ちょっと前から吹替版ブームっていうのがありますよね。
映画のDVDにTV放映時の吹替音声を特典としてつけたり、有料放送で「懐かしの吹替版」を放送したり。
特に昭和の吹替は人気があるみたいです。
僕みたいに「映画はTVで見て育った」世代狙いですよね?
反対にDVDに吹替版ついていないと「期待してたのにガッカリした」というコメントをよく見ます。
映画ってレンタル→サブスクと、どんどんお手軽になってきています。
でも字幕版が基本で、吹替版まだまだ少ないです。
更に吹替版といっても、場合によっては「新録」だったりします。
まだまだ昭和の吹替版は貴重です。
実は僕は原語主義者です。
外国映画は出来るだけ、本人のセリフ、字幕で見たい人。
勿論、吹替版の方が画面に集中できるし、字数制限のある字幕よりは本当のセリフのニュアンスが伝わり易いのは分かってるんですが、昔気質なんですよ。
それでも「吹替版の方が、<映画>として面白い!」と思える映画があるのも事実。
それを再認識したのが、先日レビューした「アラン・ドロンのゾロ」でした。
pagutaro-yokohama55.hatenablog.com
こうなると、私的史上最強の吹替映画を見るしかありません。
それは「モンティ・パイソン アンド ホリーグレイル(吹替版)」(1975年製作/1979年日本公開」。
(あらすじ)
アーサー王は従者を連れ、円卓の騎士探しの旅に出ていた。ハチャメチャな騎士が集まると、今度は神から「聖杯(ホーリーグレイル)を探せ」という指令が下る・・・
モンティ・パイソンは70年代に世界的に人気になったイギリスのお笑い集団。
元々はイギリスBBCのTV番組でした。
日本でも1976年にテレビ東京(当時は東京12チャンネル)が日本語吹き替え版を放送してます。
wikipediaでは日本語タイトルは「空飛ぶモンティ・パイソン」になっていますが、放送当時は「おかまの恐竜 空飛ぶモンティ・パイソン」だったハズです。
令和時代は「おかまの恐竜」って表現がダメなんですかねぇ。
当時、奇跡的に僕の地元・岐阜でも、ネット局でもないテレビ東京制作だったこの番組が放送されていたんです。
勿論、毎回食い入るように見て、それ以来ファンです。
基本は不条理ギャグとブラックジョーク、そして変なアニメ。それもイギリスの文化を茶化したものがメイン。
だからそのまま真面目に吹き替えても面白さが伝わらないと思ったのか、有名声優陣(山田康夫さん、納谷五郎さん、広川太一郎さん、青野武さん、古川登志夫さん!)がノリノリ(悪ノリ?)で独自ギャグを連発しまくる吹替をやってました。
もう普通にダジャレが飛び交うんですよ。それも日本語のダジャレ。
その他にも当時小学生の僕でも「これ、絶対に日本オリジナルのギャグだよね?」と分かるような吹替ギャグが連発。
半ば声優さん達のオリジナル番組と化していました。
ちなみにこの日本語版、スタジオにタレントさんが集まっていて、解説みたいな話をした後で「では、ご覧下さい」といって本編を放送する形式になってたんです。
そして最後にモンティ・パイソンとは全然関係のない新人お笑い芸人が5分ぐらいコントをやるコーナーがあったんですね。
なんとこの新人お笑い芸人というのが、テレビ番組初出演のタモリさんでした。
まだサングラスじゃなくて、片目眼帯をして、4か国麻雀やイグアナの物真似をしてました。
結構面白くて、これはこれで楽しみだったんです。
定期券を拾って「名前がないなぁ。住所もないぞ。期限も書いてないや。あ、ただの紙キレか」っていうギャグが好きでした。
このTV版は世界的にモンティ・パイソンマニアを生みました。勿論、日本にもファンがいます。国内でDVD全集が販売されるぐらい、多くのスキモノがいるようです。
この映画はTV終了後に作られた劇映画1作目。
話は有名なアーサー王伝説のパロディです。
(その前にも一本あるが、TVの延長編みたいな位置付けで、本人たちも劇映画とは見做していない)
僕はこの映画を初めて見たのは、81年の「ライフ・オブ・ブライアン」(モンティ・パイソンの映画版第二弾)の同時上映としてリバイバルされた時です。
当時の岐阜でこの映画が上映されるハズもなく、名古屋まで遠征しました。
もうオリジナルがどーの、こーのって言うレベルではありません。
声優さんたちの悪ノリにノレるか、ノレないか。
価値基準はそれしかありません。
ノレれば、間違いなく字幕版の何倍も楽しめます。
歴史的な有名声優さん達の芸が、これでもかっていうぐらい堪能出来ること間違いなし。
主演(?)が山田康夫さんと納谷五郎さんなので、「ルパン三世 VS 銭形警部」なんですが、そんな先入観を吹き飛ばす出来です。
そしてなによりも広川太一郎さんのノリが最高です。「そんなこと言っちゃって~」というあの口調も最高。
まさに声優文化の国宝。
ひたすら不条理で、バカバカしいギャグが続くカオス状態なんです。
細かくて、唐突なギャグが次々と積み重ねられ、ところどころに不思議な手描きっぽいアニメーションが入るモンティ・パイソン・ワールド。
更にそれをパワーアップさせる吹替版の声優さんたち。
「日本版のモンティ・パイソンって、やっぱりこうだよな!」っていう僕のような好き者には麻薬です。
百聞は一見に如かずなので、是非見て貰いたいです。
(ただし僕も冷静な判断は出来ませんので、ガッカリしても責めないで下さい)
さて今回、吹替版を視聴したのは自分で保有しているDVDです。
何故、DVDを持っているのか?
それは吹替版が収録されているからです!
今ならNetflixでも見れるんですが、字幕版しかないんです。
ただ残念ながら現在、DVDは入手出来ないみたいです・・・(泣)
あ、今回は内容らしい内容に触れてませんでしたね。
ごめんなさい!
だってこの映画も、考えるな、感じろ、ですから。
(またこれで逃げるか~)
最後にプチネタ。
モンティ・パイソンの変なアニメーション担当は、唯一のアメリカ人テリー・ギリアム。
彼はのちに「未来世紀ブラジル」「バロン」「12モンキーズ」を作る希代の映像作家になりました。
僕は彼の映画も大好きです。(特に「未来世紀ブラジル」と「バロン」)