「ガメラ」シリーズの記念すべき第一作「大怪獣ガメラ」(1965)。
ちょっと今までレビューしてきた映画より古めですが、せっかく見たので簡単にレビューしたいと思います!
(あらすじ)
北極に核爆弾を搭載した国籍不明機が墜落、爆弾が破裂した。この影響でアトランティスの伝説の巨大怪獣ガメラが覚醒。熱エネルギーを食料とするガメラは日本に餌を求めて上陸。一旦は冷凍爆弾とダイナマイトによりひっくり返り、身動きが取れなくなるが、ジェット飛行で飛び去ってしまい、日本各地のコンビナートや街を襲う。これと止めるため科学の英知を集めたZ作戦を実行されることになった・・・
大映製作の第一次シリーズは「ガメラ対深海怪獣ジグラ」(1971)で終了したんですが、幼稚園児だったので劇場で見た記憶がありません。
ただ幼稚園の時に「ガメラ対大魔獣ジャイガー」(1970)の絵を描いてたので、見に行ってたのかも。
僕がガメラを見た記憶は小学生の夏休みのTV。
昭和の時代って、夏休みになると午前10時から12時は、子供向けのちょっと古い特撮TVや映画が毎日放送されてたんです。
僕の住んでた東海地方だと「キャプテン・ウルトラ」や「仮面の忍者赤影」が多かったですね。
とってもいい時代でした。
その流れで時々ガメラも放送されるんですが、子供受けのいい「対決シリーズ」となった2作目以降ばっかり。
要はガメラは正義の味方で、悪の怪獣と戦うやつです。
街を破壊する怪獣ガメラが子供受けに路線変更するのは、ゴジラと同じパターン。
ゴジラが人類の味方になるのが5作目の「三大怪獣 地球最大の決戦」(1964)だったのに対し、ガメラは2作目の「大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン」(1966)ですぐに子供の味方になる身代わりの早さです。
子供向けのガメラは、それなりに人気があったんですよ。
だって子供は怪獣プロレス好きだから。それに分かり易いし。
当時はガメラの主題歌「ガメラマーチ」を歌える子が多かったと思います。
この歌を聞いてもらうだけで、映画が完全に子供向けってことがわかっちゃいますよね。
ちなみに対決シリーズは、お約束として必ずガメラは一回派手にやられます。
スプラッターというぐらい、血がドバーっと出てやられる。
この一回めちゃめちゃにやられるっていうのが、子供心にハラハラして、ガメラを応援したくなるにくい仕掛けでした。
さて、そんな人気シリーズですが、一作目だけTV放映がなかったんです。
(僕が住んでた地方だけかもしれませんが)
そんなワケで、第一作だけは断片をちょろちょろ見たことがある程度で、ちゃんと全編見たことがありませんでした。
時間を調べると78分と超お手軽だったので、今回視聴してみたんです。
ガメラって「ガメラマーチ」があんな感じだから、1作目も緩い子供向けだろうと思ってました。
これが意外と大人向けだったんです。
でも、意外と、っていうレベルです。
話は全般的にゴジラの影響を受けてるのか、なかなか真面目な展開。
科学者たちが大真面目にガメラ対策を立てる筋立ては、オースドックスでありながら、白黒の画面と相まって緊迫感があります。(この映画は白黒です)
さすがに映画史に残る「ゴジラ」の一作目と同レベルではありませんが、十分食い下がってます。
が、途中で何故かカメを偏愛する少年が出てきて迷走していきます。
自分が飼っているメのためなら、家族の注意もシカトする少年です。
彼が灯台から落ちそうになるとガメラが手で受け止めて助けます。
ガメラってオレが可愛がってたカメが大きくなったんじゃないか?
俺はガメラと心が通じている。
ガメラはイイ奴だ!と勝手に思い込みます。
普通、ここからの展開って「子供の純粋な気持ち」VS「冷徹で計算づくの大人」って構造じゃないですか。
でもね、ここから少年の暴走が始まるんですよ。
みんなが避難する中、抜け出す。
避難先の親戚の家でトラブルを起こす。
きっと当時の子供でも「いい加減にしろよ!」って怒ってたと思います。
科学者たちは、そんな彼のガメラ愛を完全に無視し、サクサクとガメラ退治の計画を進めていきます。
完全に対立構図が「ただのわがままな子供」VS「彼を無視して、着々と計画を進める大人」になるんですよ。
もっとはっきり言いましょう。
この子、悪役ですよね?
自分はガメラに助けられたけど、街中ではバンバン人が死んでますから。
その上、ガメラ追放計画が上手くいかないと露骨に喜んでるし。
観客はガメラより、この子の方が先にいなくなればいいのにと、絶対思ってたハズ。
更にこの後、驚愕の展開が。
彼はガメラを宇宙に飛ばす最新のロケット施設を見せてもらったら、急に「僕、この施設、大好き」
えっ?
そしてガメラがロケットに乗せられて火星に飛ばされる姿を見ながら、
「僕も博士みたいになりたい」
「ガメラ、さよーならー」
はっ???
こんだけ人を振り回しといて、もうガメラはいいのか?
全然スッキリしません。
子供にも受けも狙ったんでしょうが、最初のゴジラみたいに大人向けエンターテイメントに徹した方が、絶対に完成度は高くなったと思います。
まぁ、最初から子供とガメラの友情(少年の一方的な片想いですけど)をがっつり出すぐらいですから、正義の味方としてシリーズ化するのは既定路線だったのかもしれません。
ひょっとしたら、ゴジラが正義の味方化した「三大怪獣 地球最大の決戦」(この作品の前年公開)が大ヒットしたので、急遽方針を転換したのかもしれませんね。
怪獣映画の肝である特撮ですが、これが意外と頑張ってるんですよ。
構図やカメラアングル、人と怪獣やロケット施設との組み込み方など、想像してたよりレベルは高いです。シーンによってはゴジラに引けと取らない出来なんじゃないでしょうか。
でもね、決定的にダメなところがあるんですよ。
それはガメラのアクション。
これが完全に着ぐるみのドタドタ。歩く姿なんてデパート屋上のステージショーかと思いました。
手はブラブラ、歩くときは足の裏を見せながら歩く(そんな動物いないです)。
これじゃ怪獣プロレスです。
(昭和のゴジラシリーズも後半は、このガメラみたいな動きだったんですよね・・・)
肝心のガメラがこれでは、頑張ってる他の特撮部分が報われません。可哀想。
さて、総評としては、正直飽きることはなかったですが、それは僕がB級映画、特撮好きで、「ダメな話、ダメな特撮でもそれなりに愛せる」からです。
平成ガメラのような、映画としてのクォリティの高さはありません。
そういう意味では特撮ファン向け。
「ガメラの記念すべき一作目だから、一度は見ておいた方がいいよ」と言う映画です。
最後にガメラを火星に飛ばして問題解決って、産廃の違法投棄と同じですよね?
オリジナルの「ガメラ」シリーズ(大映製作)は、角川書店が版権を持っているみたいで、配信はKADOKAWAチャンネルじゃないと見れません。
そんなワケで今回はDVDレンタル屋さんで借りました。
新品のDVDは手に入るようです。