SF映画ブームの中、公開されたトラック映画「コンボイ」(1978)。
監督はバイオレンスの美学で有名なサム・ペキンパー。
主演は当時、俳優として大人気だったクリス・クリストファーソン(本職は歌手)。
宣伝にも力が入っていて、TVでCMが頻繁に流れてました。
話題の映画だったんですね。
今回はこの映画をレビューします。
(あらすじ)
トラック運転手の主人公は悪徳警官に嫌がらせを受けたことで、他のトラック運転手に無線で呼びかけ、隊列を組んでアメリカを横断する。しかし悪徳警官は諦めずに、彼を追い回すのだった・・・
「コンボイ」は当時の岐阜にしては珍しい同時上映のない、一本のみの上映。
これ、一本上映って「スターウォーズ」のような大作・話題作の証なんです。
でも話題作の扱いだった割には、上映された映画館は自由劇場という、ちょっと小さい映画館。(その上、半地下の古い劇場だった)
実はたまたま同時上映にする、都合のいい映画がなかっただけなのかも。
とにかく話題の映画というだけで、何の予備知識もなしに映画館に行きました。
見終わった後の感想は65点。
正直、つまらなくはなけど、楽しかった~という印象は薄いです。
今回見直したのは「当時の自分には分からない良さがある映画だったんじゃないか」っていう気持ちがあったから。
だって監督はあのサム・ペキンパーですよ!
「バイオレンスの美学」サム・ペキンパー!!
ひょっとしたら当時はお子ちゃまだったから、ヒリヒリするような殺伐さに満ちた暴力的な映画を理解できなかったんじゃないか、って期待してたんです。
しかし僕が見たのは、アメリカ版「トラック野郎」でした。
めっちゃ明るい映画。
オープニングから明るいカントリー調の主題歌。
大型トラックを運転しながら、軽いノリで無線で仲間に話しかける主人公。
それに軽妙に応える相棒。
いい感じに軽い相棒役がバート・ヤングにハマってます。
主人公のあだ名が「ラバーダック」(車の前にゴムのあひるをつけてるから)。
相棒のあだ名は「ラブ・マシーン」。
ノリノリの会話で、愉快なトラック野郎たちが主人公の下に集まってきます。
え?これがペキンパー映画???
彼の代表作「ワイルドバンチ」(1969)の悲壮なクライマックスとは違い過ぎます。
更にお約束のライバルとなる悪徳警官が登場。
名優アーネスト・ボーグナインが憎々し気なだけでなく、どことなく情にもろそうなところを見せる等、期待通りに演じてます。
一生懸命やっても、最後の最後で捕まえられない敵役って、ヤッターマンやルパン三世、スカイキッドブラック魔王によく出てくるヤツですよね?
そして最後はヒロイン役のアリ・マッグロウ。
これがねー、とっても残念な感じなんですよ。
モテモテの主人公が惹かれるっていう設定なんですけど、魅力が全くない。
これは配役失敗でしょう。
とにかく全編、クリス・クリストファーソンと楽しいトラック野郎たち(女性のドライバーもいますが)が、警官とやり合いながら隊列(これをコンボイっていうらしいです)を組んで明るく、楽しくアメリカを旅する話。
あれ?仕事あるのに隊列なんか組んでいていいの?って、真面目なサラリーマンが多い日本人なら思っちゃうんじゃないでしょうか。
TVで中継されたことで人気者になったり、それを利用とする政治家が出てきたりというエピソードも出てきますが、どうでもいい感じです。
寧ろ、出産する嫁さんのところに向かった仲間が、途中で悪徳警官に捕まったことを知り、主事項が仲間たちと留置場に向かうところが素直に山場。
トラックが並んで向かうシーンは、「ワイルドバンチ」を彷彿させますが、悲壮感はありません。
留置場に着くと、「そんなのありえんだろう」みたいなノリでトラック軍団が車ごと警察署に突っ込んで破壊しまくります。
「リアリティなんか知らねぇよ、こいつぁ、アメリカ版トラック野郎だ!」っていう明るいノリです。
