パグ太郎の<昭和の妖しい映画目撃者>

昭和の映画目撃談&時々その他いろいろ

【パラダイス・アレイ】スタローン初期の人情物。戦わないスタローンも良い?

今やアクションスターの大御所として語られるシルベスター・スタローン

彼はチョイ役・脇役の長い下積時代を経て、「ロッキー」(1976)で一躍注目されました。

 

そんな彼の人情ドラマ「パラダイス・アレイ」(1978)をご存じでしょうか。

彼の半自伝とも言われている、こじんまりとして、ちょっとしんみりする映画です。

 

(あらすじ)

第二次世界大戦直後のNY。スラム街に住むイタリア人三兄弟の次男コスモはいつも金儲けをすることばかり考えているような男だった。しかし何をやっても上手くいかず、長男には真面目に働けと言われ、好きな女性には相手にされない。そんな時、ナイトバーでやっている賭けレスリングに弟を出し、一攫千金を狙おうとするのだが・・・

 

パラダイス・アレイ DVDジャケット


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「ロッキー」シリーズや「ランボー」シリーズ、近年では「エクスペンダブルズ」シリーズでアクションスターとし成功を収めてるシルベスター・スタローン

 

ただ時々、アクション以外の、いろいろな役にチャレンジしています。

きっと元々、脚本家・監督志望だったこともあり、アクションスターの枠から脱却したかったんじゃないんでしょうか。

 

特に「ロッキー」の成功の直後、ヒューマンドラマの俳優・脚本家を目指していたように思えます。

 

そんな時に出演したのが「フィスト」(1978)と今回紹介する「パラダイス・アレイ」。

 

「フィスト」は実在の労働組合のリーダーを下敷きにした文芸ドラマで、「パラダイス・アレイ」はニューヨークの貧民街に住む三兄弟の人情話。

 

どちらもヒットしなかったようで、この二作品の後は「ロッキー2」(1979)に出演。その後、「ランボー」(1982)でアクションスター路線を邁進するわけです。

 

さて、「パラダイス・アレイ」のスタローンは、脚本・監督・主演をこなしています。ちなみにこの映画が彼の初監督作品です。

 

更に何と主題歌まで歌ってるんですよ。

彼が主題歌を歌ってるなんて、後にも先にもこの映画だけなんじゃないんしょうか。

 

正直、歌は上手くないんですが、味があります。

それに曲自体の雰囲気や歌詞が、映画にマッチしていて、個人的には大好きな一曲。

特に出だしの、

 

Too close to paradise and too close to hell
And sometimes the difference is too hard to tell

が気に入ってます。

 


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主人公はイタリア系の3兄弟。

時代は第二次世界大戦直後。

 

将来を嘱望されてたのに戦争で負傷し、人生を捨てたように生きている長男。

いつも金儲けのことを考えてる、お調子者の次男。

ちょっと頭が弱いけど、腕っぷしが強くて、兄弟思いの真面目な三男。

 

スタローン演じるのは、この映画の狂言回しである次男です。

 

ちなみに長男を演じるのはアーマンド・アサンテ

ちょい悪い役も、ちょいいい役も出来る俳優ですが、主演を張れるレベルの人ではありません。実際に主演作は「探偵マイク・ハマー / 俺が掟だ!」(1982)ぐらいでしょうか。

「プライベート・ベンジャミン」(1980)の主人公を裏切る恋人役が印象深いです。

 

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閑話休題

 

前半はシルベスター・スタローンの次男が、あの手この手で調子よく金儲けに奔走する姿が描かれます。怪力の弟を利用して金儲けをしたものの、世捨て人の長男から「弟を食い物にするな。真面目になれ」と説教をされるダメ人間。

 

この時点でスタローンにしては珍しい、軽薄な男を演じています。

やることやなすこと、目の前のカネばかり。

他人を利用してでも人生を楽しく生きなきゃ、ってキャラが意外に合ってます。

 

しかし後半から話は一転。

 

田舎で恋人とボートハウスで暮らす夢を持つ三男は、腕力を生かして、何キロもあるデカい氷を各家庭に運ぶ仕事をしてます。

大したカネにはならないんですが、ボートハウスを買うために小銭を貯めている真面目な好青年。

 

この時代、電気冷蔵庫はまだ普及していなくて、彼らが住むイタリア人街では、毎日大きな氷を入れて物を冷やす冷蔵庫が主流。

彼はエレベーターのないアパートの階段を、重い氷を担いで上がってるんです。

 

