今回は便乗企画です。
Netflixを見ていたらオリジナルドラマ「ガス人間」(2026)というのを見つけたんですよ。
すげー、ストレートで即物的なタイトル。
これ、絶対に昔の映画のリメイク????まさか????
その映画は「ガス人間第一号」(1960)。
昭和の特撮ファンに間では有名な一本です。
調べたら、Netflix版は本当にリメイクでした。
凄い時代です。こんなマニア向け作品が世界のNetflixで作られるなんて・・・
そんなワケで「新幹線大爆破」(1975)に続いて、便乗レビューです(大笑)
(あらすじ)
銀行強盗が発生。警察は車で逃走する犯人を追ったが、途中で犯人の車が崖から転落。しかし運転席に犯人の姿はなかった。警察が辺りを捜索すると、山の中に寂れた邸宅があり、一人の女性が面を被って踊っていた。それは今は没落した日本舞踊の家元の当主だった。
再び銀行強盗が発生。不可思議なことに鍵は開いておらず、中にいた銀行員が謎の窒息死をしていた。同じ頃、家元は高級車を買い、莫大なお金を使って久しぶりの公演会を計画していた。警察はその資金の出所が銀行強盗の犯人ではないか、と疑うのだが・・・
この映画は1958~1960に公開された「変身人間シリーズ」のうちの1本。
この頃、東宝でたくさん作られた大人向け特撮作品群の一つです。
(「変身人間シリーズ」というのは俗称みたいで、公開時のポスターには「空想科学映画第三弾」とあります)
全部で3本あって、他の2本は「美女と液体人間」(1958)と「電送人間」(1960)です。
このシリーズは大人向け特撮作品として作られ、「変身」といっても狼男のようなオカルトっぽいものではなく、何かしら科学的原因(水爆の被ばく、科学者の実験等)によって変身人間になってしまった人たちです。(電送人間は変身ではない気もするのですが・・・)
ちなみにこのシリーズに「マタンゴ」(1963)を加えることもあるようです。
しかし個人的には「マタンゴ」は謎のキノコを食べて変容するので、科学的ではないことから、このシリーズとは別物だと思ってます。
僕は1990年代にBSで一挙放送された時に「変身人間シリーズ」を見ました。
その時録画したビデオテープは今でも家のどこかにあるんじゃないかと思います。
最近、サブスクでも見れるようになったので、数年前に見ました。
僕を昭和の大人向け特撮映画好きにしてくれた一本でもあります。
大人向けシリーズなので、話はミステリー/サスペンス系。
主要な登場人物も全て大人。
ありあえない活躍や行動をする子供は出てきません。
この映画も刑事と犯人(ガス人間)、没落した日本舞踊の家元の3つが絡む、完全に大人向けドラマ。
脚本がかなり練ってあり、普通のホラー/モンスター系とはちょっと違う展開なんです。
これはかなり面白かったですね。
まずガス人間のキャラクターがちょっと変わってます。
「ティーン・ウルフ」(1985)の時にも書きましたが、この手の変身モノって、本人が苦悩したり、変身することを隠したりして、最後正体がバレて、追手とのバトルになるのが定番。
でも、この映画ではそういうセオリーを無視してるんです。
なんと唯我独尊系。
警察に自ら出向いて「私がガス人間です。信じないでしょうから、今からどうやって強盗をしたかお見せしましょう」ってやるんですよ。
完全に悪のヒーロー。
他にも新聞社に現れてインタビューを受ける、留置場を襲う、警察を挑発するとやりたい放題。
そのくせ、奪った金は恋する日本舞踊の家元の女性に公演準備費用として渡すんですよ。
こんな図々しい奴なので、話の中盤からは謎解きではなく、警察VS「俺を止められるなら、止めてみろ」ガス人間の対決構図になってくんです。
しかし常にガス人間が一歩先を行って、警察は「ガス人間を捕まえたくても、なかなか捕まえられない」という苦しい立場。
