知る人ぞ知る、70~80年代に面白い娯楽作を作ってたピーター・ハイアムス監督。
本当に娯楽職人です。
そんな娯楽職人が作ったのが「カプリコン・1」(1976)。
公開当時、映画館で見たんですが、もうとっても面白くって仕方ありませんでした。
ジャンルとしては70年代によく作られたB級陰謀もの。
そんな映画を50年ぶりに見てみました。
(あらすじ)
有人火星飛行のカウントダウン中に、宇宙飛行達はロケットから連れ出され、砂漠の真ん中にある廃基地の倉庫に移動させられる。そこで火星飛行を計画した博士から、出発直前にロケットに搭載した生命維持装置に欠陥が見つかり、そのまま火星に向かってたら辿り着く前に全員死んでしまうこと、ただここで計画を延期したら、NASAを厳しい目で見ている議会が予算を大幅に縮小し、もう火星に行く機会がなくなると説明される。博士はこの廃基地に火星と宇宙船のセットをが作られており、「火星飛行と火星着陸」を行っている演じるよう彼らに強要する。家族の身の危険を感じた飛行士達は仕方なく計画に従い、偽の映像がNASAに流されることになる。
一方、NASAのスタッフの一人が、「火星からの通信」がNASAから数百キロ圏内から届いていることに気づく。しかしそれを記者に漏らした途端、彼は行方不明になってしまう。これを怪しいと思った新聞記者は火星飛行計画の裏を探ろうとするが、数々の妨害に遭う。
やがて宇宙船は地球に帰還することになったが、NASAは不慮の事故で宇宙船は燃え尽き、乗組員は全員死亡と発表。宇宙飛行士たちは自分たちが消されることを確信し、脱出を決意するが・・・
普通に面白かったです。
主人公は無理やり火星ゴッコをさせられて、追われる宇宙飛行士と、ひょんなことからこの陰謀を嗅ぎ付けた新聞記者。
最初に見た時は宇宙飛行士の逃亡劇が面白いなぁ、って思ったんですよ。
でも、今回見直したらでも今回見たら、宇宙飛行の逃亡劇は意外と平凡で、実は陰謀を追う新聞記者のエピソードの方が「いい味」出てるんです。
彼が出てくるシーンはまさにハードボイルド。
まずこの新聞記者が「一見冴えなくてヨレっとしているけど、実はキレ者」というハードボイルドの主人公の定番。
演じるのは、まさにこの役にピッタリのエリオット・グールド。
この映画の前に主演した「ロング・グッドバイ」(1973)の探偵マーロウ役がダブります。
彼の会話シーンがかっこいいですよ。
編集長にこんなワケの分からないネタなんか追うな、もっとまともな事件を追えっていう言われるんです。
「映画では編集長は48時間やる。その間に命をかけて証拠を掴んでこい、って言うんですよ」
「俺は本当に馬鹿だ。だからこれからバカなことを言うぞ。24時間で何か掴んでこい」
ハードボイルド好きには堪らないですね。
また記者が逃亡してる宇宙飛行士を探すために、農薬散布のプロペラ機をチャーターしようとするんです。
プロペラ機のオーナーは当時大人気のテレビドラマ「刑事コジャック」(1973-78)で主演していたテリー・サバラス。
新聞記者がチャーターするなら幾ら?って聞くと「農薬散布は25ドル」って答えるんです。
「OK、じゃチャーターするよ」
「100ドルだ」
「何で?」
「お前は農薬散布が目的の貧乏な農園主じゃないからな」
「分かった。100ドルだな」
「120ドル」
「なんだよ、それ?」
「すぐに払うってことは、もっと払えるってことだ」
まさにハードボイルド的会話ですね。
彼が体を張って、少しづつ謎に迫っていく展開は見応えありました。
もう一人の主役である宇宙飛行士のリーダーを演じたのはジェームス・ブローリン。
先日レビューした「悪魔の棲む家」(1979)で、悪魔に取り憑かれちゃうお父さんの役でしたが、この映画では彼が得意としてる決してザ・ヒーローではないけど、頼れる兄貴的な存在。「ザ・カー」(1977)で演じた保安官役に近いイメージです。