ある日、一番上の階まで持って行くと「電気冷蔵庫を買ったから、氷はもういらないわ」と言われ、重い氷を担いだまま階段を下りていく三男。

 

その途中で、氷を階段に投げ出します。

 

砕けながら階段を滑り落ちていく氷の塊。

 

電気冷蔵庫が普及して、これから氷を運ぶ仕事がなくなっていくのを彼が悟ったことを暗示しているんですが、この表現が本当に素晴らしい。

彼のやるせなさが見事に描かれてます。

このシーンだけでも見る価値はあります。

 

そんな時、スタローンがナイトクラブ「パラダイス・アレイ」ででやっている賭けプロレスの存在を知り、弟にチャンピオンに挑戦させます。

三男は見事に勝利し、賞金を手にしたことで、スタローンは本格的に賭けプロレスをやらないかと弟に話を持ちかけます。

 

長男は反対しますが、スタローンと三男に説得され、三男に無理なことをさせないために自分がマネージャーをやることを条件に承諾。

スタローンは渋々、トレーナーを担当することになります。

 

ここから見事なドラマの転換をしていきます。

 

三男は連戦連勝。

最初は慎重だった長男は、どんどん羽振りが良くなり、三男をけしかけるようになります。やがてカネ優先になり、せっかくヨリを戻した恋人とも破綻。

 

反対にスタローンは、三男に負かされたチャンピオンがボロボロになっていることを知り、自分がやっていることに疑問を抱きます。

スタローンは今まで冷たくしていた、彼に好意を寄せる女性の愛を受け入れ、カネではなく幸せを実感します。

 

ついにスタローンは、カネ儲けに邁進する長男を諫め、三男にレスリングを辞めさせようとします。

 

この長男とスタローンのキャラが入れ替わっていく展開はお見事。

 

クリスマスの試合は、制限なしのデスマッチでは、血みどろになる三男。

反対していたスタローンも応援し、長男もカネのためではなく三男を応援。最後に勝利した三男に二人が抱きつき、兄弟の和が戻ったところで映画は終わります。

 

最後がややロッキーっちくですが、見終わって良かった~と思う映画でした。

 

小作品ながら、とにかく脚本が巧み。

兄弟それぞれの葛藤と心の揺れが上手に描けていました。

派手な盛り上がりはないし、大作ではありませんが、時間があれば、ちょっと見て欲しい一品です。

 

この映画を見れば、「ロッキー」(1976)の脚本(スタローン)がフロックではないことが分かります。

 

またスタローンの演技は、軽薄なお調子者ら、人に対して優しくなっていくキャラへの変化を自然に演じていて、まさにはまり役。

もしこの映画が成功していたら、彼は文芸ドラマの映画作家や、アカデミー主演賞を撮るような俳優になっていたかもしれません。

 

アクションスターの彼を十分楽しんだ世代ではあるんですが、やっぱり「もしも」を考えてしまうと、ちょっぴり残念です。

 

この映画はPRIME VIDEO、Nextflix、U-Nextのサブスクにはなく、DVDレンタルもなかったので、DVDを購入しちゃいました。

 

【ゴールド(1974)】ロジャー・ムーアが007に見える”パニック映画”

ロジャー・ムーアって007以外の印象って薄いんですが、結構いろんな映画に出てます。

そんな一本が「ゴールド」(1974製作/1975日本公開)

「007/死ぬのは奴らだ」(1973)の翌年に出演した映画です。

 

日本では「パニック映画」っていうカテゴリーで宣伝されてた気がするんですが、実際はどうだったんでしょうか。

48年ぶりに見直してみます!

 

(あらすじ)

南アフリカにある金鉱の落盤事故で、ベテランの現場総監督が死亡。この金鉱を水没させ、金価格高騰を狙う国際シンジケートと手を組んでる社長は、陰謀に気づかれないように若手の現場監督を総監督に抜擢する。それとは知らず彼は、社長夫人を口説き落とすが、その間にも陰謀は着々と進んでいた・・・

 


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この映画は小学生の時に、親に連れられて見に行きました。

見たのは今は亡き岐阜の衆楽館だったと思います。

 

覚えてるのはクライマックスでロジャー・ムーアが両手に大ケガをするシーンぐらい。

話なんてさっぱり覚えてませんでした。

 

日本ではパニック映画として宣伝されてたようですが、サスペンス映画でした。

パニック映画と言えば、映画の早い段階で起きた災害から如何に脱出するか?ですよね。

この映画は冒頭とクライマックスに鉱山事故がありますが、話のほとんどが国際シンジケートの陰謀と、それに利用される若き現場責任者と社長夫人のラブロマンス。

 

これは当時、1972年の「ポセイドン・アドベンチャー」から始まったパニック映画ブームの真っ盛り(同じ1975年には「タワーリングインフェルノ」も日本公開されています)だったので、パニック映画的な売りをしたんでしょうねー。

ポスターもいきなりクライマックスの鉱山での浸水シーンのイラストだし(笑)。

これ、やっぱりパニック映画に見えますよね?

