僕はポリスというバンドが大好きでした。
「見つめていたい」が大ヒットしたけど、「シンクロニシティ」や「君に夢中」、「ウォーキング・オン・ザ・ムーン」が好きなんです。
そのバンドのリーダーだったスティングは、ちょこちょこ映画に出演してます。
僕の大好きな「デューン/砂の惑星」(1984)にもカッコいい悪役で出演してました。
大体、重要な脇役かゲスト出演が多いのですが、彼が主演した数少ない作品が「ブライド」(1985)。
クラシックホラー映画「フランケンシュタインの花嫁」(1935)のリメイクだそうです。
でも見たことなんです。
さて、どんなリメイクだったんでしょうか?!
人生初の「ブライド」です!
(あらすじ)
人造人間を作ったため大学を追われたフランケンシュタイン博士は、自宅の城で実験を続けていた。実験は成功し、女性の人造人間が誕生するが、「自分の花嫁」と近づく最初の人造人間(怪物)を拒絶。怒り狂った怪物が暴れ、実験室は炎と共に崩壊する。
フランケンシュタイン博士は、生まれたばかりの女性の人造人間に「最初の女性」という意味を込めてイーブと名付け「男と同じように自立した新しい時代の女性」にすべく彼女にいろいろなことを教えていく。
片や実験室の崩落に生き残った怪物はあてどもなく彷徨う中、いじめられている小人を助けたことで、彼についてサーカス団に入団すべく二人でブダペストを目指すのだが・・・
面白かったです。
普通に面白かった。
でもね、これは「フランケンシュタインの花嫁」ではないです。
現代風アレンジとか、そういう次元ではなく、全くの別物。
出だしの「花嫁」を造るシーンは、かやりいいです。レトロっぽくて、大がかりな実験室がゴシックホラー感満載。
そして、遂に包帯に包まれたフランケンシュタインの花嫁が誕生!
ちなみにオリジナルの花嫁はこんな感じ。
よくいろんなところで取り上げられるので、知ってる人も多いかも。
フランケンシュタイン博士(スティング)が包帯を取ると、そこには・・・
めっちゃ可愛い花嫁
だって花嫁を演じるのは、
「フラッシュダンス」(1985)で一躍有名になったジェニファー・ビールス。
彼女に「俺の花嫁~」と迫ってくるフランケンシュタインの怪物(よく間違えられるんですが、フランケンシュタインは怪物を造った博士の名前であって、怪物の名前ではありません)が迫ってくるんですが、彼女は「この男、ムリ~!!!」と超絶に拒絶。
フランケンシュタイン博士は、「こりゃ無理だ。あいつの花嫁にはしない」って宣言。
・・・これ、どう考えても思ったより可愛かったから、自分の物にしよう!って魂胆がミエミエ。
フランケンシュタインの怪物も最初こそ暴れますが、「やっぱ、俺って醜いから嫌われたんだー」と傷心で去っていく物分りの良さ。
そうなんです。
この映画の怪物たちは、基本的にいい人。
人に造られたけど、人より人らしい心を持ってるっていうのが、この映画の描きたかったことらしいです。
ちなみにこの映画のフランケンシュタインの怪物も、頭にデカいボルトをつけたような、ゴリゴリの怪物ではなく、頭や体に大きな手術跡が大男。あまり異形さはありません。
フランケンシュタインの怪物が実は優しい心の持ち主っていうのは、オリジナルの「フランケンシュタイン」(1931)でと描かれていた通り。
更にここでは調子がよくて面倒見のいい小人との友情を絡ませ、めっちゃ奥ゆかしくて、友情に厚く、花嫁を密かに思い続けてる男として描かれてます。
片や花嫁を横取りした(?)スティングが、花嫁をレディとして仕立てあげようとします。
これってバーナード・ショーの戯曲「ピグマリオン」(「マイ・フェア・レディ」(1964)の元ネタ)じゃない?と思ったら、スティングの友達が「ピグマリオンのつもりか?」というセリフで、ネタばらし。
結局、ここから小人と旅をするフランケンシュタインの怪物と、レディになっていく花嫁が並行して描かれます。
もうこの段階で、この映画は「フランケンシュタインの花嫁」のリメイクではありませんでした。
