前にも書いたけど、1980年前後のシルベスター・スタローンは、いろんなことに挑戦していました。兄弟思いの下町の兄ちゃん(「パラダイス・アレイ」(1978))、伝説的な労働組合の組合長(「フィスト」(1978))等々。
どれも筋肉を売りにしていない、一人の普通の役柄。
そんな時に彼が囮捜査の刑事を演じたのが「ナイトホークス」(1981)。
多分、見たことある人は少ないだろうし、そもそも覚えてる人が少なそうな映画。
でも、僕はこの映画が大好き。
勿論、この映画でもスタローンは筋肉を売りにしてません。
個人的にこの映画の彼が一番カッコいいです。
しかし残念ながらこの頃の映画はどれもヒットせず、彼はマッチョな男へと舵を切っていくことになります。
そんな僕の愛するスタローン映画をレビューします!
(あらすじ)
一匹狼のプロのテロリストによるロンドンでのデパート爆破が起こる。しかし民間人を巻き込んだことで各国のテロ組織より敬遠されてしまう。彼はもう一度自分の手腕を注目させるためにニューヨークに潜入。国連を舞台にしたテロを目論む。
NYの囮専門刑事であるディークとフォックスはその手腕を買われ、NYで組織された国際警察の特務班に組み込まれる。目的は潜入したテロリストの発見、逮捕、射殺だった。しかしディークは刑事故、「相手は人殺しに躊躇しないテロリストだ。発見したら迷わず射殺しろ」という方針に悩む。その間にもテロリストは着々と準備を進めていた・・・
この映画を初めて見たのは、劇場公開の時。
確か土曜日の塾をサボって見に行った気がします。
とりあえず3本建てをやってるからはいるか、みたいなノリ。
場所は古ぼけた半地下の映画館・自由劇場@岐阜。
この映画の前知識もなく、ホント、行き当たりばったり。
寧ろ同時上映の劇場版「あしたのジョー2」(1981)「宇宙空母ギャラクティか・サイロン・アタック」(1979)の方に興味があったかも。
でも、この映画がダントツ面白かったんです!
スタローンが刑事を演じたのは多分4本。
この映画以外は「コブラ」(1986)、「デッドフォール」(1989)、「刑事ジョー ママにお手上げ」(1992)。
「コブラ」はスタイリッシュでワイルドな刑事、「デッドフォール」は株取引を趣味にしているインテリ刑事、「刑事ジョー」は見たことないけどコメディなのかな?
アクションスターの割に刑事役が少ないのは、アーノルド・シュワルツェネッガーと同じかも。
どうも筋肉が目立ち過ぎるから、刑事っていうのがちょっと似合わないのかもしれません。
でも、この映画だけは違います。
ニューヨーク下町の囮捜査官。
のっけから女装して犯罪者を誘き寄せるんですよ。
それも一匹狼ではなく、仲のいい相棒がいる。
「バッドボーイズ」シリーズのウィル・スミスとマーティン・ローレンスをちょっとシリアスにした感じでしょうか。
そして何よりもこの映画のスタローンは服を脱がない。
筋肉を見せつけず、彼の映画で思い浮かべる男同士が肉体をぶつけ合うバウト(戦い)も冒頭のシーンぐらい。
銃撃戦もちょこっとあるぐらいでしょうか。
それでも彼の演じる囮捜査専門の刑事は最高です。
無茶なところはるけど、組織から大きくはみ出すものではなく、寧ろ組織の中でプロとしてテロリストを追っていく姿がカッコいい!
ひげ面に薄い色のサングラス、ベレー帽、革ジャンにジーンズという、ちょっと小汚い恰好も似合ってます。
この役であと何本か作って欲しかったなぁ。

話はシンプルなんだけど、だからと言って単純、つまらないということはありません。
無駄なところがなく、必要なものがギュっと詰まってる感じ。
「安易だなー」と思うところはないし、反対に「え?何だっけ?」となるようなこともありません。
でも良く出来の娯楽作にある「話自体が緊張感を生み出す」ようになっています。
なので、スタローンの映画にしてはアクション控えめで、テロリストとの駆け引きが中心。
クライマックスの人質事件も主人公とテロリストとのやり取りだけで緊張感たっぷり。
その中で女テロリストが射殺されるシーンは盛り上がります。
そしてこの映画と言えば最後のオチ。
ネタバレありありのこのブログですが、この映画のオチはこれから見る人のために伏せておきたいです。
初めて見た時は「えー」って思いましたが、同時に「なるほど!」って感動しました。
このオチが分かっているのに、何度見ても「上手いなぁ」と思ってしまいます。
この映画、初公開時から何度も何度も見てるんですが、今回新たな気付きがありました。
主人公が特務班のボスから「テロリストを倒すにはテロリストと同じように考えるんだ。あいつらはターゲットのあらゆる情報を集めて、それを利用するんだ」と教えられるんです。
これ、女テロリストを倒す時と、オチへの伏線だったんだ!と初めて気付きました。
この良く出来た脚本をキチンと映像化しのはブルース・マルムース監督。
奇抜なことは何もしてないんですが、いい意味で手堅く、テンポよく捌いてます。
この映画以外、目立った映画を撮ってないのが残念。
ちなみにスタローンがノークレジットで一部監督をやってるみたいです。
そしてこの映画の質を高めてるのは、話にピッタリと合った俳優たち。
ハマっているのはシルベスター・スタローンだけではありません。
相棒役は「スター・ウォーズ」シリーズでランド・カルリシアン男爵を演じたビリー・ディー・ウィリアムズ。
派手さはないけど、主人公と信頼し合っている感じが出てます。
そして肝となるテロリスト役はルトガー・ハウアー!