 

ゴールド パンフレット表紙

 

サスペンス映画としては、良い意味でも悪い意味でもオーソドックス。

まさに70年代の娯楽作品です。

 

まず、この粗筋を見て、「これはきっとロジャー・ムーアが陰謀を暴いていく映画だ!」って思いますよね。

 

絶対そう思いますよね?

 

彼は陰謀の黒幕に、金鉱が水没した時に罪を擦り付けるために、現場の総監督に抜擢されます。

総監督として仕事をしているうちに陰謀に気づいて反撃!だと思うじゃないですか。

 

それにこの映画のロジャー・ムーア、セリフ、立ち居振る舞いがまさに007。

ジェームス・ボンドに見えるんですよ。

 

でもね、ここではジェームス・ボンドではなくて、女性大好きな鉱山の現場監督。

 

だから陰謀に全然気が付かないんです。

全く007じゃないんですね。

 

じゃ、陰謀が進む間、何をしてたのか。

 

仕事のシーンはほとんどなく、ずーっと黒幕の社長夫人とイチャイチャしてるんですよ。

そこは007っぽいですが。

 

本当、彼の関係ないところでどんどん陰謀が進んでいくんです。

 

しかし最後の鉱山の浸水では、身を挺して浸水を止めます。

これが結果的に陰謀を防ぐことになるんですが、ロジャー・ムーアは総監督として頑張って浸水を止めただけで、陰謀があったことは1ミリも分かっていません

そしてそのまま映画は終了。

陰謀に気づかれないように彼を抜擢した黒幕の思惑は正しかったということですね。(笑)

 

ちなみにアクションシーンも冒頭の落盤事故と、クライマックスの浸水事故のみ。

話の途中に派手なシーンはありません。

アメリカ映画だったら、途中でどっかんどっかんと派手なアクションがあったんでしょうけど、こういうところがイギリス映画たる所以なのかも。

 

問題は陰謀話とロジャー・ムーアのイチャイチャ話の二本立てみたいなってたこと。

こういう統一感のなさって70年代娯楽作品にはよくあるパターンですね。

 

そんなちょっと地味目な内容を、ピーター・ハント監督はそつなく、手堅く、そして真面目に作ってるので、新鮮味はないですが、ハラハラするところはちゃんとハラハラするし、クライマックスの爆破作業も盛り上がります。

奇をてらわずに作ったから、一定水準のオーソドックスな娯楽作になったんでしょう。

 

監督のピーター・ハントは職人系の監督で、ロジャー・ムーア主演じゃないですが、「女王陛下の007」(1969)も監督してます。また編集として007シリーズを5本担当してます。

だからロジャー・ムーアが007に見えるような演出だったのかもしれません。

 

ロジャー・ムーアの上司である社長の奥さんを演じるのは、スザンナ・ヨーク

カテゴリー的には最盛期のメグ・ライアンに近い可愛さがある人なんですが、アップになる度に、目元の皺が気になっちゃうんです。

当時33歳なんで、若作りじゃないだけにちょっと可愛そう。

 

主題歌はトム・ジョーンズっぽい、粘り気のある典型的な70年代の曲。

なかなか印象的な良い曲です。

確かアナログLPでサントラを持ってたような気がします。


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唄ってるのはジミー・ヘルムスというアメリカの歌手です。

僕は知らなかったんですが、ソウルシンガーとしてそこそこ名の通った人なんですね。

 

今回はPRIME VIDEOのサブスクで見ました。

日本語字幕のあるDVDとBlu-rayは現在、入手困難なようです。

【サンゲリア】イタリア製のカルトゾンビ映画と言われてるが・・・

「ゾンビ」(1979)の世界的ヒットで、ゾンビブームが起こりました。

当然、柳の下の二匹目のドジョウを狙った作品も多かったわけで、その中の一本がサンゲリア(1979製作/1980日本公開)。

 