ちなみに「フランケンシュタインの花嫁」の花嫁は映画の終盤に登場し、フランケンシュタインの怪物に対して「化け物イヤ~」と絶叫し、それに怒ったフランケンシュタインの怪物が実験室のある塔を破壊し、花嫁も死ぬというもの。
つまり「フランケンシュタインの花嫁」の終盤が、この映画の序盤なんですね。
勿論、「フランケンシュタインの花嫁」に。花嫁をレディに仕立てる話は全くありません。
さて、怪物と小人はサーカス団に入団し人気者になるんです。
ある夜、「俺は金持ちになってベニスに行ってみるんだ。もうすぐ貯まるからベニスに行けるぞ」と小人が語り、死亡フラッグ立ちまくります。
案の定、予定調和的に小人は殺され、怪物は犯人である団長の部下を殺害。
それを見た団長が「この人殺し野郎!」(どっちがだ?)と糾弾し、団員と共に怪物を追いますが、何とか逃れて花嫁のいる町に舞い戻ります。
こっそり花嫁に会い、プレゼントを渡す怪物。
「あなた、私に会ったことはない?」
と花嫁に訊かれるも「会ったことなんてない」と男気のある返答をする怪物。
泣けます。
それでも花嫁は怪物のことが気になります。
(ってか、拒絶したことはすっかり忘れてる模様)
この人、運命の人かも??
って、まぁ、最初は彼のために、って作られた人造人間ですから、運命の人って言うのは間違いじゃないんですけど。
そんな花嫁はレディとして立派になったんですが、同時に自我が確立。
「これからの女性は男並みに自立するだ。そんなレディに彼女を仕立てるんだ」と息巻いてたスティングでしたが、これが完全に裏目。
スティングにも口応えするようになると、キレたスティングがついに「誰のおかげで飯食えてるんだ!」と昭和のオヤジ状態になります。
結局、スティングは自分に都合のいい女を作りたかっただけなんじゃね?
しかし逆切れの花嫁も「あんなたに命令される覚えなんてないわ。私を作ったわけでもないのに」と、言ってはいけないセリフで反撃。
ここでスティングがあっさりと「俺が作ったんだよ」とバラします。
花嫁が人造人間であることを悟らせる引き金として、「私を作ったわけでもないのに」というセリフがあるんですが、ちょっと安直では?(普通は「親でもないのに!」でしょうね)
まぁ、この辺りからスティングが「かっこいいイケメンの崇高な天才学者かと思ったら、ただの悪役でした」という展開になっていきます。
最後は彼と怪物が一騎打ちをし、スティングが打ち取られ、怪物と花嫁は旅立っていくというもの。
勿論、旅立つ先はベニス。
とにかく人間側に誰一人いい人は出てきません。
守銭奴で卑劣なサーカスの団長とその部下(どうもホモ友っぽい)。
花嫁を誘惑する「ヤリたいだけ」の中尉。
いつも皮肉たっぷりの伯爵夫人。
そして自分の欲望を最優先するスティング。
それに比べて人造人間の二人はピュアで真面目です。
人造人間同士が結ばれるラストは、恋愛ドラマ的清々しさがあります。
苦難を超えて結ばれた運命のカップルってやつでしょうか?
とっても怪物っぽくないんですよ。
反対に「シェイプ・オブ・ウォーター」(2017)のような、エグい突き抜け感のあ怪物同士の恋愛だったらミスマッチだったんでしょうね。
主演のスティングは貴族出身の若き天才学者がとっても似合ってました。
またジェニファー・ビールスの「花嫁」も良かったかな。欲を言えば、せっかく人造人間という設定なのに、それっぽさがあまりなかったので、海外版ポスターのような、狂気を秘めた表情があると良かったんじゃないかって思います。
また怪物と友情をはぐくむ小人を演じたデヴィッド・ラパポートがとても上手かったです。この人、「バンディットQ」(1981)にも出てたんですね。でも38歳と若くして亡くなってるのを知りました。残念・・・
ちょこちょこ安易なところはありますが、コンパクトに良く出来た話だと思います。
普通の人間ドラマとして作られていて、ホラー感はかなり薄いです。
っていうか、これはホラー映画の皮を被った純愛人情ドラマです。
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