70年代~80年代のアニメブームにどっぷり浸かった子供時代を過ごした人にとって、好き嫌いは別として、「誰もが知ってる作品」というのがあります。
超有名どころでは「宇宙戦艦ヤマト」(1974-1975)や「機動戦士ガンダム」(1979-1980)ですね。
そんな「80年代アニメ好きなら誰もが知ってる」一本が「超時空要塞マクロス」(1982-1983)。
まぁ、2016年の「マクロスΔ」まで続いてるから、若いアニメファンにも有名ですね。
さて、そんな一作目マクロスの劇場版が「超時空要塞マクロス/愛・おぼえてますか」(1984)。
この映画が4K版になって、劇場公開されたので、早速観に行ってきました。
映画館はいつものチネチッタ(川崎)。そしてスクリーンはチネチッタで一番大きい488席で、LIVE ZOOMという音響システム付きのところ。
去年、「ランボー」(1982)や劇場版「銀河鉄道999」(1979)の4K上映を観たのと同じスクリーンです。
実はこの映画を見るのは初公開以来、約40年ぶり。
当時の僕は所来の夢がメカデザイナーっていうぐらいメカフェチ。
そして子供の頃から大好きだったスタジオぬえ(河森正治さん)がデザインしたバルキリーやその他のメカがお目当てでした。
そんな僕が「え?やっぱりそういう映画だったんだ」と困惑したのを覚えてます。
さて、今でも困惑するのかレビューします!
(あらすじ)
宇宙戦艦マクロスは、宇宙人(ゼントラーディ)の奇襲を受けた地球から、かろうじてフォールド(ワープ)で太陽系外へと逃れる。マクロスは艦内に都市も存在する超巨大戦艦で、一般市民も普通に生活をし、アイドル、リン・ミンメイが人気を博していた。追撃してくるゼントラーディを迎撃すべく、人型可変ロボット・バルキリーのパイロットである主人公は、上官である早瀬の命令を無視し、艦内に潜入した敵を追う。その中で避難におくれたリン・ミンメイを助けるが、二人はマクロスの閉鎖区間に閉じ込められてしまう。救助を待つ間に、二人の間に愛情が芽生えていくが・・・
僕が「マクロス」を知ったのは、放送直前の9月。
当時発売されてたアニメックという、ちょっとマニア寄りのアニメ雑誌に「マクロス」の設定資料画が載ってたんです。
「うぉーー、F14トムキャットみたいな戦闘機が、ロボットに変形するって本当か!」って、同級生でアニヲタのO君と盛り上がりました。
またそのデザインをしたのが二人とも好きだった「スタジオぬえ」だと知って「さすが、ぬえ!」と興奮し、お互いに「絶対マクロス、欠かさず見る」と誓ったのを覚えてます。
ちなみにO君はその後医者になり、今でもアニヲタです。
(今でも交流あり)
放送が始まり、観ていくうちに「あれ?ちょっと僕が期待していたのとは違うぞ?」となりました。
そして気が付けば見るのを止めてました。
それでも映画版が公開された時は、ちょっとは期待して足を運んだです。
観に行った劇場は岐阜東宝。二階席のある、日本映画専門の大きな映画館でした。(今は廃館)
「ノストラダムスの大予言」(1974)や「八甲田山」(1977)、「ルパン三世 ルパンVS複製人間」(1978)を観た映画館でもあります。
そしてその時の感想は前述の通り「あれ?」。
そして今回見終わって思ったのが「そりゃ<あれ?>ってなるよね」ってこと。
その理由はこの映画のポスターが一番よく表してました。

