ディスコブームに乗っかって、空前のヒットを記録した映画、それが「サタデー・ナイト・フィーバー」(1977製作/1978日本公開)。
あのジョン・トラボルタの初主演作です。
もう彼が白いスーツでディスコでボーズを取っているポスターと、大ヒットした数々の曲のお陰で、この映画をチャラいディスコ映画だと思った人はかなり多いんじゃないでしょうか。
特に当時、ディスコなんて無縁の子供で、且つディスコなんて無縁の岐阜に住んでたら興味なんて沸きません。
(多分、当時の岐阜にディスコなんてなかったと思う)
当然、大人になっても見る気なんてしなかったんですよ。
しかし「ミッドナイトクロス」(1981)でトラボルタを見直し、「パルプ・フィクション」(1994)以降のトラボルタに痺れ、気がつけば彼が出ている映画を追いかけるようになてったんです。
個人的には「マイケル」(1996)、「将軍の娘/エリザベス・キャンベル」(1999)、「閉ざされた森」(2003)が好きです。
そんなワケで数年前に突如「彼の初主演作をこのまま食わず嫌いでいいのか?ちゃんと見ておくべきじゃないのか?」と思ったんです。
見てみたら、これが意外に面白かったんです。
そこで今回改めてレビューしてみることにしました!
(あらすじ)
しがないペンキ屋の店員トニーは、ディスコで踊ることが何よりも優先。自主練にダイススタジオに通い、ディスコに行けば彼のダンスは彼からも一目置かれていた。
ディスコ店から次回のダンス大会がアナウンスされる。前回優勝者であるトニーは、優勝賞金が前回の2倍となったことで優勝が一層難しくなると踏んでいた。しかし自主練に誘ったパートナーの女性は、トニーとデートすることが目的で、彼が目指すレベルになる気もなかった。しかし彼は同じスタジオで、寡黙に一人練習する女性を見つける。それは昨日のディスコで、彼を惹きつけるダンスをしていた女性だった。彼は彼女に新たなパートナーになってくれ、と懇願する・・・
主人公は親子3世代が一緒に住む、典型的なイタリア系労働階級の息子。
お父さんは失業中、お母さんは熱心なキリスト教徒で神父になった主人公の兄が自慢、主人公は安月給で下町のペンキ屋の店員、他にもおばあちゃんと妹が同居する大家族。まさにイタリア系って感じ。
彼には同じイタリア系のちょい悪い友達がいて、楽しみは酒と女、薬。
そんな中、彼のダンスはディスコでは一目置かれており、自他ともにその店の「キング」と認められていた・・・
まぁ、普通の青春映画なら「家族とは険悪、悪友たちとバカやって、ちょっと踊りが上手いくらいで自惚れてるところに、ダンスがもっとうまいヤツが現れてガツンとやられ、そこから必死に本物のディスコ・キングになる」って感じの話になりそうです。
でもね、この映画は全然違うんです。
確かに家庭はギスギスしてます。
口うるさいお母さんに主人公が「何だよ!うるせーなー」みたいに言うんですが、その後で「母さん、ごめん。ついつい言い過ぎちゃって」って謝るワケですよ。
主人公は家でも荒れてないし、ちゃんと家族と一緒にご飯食べてから、ディスコに行くワケです。
家の中に居場所がある、っていうのは、他の不良系青春映画と違います。
更に悪友たちはディスコに行く目的は酒飲んで、ナンパすること。
でも主人公の目的はダンス。
それもナンパ目的にカッコ良く踊るんじゃなくて、ガチで上手いダンスを目指してるんです。
薬もやらないし、女性にもつれない。
前回優勝した時のパートナーはさかんにデートに誘ってくるけど無視。
ディスコで彼のダンスを褒めて逆ナンパしてきた女性には「そんなダンスが下手じゃダメだ」とふっちゃうんです。
とにかくダンス。
主人公は元パートナーをスタジオでの練習に誘うんですが、自分ほどの熱意がない彼女にイラっとするワケですよ。
そんな彼に元パートナーが「たかがダンスじゃない」って言ったことで、主人公は「ああ、やっぱこいつダメだわ」っ見切ります。
やっぱりダンス優先。
実は彼にはパートナーとして組みたい女性がいたんですよ。
ディスコで見かけた、めっちゃダンスが上手い女性。