こういう設定だと警察は「ちょっと間抜けなガス人間の引き立て役」的な位置づけになりがちですが、三橋達也さん演じる刑事が「ガス人間の特殊性に苦戦しているが、根は優秀」な感じなので、ちゃんとライバル関係になってました。
警察はガス人間が想いを寄せる家元を拘留して、なんとか逮捕に協力させようとします。
他の映画なら家元が苦しい気持ちを我慢しつつ協力するか、「彼のことは裏切れません」と拒否するかの、どちらかになるんですが、彼女は淡々と(ガス人間への気持ちを語ることなく)「私は何の罪も犯しておりません。釈放すべきです」の一点張り。
結局、警察は釈放せざるを得なくなります。
こういうちょっとしたところも「よく考えられてるなぁ」と思いました。

クライマックスは警察が「(ガス人間が望んだ)家元の公演に現れるはずだ!」と推測し、公演のチケットを全部買い占めるんです。
家元はそれでも誰もいない会場で踊るんです。座席にはガス人間ただ一人。
このシーンって、フランス映画の「愛と哀しみのボレロ」(1981)で、戦後に元ナチスの有名指揮者の公演で、ユダヤ人団体がチケットを買い占めて、誰もいないホールで演奏するシーンを思い出しました。
(マニアック過ぎますかね?ちなみにその指揮者のモデルはカラヤンだそうです)
警察は劇場内を高燃焼ガスで充満させ、ガス人間を燃やし尽くそうとするんですが、彼はそれもお見通し。
発火スイッチを入れても爆発せず。
実はこの作戦を見抜いていたガス人間が事前に発火装置のケーブルを切断してるんです。
さぁ、どうする?っていうところで、躍りを終えた家元がガス人間に抱きつき、想いを確かめ合ってる時にライターで火をつけるんです。
ドカーン!
なんて、切ない終わり方。
本当に良くできた話でした。
ちなみに家元は最後までガス人間のことを「好き」とか「愛してる」とか言わないんです。
でもこの「自爆」は、彼女もガス人間を愛してたってことなんでしょうね。
この映画は配役も良いんです。
刑事役の三橋達也さんだけでなく、ガス人間を演じた土屋嘉男さん、家元役の八千草薫さんはまさに適役。
土屋嘉男さんはちょっと影があり、いつ何時もクールで、大胆不敵なガス人間を好演。このキャラは彼だから成立してたんじゃないんでしょうか。
そして家元の八千草薫さんの綺麗なこと!
これは他の東宝特撮のヒロインとは一線を画す気品がありました。
個人的には勝ち気な女子記者を演じた佐多契子さんがお気に入り。
三橋達也さん演じる刑事の恋人でもあるんですが、元祖ツンデレがいい感じでした。
この後、あまり活躍されなかったのが残念です。
あと特筆すべきはアングルも含めて画面作りがとってもしっかりしてること。
安っぽさや手抜き感はゼロで、寧ろ、「へー、こんな角度から見せてくれるんだ」って感心するぐらいの絵作りなんです。
普通の映画と比べても、遜色がないどころか、レベル高いです。
調べたら昭和のSF絵画の名画伯・小松崎茂さんが全編ストーリーボードを描いているらしく、それが画面一つ一つがきちんと作られている理由みたいです。
91分という短めの時間で、いろいろな要素を上手に組み合わせて、ドキドキさせてくれる秀作です。
古い映画、SF映画に抵抗がない人なら一度見ても損のない作品。
反対にこれだけコンパクトにまとまった作品を全8話にしているNetflix版って、どんな感じなんでしょうか?
全く調べてないんですが、Netflix 版「新幹線大爆破」(2025)のように、リブートではなく、「続編」なんでしょうか。
とっても気になります。
Netflix 版を見たら、「映画場外乱闘」のカテゴリーで感想をアップしたいと思います。
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