これは今回の4K版のポスターですが、基本はオリジナルと同じです。
それは当時のパンフレットを観てもらえば分かります。

そう、恋愛映画なんですよ。
(あらすじを書いてても、やっぱり恋愛映画だなぁ、と改めて実感)
この映画の肝は三角関係。
主人公も憧れてた可憐なアイドルのリン・ミンメイと規律に厳しい姉さん上官の早瀬未沙の間で揺れる主人公。
ってか、揺れてないです。
その時々で流されてるように見えます。
だって主人公はモテているように見えて、実は吊り橋効果に乗っかってるだけ。
リン・ミンメイの時は戦闘の果てに二人でマクロスの閉鎖区間に閉じ込められて数日過ごすうちに♡。
早瀬ミサとは、二人でマクロスからはぐれて、荒野となった地球を目の当たりにし、絶望感に打ちひしがれて過ごすうちに♡。
これって「成り行き」っぽくないですか?
(マクロスファンに殺されそう)
良く考えれば、当時のターゲット層(多分、10代後半から20代前半)の夢のシチュエーションをアニメ化したとも言えます。
10代~20代の僕が同じシチュエーションになったら、きっと嬉しかったハズ。
どうしてもカッコいいメカ、結構しっかりしたSF設定にしか目が行きがちですが、マクロスの本質って恋愛物語ってことを見抜けなかった、当時の僕が間違いでした。
更に元々、恋愛映画を得意としてないってことも自分の敗因だと思ってます。
この年になってもこの前見た「マネキン」(1987)でさえ、見ていて恥ずかしくなるぐらいですから。
だからこの映画を観て、居心地の悪さを感じたのかもしれません。
ちなみにこの日、488席の劇場の7割ぐらいが埋まってましたんですが、ほとんどが僕と同じぐらいか、その上の世代。
きっと僕よりちょい上の、あの頃アニメファンだった人たちだと推測されます。
みんな、僕のような居心地の悪さを感じなかったんでしょうか?
あと、この映画で気がついたのが、昭和の匂いがプンプンすること。
まず画面が、当時の手描きの最高峰!っていすさまじい出来なんです。
書き込みまくったメカ、影をがっつりいれる作画、乱れ飛ぶミサイルと80年代SFアニメの最も凝った表現が凝縮されてます。
今のアニメ好きな若者が見たら、ごちゃごちゃしてるって感じるかもしれませんが、僕はまさにそういう演出の洗礼を受けた世代なので、懐かしいと嬉しさでいっぱいでした。
クレジットを見て作画監督が板野一郎さんだったことを思い出しました。
「板野サーカス」という表現で、80年代を代表する有名なメカ作画の第一人者。
このメカやミサイルの動きは一見の価値があります。
宇宙空間でバルキリーがロボットアームに固定されながら、発進するシーンは最高です!!!
マニアックなネタでは、メカデザイン協力に出渕裕さん、原画に庵野秀明さんが参加してたんですね。知りませんでした。
戦闘シーンはかっこいいけど、欲を言えば、こんなにアニメ史に残るカッコいいメカたくさん出して、且つ軍隊が使う兵器として登場させるなら、「装甲騎兵ボトムズ」(1983-84)ぐらいメカメカしくて、リアルっぽいシーンがもっと見たかったです。
(やっぱりメカフェチだから)
そして脚本もとっても昭和。
酔っ払った先輩が、「女をくどく時は、相手の気持ちなんて無視して、勢いでいくんだ!」と主人公に説教。
手本を見せてやる、って隣にいる恋人が嫌がるのを無理矢理押し倒してキス!
そして酔っぱらったまま出撃!
主人公は主人公で、わがままを言うリン・ミンメイを平手打ち!
(そんで、彼女は納得)
女性の人権が叫ばれる現代ではかなりビミョーだと思われそうです。でも、昭和の時代では、結構普通のノリだったと思います。
まぁ、80年代のアニメで目にするのは珍しいと思いますけど。
ちょっと不満めいたことを書きましたが、映画としての構成はかなり良かったです。
テレビ版をかなり効率よくカットして、再構成してました。
(全36話のうち、27話までを再構築)
ちなみにこの映画版はTVのダイジェストではなく、別物です。
TVからの使い回しのない全部新作というだけでなく、TV版から設定を大きく変更しているところがあります。
(主人公はアクロバット飛行機のパイロットから、偶然に軍に入るのではなく、最初から軍のパイロットとか、敵が男性軍と女性軍に分かれて戦争をしているとか)
そうした再構築のお陰で、個人的には恋愛部分に居心地の悪さはあるものの、客観的に「初めてマクロスを見る人にも、ちゃんと理解して、楽しめる話」になってると思います。
この映画で改めて「へー」と思ったのはリン・ミンメイの存在と「歌」。
「マクロス」まで劇中の女性が歌手として何曲もちゃんと歌うシーンがあるアニメってなかったんじゃないでしょうか。
更に言えば、その歌に合わせて振付の演出をがっつりやってるのもこのマクロスが最初だと思います。
「マクロス」が作った「劇中の歌うアイドルを中心に話が進む」という作りが、「ラブライブ!」シリーズ(2013~)や「BanG Dream! 」(2017~)という一大ジャンルになったことを考えると、凄い設定だったんだなぁ、と実感しました。
この映画の語るときに絶対外せないのが、飯島真理さんが歌う主題歌「愛・おぼてますか」。
マクロスのことや、この映画のことを知らなくても、この歌のことを知ってる人は多いですよね。
実際にアニメに全然無縁の人がカラオケでこの曲を歌うのを何度も観てきました。
本当の意味で、アニメという枠を超えてヒットした曲の第一号かもしれません。
「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」(1978)の主題歌「ヤマトより愛をこめて」はオリコンで4位になりましたが、これは当時、飛ぶ鳥を落とす勢いだった沢田研二さんが歌ったから、というのが大きく、<アニメが歌謡曲の力を借りた>ので、僕的には純粋なアニソンヒットとしてはノーカウントにしてます。
この映画のクライマックスは、リン・ミンメイがステージで「愛・おぼえていますか」を唄い、それと同時に外では戦闘が行われます。
「愛・おぼえてますか」をバックに、激しい戦いが繰り広げられるシーンは、音楽がミスマッチなところが反対に素晴らしく、独特のカタルシスを生んでいます。
僕はこういう意図的なミスマッチな演出が大好きです。
(「2001年宇宙の旅」(1968)の宇宙船が飛行する時に、ヨハン・シュトラウス2世の「美しく青きドナウ」が流れるシーンが好きなのも同様の理由です)
なんやかんや書きましたが、「じゃ、お前はこの映画はもう見ないの?」と問われれば、やっぱり恋愛シーンに居心地の悪さを感じながらも、また見ちゃうんでしょうね。
それだけ完成度の高い作品だと思います。
そして、最後にクァドラン・ローはカッコいい!!!
(クァドラン・ローは敵のメカです)

4Kリマスター版は2025/1/29に発売されてます。
そこそこ高いですが、マニアにとっては割安な値段設定な気がします。
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