彼女も同じスタジオに自主練で来てると分かると猛アタック。
「俺と付き合ってくれ!」
じゃなくて、
「次の大会では俺とパートナーを組んでくれ!」
そう、やっぱりダンスなんですね。
そんなワケで、悪友たちとつるんでいても完全に一線を画してます。
仲間の真似はしてちょっとはバカするけど、なんか住む世界が違うし、彼とは求めているものが違う、そんな感じ。
全然チャラい映画じゃないです。
だけど、この映画はダンスだけじゃないんですよ。
もっと言えば、主人公以外のドラマもちゃんと描き込まれてるんです。
例えば新しくパートナーになったヒロインは、マンハッタンの有名広告会社に勤める自称キャリアウーマン。
主人公に会う度に「この前、会議で○○(有名人)に会って、君って優秀だねって言われた」って必ず話すんですね。
更に「出来る上司が○○をしてるから、私もやることにした」とか。
多分、彼女は自分で言うほど偉くもなく、優秀でもなく、ただの上昇志向が強い駆け出しに過ぎないんです。
(終盤の「私はタイプが出来るわ」って言うセリフで、彼女はバリバリの営業職じゃなくて、バリバリの営業職に憧れる秘書かアシスタント?ということが仄めかされてました)
まさに承認欲求の塊。
主人公とは別の、よくある青春の一コマです。
他にも母親の自慢だった兄が神父を辞めて、家の中がギクシャクしたり、給料がちょっと上がって主人公が大喜びしたり、気の弱い友達が好きでもない女の子を妊娠させたりと下町の日々が描かれます。
こういうさりげない描写がサラリと違和感なく織り込まれてるんですよ。
ちなみに僕が凄く共感したのが主人公の部屋。
壁にはブルース・リー、ロッキー、ブラフォーセットのポスター。
これ同じ時代の日本の若者の部屋と全く一緒ですよね???
若者の趣味に国境はなかった、ってことです。
主人公はもてるのに、ヒロイン以外見向きもしないんですよ。
グイグイ寄ってくる元パートナーの扱いなんて酷いもんです。
最初はダンスに熱中してるから、女の子に見向きもしないのかと思ったんです。
でも、今回見て、考えを変えました。
彼は本当は女の子に奥手なんじゃないかってこと。
ディスコで逆ナンパされても断るのは、本当はエッチしたことないから。
いろいろあってヤケクソで元パートナーとエッチすることになっても、土壇場で難癖つけて止めちゃうんですよ。
更にヒロインががスタジオのチャラいオーナーと踊ってただけで妬くとか中学生か?って感じ。
間違いなくエッチの経験がないんで、いざという時に自信がないんですよ。(キッパリ)
彼はプライドをダンスだけで保ってるんです。
そして、この映画のハイライトはダンス大会。
息ピッタリに踊る二人。
(ただし最後にキスをするのは出来すぎですが)
しかし自分の後に出演したプエルトリコ人のダンスに衝撃を受ける主人公。
友達がプエルトリコ人を人種差別的にバカにする中、主人公だけは彼らの凄さを認めるんです。
そして、ここからが本当のドラマ。
主人公は優勝したんですが、全く納得がいかず、「インチキだ。俺たちが地元だから無理やり勝たせたんだ」と怒り心頭。
彼はプエルトリコ人のペアに「君たちが勝ったんだ」と、優勝トロフィーと賞金を押し付けて、ヒロインとディスコを去っていきます。
これは彼の「小さなディスコの世界からの卒業」なんでしょう。

モヤモヤした気持ちを晴らそうとするように、ヒロインに無理やり関係を迫るんですが、見事に拒否されます。
そして悪友たちと車に乗り込むんですが、後ろの席では元バートナーが主人公に見せつけるように悪友たちと順番にエッチします。
前の席にいる主人公をチラチラ見る元パートナー。
「エッチしたぜ!」と喜ぶ友達の横で無言で前を見ている主人公。
やがて彼女は泣き出します。
そして二人っきりになった時に、主人公が言います。
「満足か。それがやりたかったことなのか」と。
元パートナーと主人公のすれ違う気持ちが凝縮されたシーンでした。
そして好きでもない女性を妊娠させて悩んでいた友達が誤って下の川に落ちて亡くなります。
主人公は警官に「自殺といえない自殺もある」と呟くんです。
ただダンスをしていれば良かったという日々の終わり。