ラストは州兵が重武装で待ち構えているところに、主人公だけ突っ込んでいき、銃弾の雨を浴びまくるんですが、そこだけは僕らが知っているサム・ペキンパー映画。
しかし、最後の主人公の葬式で、「実は生きてました」「お前生きてたのかぁ!また捕まえてやるぞぉ」(生きてたことがちょっと嬉しい)とルパン三世と銭形警部みたいなオチはやっぱり「アメリカ版トラック野郎」。
見終わった後に思うのは、とにかくクリス・クリストファーソンの主人公が男臭くて、カッコ良く見える映画だったてこと。
「コンボイ」はサム・ペキンパーの映画ではなく、この時期に大人気だったクリス・クリストファーソンの映画ってことじゃないですかねぇ。
だからと言って凄く面白い作品ではなく、やっぱり65点の映画でした。
サム・ペキンパー監督にとっては、やっつけ仕事だったんじゃないかと思うんですが、Wikipediaによれば、「コンボイ」はサム・ペキンパー作品の中で一番売れたそうです。本人は不本意だったんだろうなぁ。
サム・ペキンパー監督とクリス・クリストファーソンは、この映画の5年前に「ビリー・ザ・キッド/21歳の生涯」(1973)っていう映画でタッグを組んでます。(クリス・クリストファーソンはビリー・ザ・キッド役)
これがペキンパー映画だったのか気になります。未見なので、近々見てみたいと思ってます。
ちなみに「ビリー・ザ・キッド/21歳の生涯」はボブ・ディランの主題歌「天国への扉(Knockin' on Heaven's Door )」が有名。
名曲としてその後、いろんなアーティストにカバーされてます。
(エリック・クラプトンとガンズ・アンド・ローゼズのバージョンが有名)
サム・ペキンパーはこの後、しばらく映画を撮らず、5年後に「バイオレント・サタデー」(1983)という映画を撮って、59歳で急逝しました。
「バイオレント・サタデー」も劇場で見ましたが、話がチンプンカンプンで、全く面白くなかったです。
これも見直してみたい作品なんですが、サブスクにもレンタルにもなく、DVDも廃盤。中古盤も入手困難みたいです。僕的にはプチ幻の映画です。
さて小ネタ。
この映画のCMで流れていた曲があるんですが、日本独自のイメージソングだったそうです。
何と作曲者は松任谷正隆さんでした。
なんと、うちの押し入れを探したら、この曲のシングルレコードが出てきました!
自分でも買ってたことをすっかり忘れてました。
当時はそうい「日本オリジナルの曲をイメージソングとして使う」のが流行ってました。
「ナイル殺人事件」(1978年版)でも「ミステリ~、ナーアーイル」って主題歌がTVからしょっちゅう流れてました。
映画のエンディングでも流れてましたが、実は日本独自の曲で、日本公開用に曲を差し替えたとのこと。曲自体、かなりヒットしました。
これも押し入れにシングル盤がありました。
当時、なけなしの小遣いで買ってた思うと、ちょっと複雑な気持ちです。
買ったのは近鉄百貨店の別館「近鉄アミコ」の2階にあった電波堂というレコード屋さんでした。
電波堂ではいっぱいレコード買ったなぁ。
他にも「チェンジリング」(1980)というホラー映画(イーストウド監督のミステリーではない)では、日本のテクノバンド・ヒカシューの「パイク」がイメージソングだったんですが、ちょっとおどろおどろしくて印象的な曲でした。40年経った今も忘れられません。
今回はついつい音楽ネタをたくさん書きすぎちゃいました。
そう言えば当時、SFブームだったせいか、トラックが宇宙を走ってる「コンボイ」の宣伝ポスターがあったと記憶してるんですが、知ってる人いますか?(調べたけど確認出来ず)
配給会社が東宝東和ならやりかねないのですが、日本ヘラルドなので僕の記憶違いの可能性もあります(笑)
この映画はPRIME VIDEOとNetflixにはなかったので、U-Nextのサブスクで見ました。
国内版DVD/Blu-Rayは廃盤のようです。