製作はイタリア。

監督はホラーマニアの支持が熱いB級の巨匠ルチオ・フルチ

明らかに胡散臭い映画ですが、カルト的な人気はあるようです。

 

(あらすじ)

ニューヨークに無人のクルーザーが流れ着き、中を調べた警官が腐乱死体に襲われた。クルーザーの持ち主の娘は父を探しに、新聞記者と一緒に南の島に向かった。そこにはゾンビを研究する医師が住んでいた・・・

 

( ↓ 海外版予告編。結構グロいシーンがあるので閲覧注意です)


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僕が子供の頃、TVで時々、「ホラー映画特集」っていうのを放送してたんですよ。

1時間半~2時間枠で、過去のホラー映画から怖そうなシーンを寄せ集めて、ゲストがそれを紹介する番組。

放送タイミングによっては、最後の方でMCが

 

「来週、いよいよ、今までご紹介した作品を上回るホラー映画が公開されます。視聴者の皆さんには今回特別に、その映画の一部をお見せしちゃいます!」

 

って、新作ホラー映画のタイアップになってたりしました。

 

ちなみに、よく取り上げられてたのが「サスペリア」(1977)の天井から女の人が吊るされるシーン、オーメン(1976)の板ガラスで首が切断されるシーン、「ソンビ」のエレベーターが開いて、ゾンビが中になだれ込んでくるシーンでしたね。

 

初めて「サンゲリア」を見たのは、そういう特番の中でした。

そこで出てきたのは、ゾンビに髪の毛を引っ張られる女性の眼が尖った木片に引き寄せられるシーン。

目に突き刺さる直前で、場面がスタジオに切り替わってゲストが「キャー!」って叫んでるんです。

 

このシーン、マジで痛そう。

トラウマレベルです。

(リンクを貼った予告編にも出てきます。怖いものみたさの人はどうぞ)

 

そんな思い出のある「サンゲリア」ですが、封切当時、劇場では見ていません。

初めて全編見たのは20代の頃。

TVの深夜枠で、たまたま見たんじゃないかと思います。

 

しかし覚えていることと言えば、冒頭でゾンビを乗せたヨットが都会にたどり着くシーン、墓場からスペイン人の死体が蘇るシーン、例の残酷シーンぐらい。

(本編ではぶっすり突き刺さるところまでやります)

 

とにかく超B級だなぁ、という印象のみ。

話なんて全く覚えてません。

 

そして今回見直しても、残念ながらその印象は全く変わりませんでした。

 

予算の関係もあるんでしょうが、メインの舞台を南の小さな島にしたのは、閉鎖空間っぽくて、設定としては悪くないです。

ただし、現代のゾンビ映画のように「自分たちが日常を過ごしている街に、ゾンビが徘徊する」というリアルな怖さに比べると、レベルが一つ落ちます。

 

話の展開として、定期的に主人公たちがピンチになるんで、飽きることはありません。

この辺りはさすがルチオ・フルチ監督、B級映画の見せ方、演出の仕方が分かってます。

 

が、この映画の本質は「ゾンビブームが冷めないうちに、低予算でちゃちゃっとゾンビ映画作って儲けましょうよ」っていうの不純な動機。

そのため話や出来、俳優は二の次だったんじゃなかろうかと思います。

 

島で行方不明になった富豪の娘と、彼女に同行する新聞記者が主人公なんですが、この新聞記者が見た目も含めて、全く主人公っぽくない。

主人公をカッコいいヒーローにしろとは言いませんが、やっぱりホラー映画には、話の軸となるリーダー的な人物が必要です。

話を通して、主人公のグループがゾンビに追われて、行き当たりばったりにうおさおするだけで、見ている方は共感しません。

 

そして、この映画の肝のゾンビなんですが、とにかく設定が雑

 

ゾンビの怖さって、無気力に人肉を食べたいという本能だけで動いているところ。

いつでも生気がない虚ろな目がポイント。

ロメロの「ゾンビ」やゲームの「バイオハザード」の第一作目で確立されたスタイル。

昔のモンスターにあった「人を襲う怪物だぜー。怖いだろう」というのがなく、視線を合わさなければ、近寄ってもこないという不気味さが、余計に怖さを引き立ててました。

 

しかしこの映画のゾンビは最初のうちは、今風だったんですが、途中から露骨に近寄ってくる等、明確な殺意を持ったゾンビが中ボスとして登場。

海の中にいる腐乱死体ゾンビなんて、襲ってくるときの目が眼光鋭くてマジなんですよ。明らかに殺意を持った目(笑)

 

もうちょっとロメロの「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」(1968)や「ゾンビ」を研究して欲しかったです。

 

更に終盤には300年ぐらい前のスペイン兵(南米を征服したスペイン人ですね)のミイラが墓から蘇ってくるんですよ。

 

それって動けるんですか?