ここで演じるテロリストは「ブレードランナー」(1982)のレプリカント、ロイ・バッティに近い、冷静・冷酷なキャラですが、もっと狡猾で、私欲のためにテロを起こすイヤラシしい存在です。
スタローンの敵役として十分の存在感はさすがの一言。
ルトガー・ハウアーと行動を共にする女テロリストを演じるのはパーシス・カンバッタ。
僕と同姓代のSF好きなら、「スター・トレック」(1979)のスキンヘッドのヒロイン役の女優として記憶されてるんじゃないんでしょうか。
ここではルトガー・ハウアーに劣らない冷酷テロリストぶりを見事に演じてます。
この映画の後、カルトSF映画「メガフォース」(1982)に出てしまい(?)、フェードアウトしました。
この人、作品に恵まれれば、もっと飛躍出来る可能性があったんじゃないかなー、って思いました。
出演時間は短いんですが、主人公の別れた妻役はリンゼイ・ワグナー!
やっぱり同世代のSFボンクラなら思い出深い米国SFドラマ「地上最強の美女バイオニック・ジェニー」(1976-1978)の主演をしてた女優さん。
懐かしい~
「バイオニック・ジェニー」は、その前に大ヒットしたSFドラマ「600万ドルの男(サイボーグ危機一髪)」(1973-1978)のスピンオフドラマ。
僕は「600万ドルの男」が大好きだったので、「バイオニック・ジェニー」も見てました!
この映画では途中で主人公とやり取りする短い場面が2-3回あるぐらいなんです。
最初は「本筋とは関係ないなぁ、主人公のキャラを膨らませるためだけに元妻が登場?」って思いましたが、ちゃんと伏線だったんですよね~。
こうやって見るとボンクラSFファンには堪らない(?)キャスティングだったかも。
最後に音楽の話を。
担当しているのは、70年代に売れまくっていた有名プログレッシブバンド「エマーソン、レイク&パーマー(ELP)」のキース・エマーソン。
この頃はELPも解散(1980)した後、この映画を始め、ダリオ・アルジェント監督の「インフェルノ」(1980)や角川アニメの「幻魔大戦」(1983)等、映画音楽を担当していました。
ELPでもキーボード担当だったので、この映画でもシンセサイザーを全面に出した音楽を作曲。当時新鮮で、すぐにサントラを買いました。
でも今回映画で流れているのを聴くと意外に70年代の刑事物の音楽をなぞっている部分が多くて、昔の印象よりずっとオーソドックスな感じがしました。
サントラ自体は好きなんですが、その中にあるキース・エマーソンが初めてボーカルを取った曲「I’m A Man」(ディスコのシーンで流れる)だけはちょっと苦手。
キース・エマーソンらしいキーボードが全面に出たアレンジはいいんですが、彼の歌がヘタレ気味で・・・
あー、このサンプルは歌のない部分だけですね。聞いてもらえなくて残念(笑)
ちなみにこの曲はSpencer Davis Groupというバンドの曲のカバー。
このオリジナルと比べると更にボーカルのひ弱さが気になるんです。
キース・エマーソンのバージョンを評価する人もいるようですが・・・やっぱり僕はごめんなさい、です。
他のスタローン映画にあるような派手さはないし、地味と言えば地味な小作品。
だけど佳作だし、観て飽きることはありません。
奇をてらわず、きちんと作られた娯楽作品はやっぱり楽しい。
是非、スタローンの埋もれた魅力を堪能してみて下さい!
でも新品DVD、Blu-rayは入手困難のようです。
えーー、面白い映画なのに・・・
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