pagutaro-yokohama55.hatenablog.com
ジェームス・ブローリンの同僚宇宙飛行士役はO・J・シンプソン。
アメフトのスターから、役者に転じ、数々の娯楽作品で正義感が強くて、真面目な好人物を演じた名脇役俳優です。「カサンドラ・クロス」(1976)の麻薬捜査官や「タワーリング・インフェルノ」(1974)の警備主任が印象的でした。
「カサンドラ・クロス」のレビューでも書きましたが、1994年に奥さんの殺害容疑で映画界を去ってしまったのは残念です。(仕方ないけど)
あとこの映画のラストシーンが僕は好きなんです。
ちょっと爽快な終わり方。
観ていると途中で「こういう終わり方なだろうなぁ」と気づいちゃうようなものですが、まだ未見の方のために、ここは伏せておきます。

この映画のキーとなっているのは、「火星飛行が実はヤラセでした」。
最近では「アポロ11号月面着陸捏造論」っていう都市伝説系陰謀論が有名ですが、当時はかなり斬新な発想でした。
前半の「偽の火星飛行」もばれないのかな?というドキドキ感はありました。
ちなみにアポロ計画で月面着陸は無理そうだから、スタンリー・キューブリック監督に月面着陸の捏造映像を依頼しようとする「ムーン・ウォーカーズ」(2011)という映画もありました。
とにかく娯楽作としてテンポはいいし、展開も早くていいです。
だが、しかし
冷静に振り返るとオヤ?って思うところが何点も、ご都合主義溢れる展開が散見されます。
例えばNASAが自分たちの失態を議会から隠したいはずなのに、宇宙飛行士たちが脱走すると、軍隊が武装ヘリコプター追いまくるんですよ。
もう政府も巻き込んでますよね??
あと新聞記者がいろいろなヒントを集めて、火星の映像の撮影場所の廃基地の倉庫まで辿り着くのはいいんですよ。
でも倉庫で宇宙飛行士のペンダントを拾っただけで、彼らは脱走したんだ!って結び付けるのは強引じゃないですか?
これ、きっと脚本を書いてる時に、誰かが「こうなったら面白くない?」って言ったのを「お、それいいね!もらった!」って継ぎ足していったような出来。
盛り上がるんだけど、辻褄合わせはしてないっぽいです。
この映画の監督であるピーター・ハイアムズは、70-80年代はほとんどの作品で、脚本も書いてました。
勿論、この映画もそうです。
ピーター・ハイアムズの作品の特徴は雰囲気とノリで押しまくるところ。
彼はダラけることのない、テンポのいい映画作りが上手いので、観ている間は素直に楽しめちゃいます。
「細かいことは気にするな」っていう江戸っ子気質的なスタイルでしょうか。
さすが娯楽職人です。
この映画や「アウトランド」(1981)はそれがハマっています。
反面、崇高な名作「2001年宇宙の旅」(1968)の続編である「2010年」(1984)は、それがものの見事に裏目に出ちゃっいましたが・・・(そもそも、SF文芸作品と言われる映画の続編を、娯楽職人がやるのがどうかと思うんですけど)
pagutaro-yokohama55.hatenablog.com
あと、この映画で忘れちゃいけないのはジ名匠ェリー・ゴールドスミス作曲のテーマ曲。
このテーマ曲は聞いたことある人は多いんじゃないでしょうか?
昔から「UFOは実在した?!」みたいなムー系のスペシャル番組では定番の音楽として使われてます。
いろいろと書きましたが、素直に観れば楽しめる昭和の娯楽作です。
古めかしさも少ないし、宇宙旅行はヤラせだったというネタは今でも人気(?)なので、興味のある人は見て損はないと思います。
(ただし細かいところに拘る人はダメかも)
ちなみにアメリカ公開は1977年6月で、日本公開は1976年12月。
当時としては珍しい「日本先行公開」だったんでしょうね。
それだけ当時の話題作だったのかも。
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