1981年公開のスプラッター映画「バーニング」(1981)
これが恐怖の復讐魔、噂の<バンボロ>だ。
そんなキャッチフレーズで、当時それなりに話題になった映画です。
(あらすじ)
5年前、サマーキャンプに来ている高校生たちの悪戯で全身に大やけどを負った嫌われ者。彼はキャンプ場に潜み、サマーキャンプの高校生を次々と植木ばさみで殺していく
よくある話です。
っていうか、これって前年に作られた「13人の金曜日」そのまんまな気が。
オープニングは殺人鬼が火傷を負って、5年かけて病院から退院するも、すぐに人を殺すところから始まります。
そして前半はお約束のメンバー紹介と、青春ドラマ(?)
殺されそうな思わせぶりなシーンでも、実はいたずらだった、みたいな、これまたお約束の展開。
そして冒頭から無駄におっぱいがいっぱい出てきます。
ノーブラTシャツだけじゃなく、気前よくペロンと出すキャラも多いです。
おっぱいいっぱいは80年代の若者向けスプラッターのお約束です。
おっぱいの出し具合で真面目か、イケイケキャラか、キャラの把握が分かりやすくて便利です。
今なら完全にセクハラでアウトです。
男は①真面目リーダー ②筋肉バカ ③お調子者 ④根暗の気弱と、この手の映画に必要なフルセットが揃ってます。
お約束通り、筋肉バカとお調子者は「女の子とやりたい、やりたい」アピール。
筋肉バカがネクラをいじめ、リーダーに注意されるものお決まりです。
この前半で、誰でも分かる死亡フラグが立ちます。
・筋肉バカの男
・お調子者の男
・お調子者にナンパされた女の子(当然脱ぎます)
・筋肉バカの彼女(一番最初にシャワーシーンでペロンしてます)
その期待は裏切られることなく、後半に殺人が実行されます。
安心の出来です。
次々と(結構雑に)みんなが死に、観客全員の予想通り、最後は真面目リーダーとネクラが殺人鬼を倒します。
なんという予定調和!!!!
ヒネリなんて言葉は1ミリもこの映画には存在しません。
まさに80年代ホラーのサンプル映画です。
個性は凶器の植木ばさみ以外ないと言っていいでしょう。
そう言えば有名ゲーム「クロックタワー」シリーズに出てくるシザーマン(大ばさみを持って襲ってくる正体不明の殺人鬼)って、この映画の殺人鬼をモデルにしてるんじゃないでしょうか。
さて、実はこんな映画ですが、スタッフは豪華なんです。
制作会社はのちに「パルプフィクション」を作るミラマックス社。
プロデューサーは超大物ハーヴェイ・ワインスタイン!
90年代からヒット作・名作を連発した有名プロデューサーです。
最近はセクハラ・レイプで「#MeToo運動」を引き起こしたことの方が有名ですね。(実刑判決で禁固23年)
当時はまだ無名だったとはいえ、なんでこんなB級に徹した柳の下のドジョウ狙いみたいな映画??と思うんですが、ブームに乗っかって手堅く儲かると思ったんですかねぇ。
音楽は70年代のプログレロックの大御所YESのキーボーディスト、リック・ウェイクマン。
こちらも何でこんな映画の音楽を引き受けちゃったか謎です。
(同時期に同じくプログレロックのもう一つの大御所ELPのキーボーディスト、キース・エマーソンも日本のアニメやイタリアのホラー映画のサントラを担当したりしてたので、業界でブームだったんでしょうか)
でも、なかなか綺麗なメロディーです。
特殊メイクは「ゾンビ」等のホラーメイクの第一人者トム・サビーニ。
切る、裂く、突くの残酷特殊効果をやらせたら、右に出るものはいません。
この映画も凶器が植木ばさみだけあって、指をチョン切られるシーンや喉をグサッと刺されるシーンは、公開当時はちょっとイタ怖かったです。
(今はもっとエグい映画に慣れたせいか、そこまで感じませんでしたが)
しかしこの映画の本当の見どころは、ここではありません。
一番の見どころは、この映画の配給会社が東宝東和だってこと。(「メガフォース」の回、参照)
この映画のキャッチフレーズは
これが恐怖の復讐魔、噂の<バンボロ>だ。
この<バンボロ>っていう名前はいたるところで使われます。
映画の中で殺人鬼の名前はクロプシーです。
バンボロではありません。
劇中に「バンボロ」なんて言葉は一回も出てきません。
きっと殺人鬼っぽいから、って勝手につけたんでしょうねぇ。
昭和の時代だからこそ、許されるマーケティングです。(今ならこれもコンプライアンス的にアウト)
更に「この映画は実際の事件に基づいている、バンボロは全米で指名手配されている」と宣伝してたようですが、当然そんな事実はなかったようです。(これもコンプライアンス的にアウト)
ダメ押しで観客が絶叫で声帯や鼓膜が傷つくかもしれないから、絶叫保険という保険をかけてる、という宣伝もしてました。
(これは同じ東宝東和の「サスペリア」のショック死保険の二番煎じです)
他にも当時の常套句として「全米で上映禁止」っていうのがありました。
勿論、この映画にも「適用」されてます。
ここでもバンボロって出ますね(笑)
ちなみ<上映禁止じゃなくて、採算取れないから上映しなかった州>も上演禁止に数えたとか、という噂もありました。
映画本編よりも、東宝東和の宣伝の方が個性的で、面白いです。
ともかく、見たところで、きっと2分後には「あれ?見たのは13日の金曜日だっけ?」というような映画です。
今後もホラー映画史に名を遺すようなことはないでしょう。
B級というより、コピー商品を見たような気分にさせる映画です。
最後に昭和の岐阜あるあるネタ。
この映画も岐阜では二本立てで公開されました。
一緒に上映されたのは「アメリカン・バイオレンス」というドキュメンタリー映画。
アメリカで起こった有名暴力事件を集めていました。
昭和の時代に流行った、でっち上げのモキュメンタリーではなかったようです。
現在は国内版ソフトはないようです。
以下のリンクは米国版なので、万が一購入する方はお間違えの無いようにお願いします。
(そんな人、いない???)