今回はCG映画の先駆けと言われる「トロン」(1982)
「コンピュータ映像を全面採用したSF冒険映画」
みたいな売り込みだったと記憶しています。
が、映画館から出た時は、「うーん」という感じ。
点数でいうなら65点。
良くないような、でも悪いというほどではないような、でもやっぱりイマイチ・・・
そんな映画を今回見直してみました。
(あらすじ)
コンピューターの大会社をクビとなり、今はゲーセンを営む主人公。その裏では会社が自分が作ったゲームを横取りした証拠をつかむため、ハッキングをする日々だった。同じく会社に疑問を抱く元同僚の手助けで、会社に潜り込み直接ハッキングするが、会社のコンピューターを支配するマスタープログラムが、彼を分子レベルに分解し、電子の世界に送り込んでしまう。そこはマスタープログラムが他のプログラムを隷属させ、支配する世界だった・・・
現実世界は普通の映画、電子世界はコンピューターのプログラムの中という設定。
電子世界でCGが使われているのですが、電子世界全てがCGで作られているのではなく、大半がライブ映像にCG背景やCGで描いたアイテムを合成しています。
だから中途半端感が強いんです。
当時、勝手に「超高度なゲーム世界が再現される」と期待していたので、ガッカリしたのを覚えてます。
でも今回改めて見ると、実は結構凄いことをやっていたのが判明。
82年っていうことは、ゲームセンターにギャラガが出た翌年です。ギャラガはカラーでしが、ドット円の平面型シューティングゲームです。
3Dのシューティングゲームは、黒の背景に緑の枠線だけで構成されたものだけでした。
(スターウォーズのデススター攻略のゲームをやった記憶があります)
そんな時代に、フルカラーで3Dの戦車や戦艦、バイクをスムーズに動かしているんですよ!凄くないですか?
当時の問題は、僕がコンピューターのことを知らなさ過ぎて、カラー3Dを作るのがどれだけ大変か知らなかったことです。
それだけではないんです。
今はコンピューターの知識があることで、話も数倍楽しめました。
メインプログラム、AI、メインフレーム、独立した監視プログラム、他のプログラムへの違法リンク、ユーザーへのアウトプット、プログラムの強制デリート・・・
これ、映画に出てくる言葉やアイディアです。
AIのメインプログラムが悪徳副社長の質問に答えるところなんて、「Google Home」が「アレクサ」ですよ。
今なら当たり前のIT知識ですが、当時、パソコンも触ったことがない高校生が実感として理解するのは無理です。
1982年なんて、家庭にパソコンが普及する10年以上前。
パソコンは高校の物理教室に1台だけ。そんな時代です。
そりゃ僕だけじゃなく、世の中の観客のほとんどが面白みの半分も分からなかったってことです。
製作者側がコンピューターヲタク過ぎたんですね。
そういう意味では、40年経ってやっとこの映画の面白さを理解出来るレベルに僕が追いついたようです。
正直、話自体は平凡です。
大したヒネリもありません。ドキドキする展開も少ないです。
擬人化したプログラムのキスシーンなんて、如何なものかと思います。
それでもこの映画がSFファンの間で語り継がれているのは、前述のCGと電子世界で登場するガジェット等のデザイン、世界観です。
メカデザインはブレードランナーの「スピナー」で知られるシド・ミード。
80年代のSF映画ファンに熱狂的に支持されるカリスマデザイナーです。
(∀ガンダムのデザインは評判悪いですが、)
衣装やコンセプトデザインはフランスのカリスマ漫画家メビウスことジャン・ジロー。
僕もこの人のデザインは大好きです。
彼の画集があれば買いたいですが、見たことないです。知ってる方がいたら教えて下さい。
この映画で一番痺れるのは主人公が電子世界でバイク(ライトサイクル)のレースをするシーン。
「ブロッケード」という陣取りゲーム(劇中では別の名前だったかな?)をリアルなレースとして再現してます。
このシーンがあまりに有名になったので、「ブロッケード」は別名「トロンゲーム」と呼ばれるようになったそうです。
あと音楽も印象的です。
劇中曲は「時計仕掛けのオレンジ」で有名なウェインディ・カルロス。
「時計仕掛けのオレンジ」ほどではありませんが、ポイント、ポイントで雰囲気を盛り上げてました。
そして今回、一番びっくりしたのがエンドロールで流れた曲。
「なんかJOURNEY(僕の大好きなアメリカの有名ロックバンド)っぽいなぁ」と思って調べたら、本当にJOURNEYの曲でした!
彼らのアルバムは全部持っているのですが、「Only Solutions」なんて曲は知らないので調べたら、当時はアルバム未収録曲になってました。
更に調べると、今は彼らの大ヒットアルバム「Frontiers」のCDにボーナストラックとして収録されてるので手に入ることを発見。
このアルバムは、他にもアルバム未収録曲が3曲入っていてお得なのに、Amazonで価格が1,126円!
ボーナストラックのない「Frontiers」は既に持ってるんですが、迷わずポチっとしてしまいました。
ファンの悲しい性です・・・
「トロン」のこの独特の世界観は、いろんなところに影響を与え、フォロワーをたくさん作りました。
スピルバーグ監督の「レディプレーヤー1」もその一つではないでしょうか。
こうして見返すと今は75点はあげたいです。
最初に見た時より10点アップです。
ただ面白さの大半が個性的な世界観であったり、SF的ガジェットであったり、当時の最先端のCG技術だったりするので、反対にそういうものに興味のない人にとっては、ぐっと辛い評価になるはずです。
事実、28年経って続編「トロン:レガシー」が出来ましたが、裏を返せば、28年間続編のニーズがなかったっていうのが、この映画の正直な評価でしょう。
普通の人には、「日曜の昼間にたまたまTVで吹き替え版を見たら面白かった」というのレベルの映画じゃないでしょうか。
オマケですが、電子の世界にパックマンがちょこっと登場します。
これから見る方は探してみて下さい。
あ、今回は結構真面目な目撃談になりました。
やっぱりディズニー映画だからですかねぇ。
僕はPRIME VIDEO、Netflix、U-Nextのサブスクにはなかったので、DVDレンタル屋でBlu-rayを借りました。
もしこの映画の世界観を楽しみたいなら、Blu-rayで見ることをお勧めします。
かなりレストアされてるようで、画面がとてもきれいだからです。
現在、新品のBlu-rayも入手可能です。