パグ太郎の<昭和の妖しい映画目撃者>

昭和の映画目撃談&時々その他いろいろ

【ゴールド(1974)】ロジャー・ムーアが007に見える”パニック映画”

ロジャー・ムーアって007以外の印象って薄いんですが、結構いろんな映画に出てます。

そんな一本が「ゴールド」(1974製作/1975日本公開)

「007/死ぬのは奴らだ」(1973)の翌年に出演した映画です。

 

日本では「パニック映画」っていうカテゴリーで宣伝されてた気がするんですが、実際はどうだったんでしょうか。

48年ぶりに見直してみます!

 

(あらすじ)

南アフリカにある金鉱の落盤事故で、ベテランの現場総監督が死亡。この金鉱を水没させ、金価格高騰を狙う国際シンジケートと手を組んでる社長は、陰謀に気づかれないように若手の現場監督を総監督に抜擢する。それとは知らず彼は、社長夫人を口説き落とすが、その間にも陰謀は着々と進んでいた・・・

 


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この映画は小学生の時に、親に連れられて見に行きました。

見たのは今は亡き岐阜の衆楽館だったと思います。

 

覚えてるのはクライマックスでロジャー・ムーアが両手に大ケガをするシーンぐらい。

話なんてさっぱり覚えてませんでした。

 

日本ではパニック映画として宣伝されてたようですが、サスペンス映画でした。

パニック映画と言えば、映画の早い段階で起きた災害から如何に脱出するか?ですよね。

この映画は冒頭とクライマックスに鉱山事故がありますが、話のほとんどが国際シンジケートの陰謀と、それに利用される若き現場責任者と社長夫人のラブロマンス。

 

これは当時、1972年の「ポセイドン・アドベンチャー」から始まったパニック映画ブームの真っ盛り(同じ1975年には「タワーリングインフェルノ」も日本公開されています)だったので、パニック映画的な売りをしたんでしょうねー。

ポスターもいきなりクライマックスの鉱山での浸水シーンのイラストだし(笑)。

これ、やっぱりパニック映画に見えますよね?

 

ゴールド パンフレット表紙

 

サスペンス映画としては、良い意味でも悪い意味でもオーソドックス。

まさに70年代の娯楽作品です。

 

まず、この粗筋を見て、「これはきっとロジャー・ムーアが陰謀を暴いていく映画だ!」って思いますよね。

 

絶対そう思いますよね?

 

彼は陰謀の黒幕に、金鉱が水没した時に罪を擦り付けるために、現場の総監督に抜擢されます。

総監督として仕事をしているうちに陰謀に気づいて反撃!だと思うじゃないですか。

 

それにこの映画のロジャー・ムーア、セリフ、立ち居振る舞いがまさに007。

ジェームス・ボンドに見えるんですよ。

 

でもね、ここではジェームス・ボンドではなくて、女性大好きな鉱山の現場監督。

 

だから陰謀に全然気が付かないんです。

全く007じゃないんですね。

 

じゃ、陰謀が進む間、何をしてたのか。

 

仕事のシーンはほとんどなく、ずーっと黒幕の社長夫人とイチャイチャしてるんですよ。

そこは007っぽいですが。

 

本当、彼の関係ないところでどんどん陰謀が進んでいくんです。

 

しかし最後の鉱山の浸水では、身を挺して浸水を止めます。

これが結果的に陰謀を防ぐことになるんですが、ロジャー・ムーアは総監督として頑張って浸水を止めただけで、陰謀があったことは1ミリも分かっていません

そしてそのまま映画は終了。

陰謀に気づかれないように彼を抜擢した黒幕の思惑は正しかったということですね。(笑)

 

ちなみにアクションシーンも冒頭の落盤事故と、クライマックスの浸水事故のみ。

話の途中に派手なシーンはありません。

アメリカ映画だったら、途中でどっかんどっかんと派手なアクションがあったんでしょうけど、こういうところがイギリス映画たる所以なのかも。

 

問題は陰謀話とロジャー・ムーアのイチャイチャ話の二本立てみたいなってたこと。

こういう統一感のなさって70年代娯楽作品にはよくあるパターンですね。

 

そんなちょっと地味目な内容を、ピーター・ハント監督はそつなく、手堅く、そして真面目に作ってるので、新鮮味はないですが、ハラハラするところはちゃんとハラハラするし、クライマックスの爆破作業も盛り上がります。

奇をてらわずに作ったから、一定水準のオーソドックスな娯楽作になったんでしょう。

 

監督のピーター・ハントは職人系の監督で、ロジャー・ムーア主演じゃないですが、「女王陛下の007」(1969)も監督してます。また編集として007シリーズを5本担当してます。

だからロジャー・ムーアが007に見えるような演出だったのかもしれません。

 

ロジャー・ムーアの上司である社長の奥さんを演じるのは、スザンナ・ヨーク

カテゴリー的には最盛期のメグ・ライアンに近い可愛さがある人なんですが、アップになる度に、目元の皺が気になっちゃうんです。

当時33歳なんで、若作りじゃないだけにちょっと可愛そう。

 

主題歌はトム・ジョーンズっぽい、粘り気のある典型的な70年代の曲。

なかなか印象的な良い曲です。

確かアナログLPでサントラを持ってたような気がします。


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唄ってるのはジミー・ヘルムスというアメリカの歌手です。

僕は知らなかったんですが、ソウルシンガーとしてそこそこ名の通った人なんですね。

 

今回はPRIME VIDEOのサブスクで見ました。

日本語字幕のあるDVDとBlu-rayは現在、入手困難なようです。