いろいろと彷徨った挙句、喧嘩別れをしたヒロインの家を訪ねるんです。
「お互い助け合えるように本当の友達になりたい。」
そう言う彼に彼女は「男と女が友達のままでいられる?」と言い返されるんですが、それでも「でも友達だ。そう努力をする」と言うんです。
すると「いいわ、お友達になりましょう」と言って手を握る彼女。
照れるようにニヤける主人公。
ずっと握り続ける手のクローズアップが続いて、彼女が主人公に近づいてキスをします。
恋愛に関しては彼女が、一枚も二枚も上手ってことです。
彼は多くのものを失ったかもしれないし、後ろに残してきたかもしれないけど、ダンスへの情熱と、自分の素直な気持ちとそれに応えてくれる人を手に入れったんですね。
まさに大人の階段を登ったラストシーンでした。
同じ青春談でも、大人になっていく周りに取り残されて、仕方なく自分も大人になるしかない、という後ろ向きな「ランブルフィッシュ」(1983)や「さらば青春の光」(1979)とは違います。
この後日談はシルベスター・スタローンが監督した続編「ステイン・アライブ」(1983)に描かれます。
「ステイン・アライブ」を見た時は「いきなりディスコからブロードウェかよ」って思ったんですが、改めてこの映画を見ると「ダンスを極めるために、次はブロードウェイに進んだんだな」って素直に思えます。
「ステイン・アライブ」の方向性だけは間違ってなかったてことですね。
pagutaro-yokohama55.hatenablog.com
本当に良くて来た青春映画でした。
脚本も巧みですが、しっかりと芯の通った娯楽作に仕上げたのはジョン・バダム監督。
この後、「ブルーサンダー」(1983)や「ウォー・ゲーム」(1983)、「ショート・サーキット」(1986)と良質な娯楽作を連発していきます。
この映画の完成度が高いのはまぐれではないってことですね。
そして何よりもこの映画はジョン・トラボルタでしょう。
あの腕を上にあげて決めポーズをしているポスターのお陰で、「この映画のトラボルタはチャラいキャラに違いない」と思われそうですが、実はダンスが好きな若者の内面を演じきってます。
本当にこのトラボルタの演技は上手いです。
その上、「トラボルタはこの頃からトラボルタだなぁ」って感心(?)しました。
ちょっと鼻にかかったかすれ気味の声、熱くなりすぎないキャラ、どことなく人を試すような素振り等、今と変わりません。さすがに90年代以降の人をくったようなキャラではないですが、その片鱗は見えます。
そして彼のダンスシーンは圧巻。
これは今見てもかっこいいです。
ダンスシーンを見て思い出すのが「パルプ・フィクション」(1994)。
ジョン・トラボルタが完全復活したタランティーノ監督の傑作クライムムービーです。
この映画の中でトラボルタはヴィンセント・ヴェガという殺し屋を演じてます。
ヴェガはマフィアのボスの若妻(ユマ・サーマン)の世話を任され、彼女を連れてカフェに行くんですが、そこでダンスコンテストをやってるんですよ。
「踊るわよ」っていう若妻に、トラボルタは「よせよ」って言うんですが、結局ダンスステージに上がって、ゆっくりと、ちょっと不器用気味にダンスを始めるです。体形は17年も経って大分変わってるけど、それでも段々キレが出てくるんですね・・・
あー、タランティーノ監督はトラボルタを踊らせたかったんだろうなぁ、って思いました。その気持ち、よーく分かります。
最後に「サタデー・ナイト・フィーバー」と言えば、ビージーズのヒット曲が欠かせません。
ダンスシーン以外にもいっぱい流れて、映画全体を彩ってます。
どれも70年代を代表する名曲で、好き過ぎるのでリンクをいっぱい貼りました。
その中でも僕が特に好きなのはエンディングにも流れる「How Deep is Your Love」です。
ちゃんと話が練られた青春ドラマでした。
トラボルタ好きと、ドラマ好きな人なら見て損のない映画だと思います。
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