スカスカのミイラですよね?

 

もうゾンビじゃなくて、妖怪です。

 

まぁ、ゾンビが発生した原因が、軍の実験や新種の細菌ではなく、ブードゥー教なんで、ミイラが蘇るっていうのも、アリと言えばアリなんですけど、ブードゥー教でゾンビが蘇るなんて話は、今ならホラーよりも、ファンタジーの分類ですよ。「ハリポタ」や「ロード・オブ・ザ・リング」の遠い親戚になっちゃいますよね。

 

ラストはニューヨークがゾンビで溢れているシーン。

これはスケール感もあるし、終末感もあります。

 

お!、と思ったら、画面の真ん中はゾンビの群れが歩いてますが、両端の道は車が普通の流れてます(笑)

通行止めした仮装行列みたいな感じで、苦笑いでした。

やっぱり予算なかったのね。

(これも予告編で確認出来ます)

 

さて、映画全体の感想ですが、ノリは1960-70年代のB級ホラー映画。

B級巨匠のルチオ・フルチが監督をしているだけあって、その手の映画が好きな人なら、見ている間は飽きないでしょう。

ただ話は序盤の無人のヨットがニューヨークにたどり着いたところは、不気味なホラー度満点だったんですが、島に行ってからは、ただのサバイバル映画。伏線とか、どんでん返しはなく、ひたすら逃げてるだけです。

 

見終わって印象に残ったのは、最初に書いた3つのシーンぐらいで、あとはすーっと頭の中から消えてしまうレベル。

 

今見ると、「痛いそうだなぁ」と思うシーンはあっても、「怖い」と思うシーンはありません。

 

結局、若かりし頃に深夜で見た時の感想はとても正しかったです。

 

この映画の原題は「ZOMBIE 2

(文献によっては「ZONBIES」となっていますが、今回見たバージョンは「ZONBIE 2」でした)

 

明らかにロメロの「ゾンビ」の続編と誤認させることを狙ってます。

(ロメロの「ゾンビ」の原題は「Dawn Of The Dead」ですが、日本など一部地域では「Zonbie」のタイトルで公開されてます)

 

勿論、日本のタイトル「サンゲリア」は、日本独自のタイトル。

名付けたのは配給会社の東宝東和。

Wikipediaによればイタリア語の血を意味する「Sangue」から作った造語だとか。

確かに意味不明のおどろおどろしさがあります。

 

東宝東和と言えば、このブログでも「メガフォース」(1982)や「バーニング」(1981)で取り上げている昭和の映画誇大広告王

バンボロ(「バーニング」)やジョギリ(「サランドラ」(1977))といった俺ジナルなネーミングは、この会社の真骨頂です。

 

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これ、更に驚愕の話があるんです。

世界最大の映画のデータベースIMDb(英語)では、この映画のタイトルがこう紹介されてます。

 

「Sanguelia」(original Title "Zombie 2")

 

Sanguelia (1979) - IMDb

 

遂に東宝東和のオリジナルタイトルが世界標準になったようです!

すごいぞ、東宝東和。

 

テーマ曲は不気味で、意外にカッコいいです。


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Prime Video、Netflix、U-Nextのサブスクにはなく、DVDレンタル屋にもなかったので、今回もTSUTAYAの宅配サービスを利用しました。

 

Blu-rayは手に入るようですが、マニア向け販売なので、いい値段です。

 

【さよならジュピター】心意気は買うが、謎のゆるい展開が映画をダメに

10代に「スターウォーズ」(1977)から始まるSFブームの洗礼を受けた世代にとって、ちょっと甘酸っぱい思い出がある映画。

それがさよならジュピター1984

 

日本初の本格ハードSFという謳い文句で、製作段階から日本SF界のお歴々が名を連ねていました。

 

原作&脚本&政策と旗振りをしたのは日本のハードSFの雄、小松左京先生。

 

特撮もモーションコントロールカメラの導入等、欧米に引けをとらないビジュアルが期待されました。

 

