「カルト映画好きなら見ていて当然でしょう」
このセリフの重いこと、重いこと。
だって、カルト映画の2/3は見ていて楽しくないものなんですよ。
それを自ら進んで、人生の貴重な時間を費やすなんて、マゾなんじゃないかって思います。
さて、今回見たのは間違いなくそういう作品。
ルチオ・フルチのカルト作「地獄の門」(1980/日本未公開)。
もうね、タイトルからしてアレですよね。
ちなみ日本のビデオ会社が付けた邦題はウケ狙いではなく、英語題の直訳。
(更に言えば英語題も「THE GATES OF HELL」と「CITY OF THE LIVING DEAD」の二種があります)
そんな映画ですか、「いつか見なきゃいけないなら、今見ておくか」と意味不明な決心のもと、初めてこの映画を見てみました!
(あらすじ)
交霊会で霊と交信した女性が自殺する神父、墓から蘇る死者の幻覚を見て、卒倒しそのまま死んでしまう。この事件に興味を持ったジャーナリスが彼女が埋められた墓に行くと、蘇生した彼女を発見する。二人は彼女が「見た」という屍者の街「ダンウィッチ」を探す。そしてダンウィッチでは人々が凄惨に殺害される事件が次々と起こっていた・・・
まぁ、なんでしょうね。
話の雑さ加減は、ルチオ・フルチのカルト代表作「サンゲリア」(1979)と一緒。
アメリカが舞台で、アメリカ映画っぽくしてるけど、純粋なイタリア映画。言語はイタリア語ってところも「サンゲリア」と同じ。
英語のタイトルが複数あるのも似てます。
pagutaro-yokohama55.hatenablog.com
噂通り、残酷シーンが多く、その不快指数はかなり高め。
でも一番不快指数が高いのはストーリー。
とにかく薄っぺらい。
説明不足というか、設定を何も生かしきれず。
首を吊った神父は何故?とか、誰が誰?なんで地獄の門が開く前から死人が蘇るの?
まぁ、ゾンビじゃなくて、死霊ってことなんでしょうけど。甦った死人もゾンビ風ではあるものの、突然現れたり、消えたりするし。
そもそも意味あるの?っていうシーンも多数。
例えば、意味ありげで、物語のキーマンっぽい雰囲気の不良少年が登場するんですが、何一つ物語に絡むことなく(ゾンビから逃げるぐらい?)、途中であっさりと殺されるんです。
それも人間のオヤジに工具のドリルで頭に穴をあけられて。
いくらこいつが嫌いだって言っても、ドリルで穴を開けるのはやり過ぎでしょ。
ゾンビより、このオヤジの方が怖いです。
こんな風に残酷シーンも「そこに必要?」っていうのが多いかも。
一般的にホラー映画には理由が分からない怖さ(正統「ゾンビ」シリーズのゾンビが発生した原因)と、理由があるから怖い(「リング」の呪いのビデオが生まれた原因)の二種類があると思います。
この映画だと「地獄の門が開いて大変なことになるらしい」という、具体的なテーマ(?)があんだから、ちゃんと理由や背景を示して、ある程度ミステリー仕立てで恐怖の核心の近づいてく作りが鉄板です。
でも、この映画はただただ残酷なシーンやグロいシーンが出てくるだけで、話自体に怖さが全くありません。
舞台装置は揃ってるんです。
・ カソリックなのに、教義に反して自殺する謎の神父
・ 交霊会で霊と通信してヒントを得ている女性とジャーナリスト
・ 地図に載っていない、魔女裁判が行われた謎の街・ダンウィッチ
・ ハロウィンの夜中に開くという地獄の門
ありきたり感が強いものの、発想は悪くないんじゃないでしょうか。
手堅く作れば、もうちょい面白い映画になったと思うんですよ。
でも、ルチオ・フルチは全く物語に興味なさそうで、雰囲気作りも粗雑。
多分、「グロいシーンが15分おきに出てくれば、それで客は喜ぶだろ?」ぐらいの発想っぽいです。
でも、せっかくの(?)残酷シーンも「さて、15分経ったから、この辺でグロいシーン見せとくか」ぐらいの唐突感ありあり。
とにかく残酷なシーンを撮る前に、やることはいっぱいあったハズです。
以前、同じような悪魔の復活をテーマにした超B映画「パラダイム」(1987)のことを辛辣に書きましたが、あっちの方が数倍マシです。
やっぱジョン・カーペンター監督は凄え。(妙に感心)
pagutaro-yokohama55.hatenablog.com
ちなみに「ダンウィッチ」は世界的な人気ホラー作家ラヴクラフトの小説に出てくる街と同じ名前。
地図にも出ていない、謎の小さな街ってホラーRPGに出てきそうな設定じゃないですか。
なのに、実は学校も病院あって、住民が普通に生活してる街なんですよ。
全く謎めいてない!!!
ゲーム「サイレント・ヒル」(1999発売)を見習えよ!って言いたくなります。
(「サイレント・ヒル」の方が20年近く後だけど)
主演はカトリオーナ・マッコール。
知る人ぞ知る、70年代の「ベルサイユのばら」ブームの時に、日本人資本でオール外国人スタッフ&キャストで作られた実写版「ベルサイユのばら」(1979)で、主演のオスカルに抜擢されたのが彼女。
でも残念ながら、彼女の女優生命は短く、「ベルサイユのばら」以外はこの映画、同じくルチオ・フルチ監督の続編(らしい)「ビヨンド」(1981)ぐらい。ちなみに「ビヨンド」もカルト扱いになってます。
ちなみにこの映画を見る限り、下手ではないです。見た目も綺麗です。でも特徴があるかというと、残念なから「ただの綺麗な女優」レベル。
消えてしまったのも仕方ないかなぁ、と思いました。
音楽は「サンゲリア」と同じファビオ・フリッツィ。
今回もちょっとゴブリン風味の80年代っぽい音楽を提供しています。
まぁ、「サンゲリア」の音楽と似てますが、個人的には好きな部類です。
今回も人生の貴重な時間の無駄となってしまいました。
でも続編の「ビヨンド」もいつか見るような気がして怖いです。
そんなカルト映画好きの自分が憎いです。
(本当か?)
そこそこお手軽な値段でBlu-rayが入手できます。
それも4Kリマスター版・・・
ニーズがあるってことでしょうね。
マニア恐るべし。
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