓶を壁に投げて感情を爆発させますが、直後にサっと元に戻って船長に「じゃ、仕事に戻るよ」っていう切り替え!かっこいい!

 

全ての爆弾解体に成功し、彼が一人で「俺はチャンピオン♪」と勝利の歌を口ずさむラストシーンは最高にかっこいいです。

このシーンは子供の頃にTVで観た時に一番印象に残ったシーンでした。

 

若い人には、リチャード・ハリスは晩年に「ハリーポッター」シリーズの一作目と二作目で校長役を演じた俳優でしょうけど、いい映画にたくさん出てるので、彼の出演している映画は見て欲しいです。

 

主人公の右腕で、爆弾処理で命を落とす役をデヴィッド・ヘミングスが演じています。眠そうな目がトレードマークで、この映画でも出しゃばることなく、主人公の命令をこなしていきます。その右腕的存在感があるので、彼を失った時の主人公のショックがこちらにも伝わりました。

 

デヴィッド・ヘミングスと言えば初主演の「欲望」(1966)や「サスペリア PART2」で不可解な状況に巻き込まれる、ちょっといい男が似合ってましたが、この映画の実直で、寡黙な隊員もなかなか良かったです。

 

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主人公と時には対立しつつも、協力して豪華客船を爆弾の危機から救おうとする船長を演じるオマー・シャリフは、相変わらず無国籍っぽい雰囲気で、威厳はありました。

ちょっと自己中心的なところ(どうやら女性客と関係しているらしい)も出しつつ、職務はプロでリーダーシップもあるという役柄は、まさにこの人が得意とするキャラじゃないでしょうか。

 

さてこの3人以外では、ロンドンで爆弾犯探しに奔走する若き警視は、若きアンソニー・ホプキンスです。勿論、あのハンニバル・レクターこと、レクター博士を演じた彼です。

ここでは家族思いの、職務に忠実な好人物を演じてます。若い頃の彼は、こういうキャラを演じるのが上手かったですねー。

だから「羊たちの沈黙」(1991)の時は、「こんなキャラを、アンソニー・ホプキンスはこんなに魅力的且つ不気味に演じるなんて!」とちょっと驚きました。

 

この映画では、そのアンソニー・ホプキンスが、監獄にいる爆弾プロに「犯人はどんな男だと思う?心当たりはあるか?」と尋ねるシーンがあります。

爆弾プロに「知ってたとしても言わないし、墓場まで持っていくよ」と言われて翻弄されるところは、アンソニー・ホプキンスが「羊たちの沈黙」のクラリス側に見えて面白かったです。

 

あとマニアックなところで、爆弾犯に脅迫される船主会社の専務役でイアン・ホルムが出演してました。

僕ら70年代ボンクラ映画少年にとって、イアン・ホルムと言えば「エイリアン」(1979)のアンドロイド・アッシュです。

あまり主演をしている映画は少ないですが、意外にボンクラ映画好きが見る映画に印象的な脇役として出ていることが多い役者さんです。

 

大作ではないですが、今見ても良く出来たサスペンス映画です。

誰でも楽しめる映画なので、機会があれば見て下さい。

損はないと思います

 

最近の映画って、余計なことをいろいろと盛り込み過ぎるから、反対につまらなくなってるんじゃないの?と思わさせられました。

いろんな要素がいっぱいることが、必ずしもいいことではないです。

そう思いませんか?

 

そう言えば「パニック・イン・スタジアム」や「ジェット・ローラー・コースター」のようなカラっとした感じはながしないのは、やはりイギリス映画だからでしょうか。

 

新品DVD、Blu-ray共に入手可能ですが、ちょい高めです。

 

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