勿論、公開してすぐに劇場に足を運んだのは言うまでもありません・・・

 

(あらすじ)

人類はエネルギー危機を解消するため、木星を第二の太陽とする「木星太陽化計画」を進めていた。同じ頃、火星の氷に下から謎の地上絵が発見され、その鍵は木星の大気の中にあることが分かる。木星太陽化に反対する過激な環境保護団体「ジュピター教団」は、木星の衛星軌道を回る「木星太陽化計画」の最前線基地・ミネルヴァに破壊工作グループを送り込むが、失敗する。

その後、小型のブラックホールが太陽へ衝突するコースで接近しているこが分かり、急遽、人類滅亡を回避するため木星太陽化計画を木星爆破計画に変更。爆発の力でブラックホールの進路を変えようとするのだが・・・


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さよならジュピター パンフレット表紙

 

封切で見に行った映画館は岐阜のロイヤル劇場だったと思います。

当時の劇場が閉館・建て替えされる中で、今でも名画上映館として現役です。

 

ロイヤル劇場入り口(2021)

 

さよならジュピター」は併映なしの単独上映。

これは地元の興行会社が「大作」扱いをしていることの現れです。

 

そして、期待を胸に劇場に入りました。

 

そして、出来た時は・・・

 

モヤモヤ、ガッカリ。

 

当時は徹頭徹尾のSF小僧だった僕。

事前情報で期待値はMAX。

 

が、スクリーンで見たものは、期待していたものとは程遠い作品でした。

 

それから36年間、個人封印。

っていうか、1ミリも見直す気になりませんでした

 

しかし、ここは昭和の妖しい映画伝道師として避けては通れないので、封印を解きました。

 

でm今回見直した感想は、

 

「モヤモヤ、ガッカリ度」は昔ほどじゃないけど、やっぱり「モヤモヤ、ガッカリ」

 

ってところです。

 

「あらすじ」を見ての通り、主軸は木星爆破。

そこに「木星太陽化」「謎の宇宙文明」「飛来する小型ブラックホール」とSFファンがワクワクするネタがあり、更には過激な環境保護団体「ジュピター教団」や主人公と恋人の関係が絡んできます。

 

正直に書きます。

 

テンコ盛り過ぎて、どれも深堀が出来てません。

 

特に「謎の宇宙文明」については、相当に消化不良。

2001年宇宙の旅」(1968)の人類の進化を促すモノリス的な存在だと思うんですが、遂に何のか良く分からず。

木星が爆発する直前に、木星の大気の中を泳ぐ巨大なクジラ(?)「ジュピターゴースト」って何だったんでしょうか?

2001年宇宙の旅」のモノリスより理解不可能です。

 

何よりもイメージが悪いのは、木星爆破計画の責任者である主人公と、環境団体に入ってテロ活動を行う元恋人の関係。

 

環境団体のテロ集団がミネルヴァ基地に潜入するも、すぐに全員捕まるんですよ。

主人公が尋問に行くと、その中に元恋人を発見。

「何をしてるんだ!」

と彼女の手を引っ張ってどこに行くかと思ったら、自分の部屋に連れ込んでイチャイチャ

 

え?

 

え?

 

え?

 

もうこの展開で目が点になりました。

 

相手はテロリストやぞ・・・

 

この時点でさよならジュピター」がハードSFという自分の考えは間違っていたと悟りました。

 

そしてこのイチャイチャ展開、一事が万事でした。

 

それ以降の人間ドラマも推して知るべし。

 

登場人物はどれも深みなし。

教科書みたいな、ステレオタイプのキャラのオンパレード。

そんな彼らのドラマは全て古臭いステレオタイプの展開。

死亡フラグもめっちゃ分かり易い(笑)

果てには(日本映画が好きな)変な精神論まで出てくる始末。

 

これをSFと呼んでいいのか?とさえ思いました。

 

そしてほとんどの人間ドラマが、木星爆破にあまり絡んでない、どうでもいいような話話ばかり。

地球レベルの危機なのに、画面からが緊迫感が全く伝わってきません。

 

ハードでリアルなのは設定だけで、ドラマとしては全然ハードでもリアルでもありません。

 

話の深みや構成力は昭和40年代のB級特撮映画のレベル。

この映画以前の日本特撮映画には「海底軍艦」(1963)、「マタンゴ」(1963)、「世界大戦争」(1961)等、上質なドラマを持った作品がいっぱいあります。

だから日本映画だから仕方ない、ではないんです。

 

SF映画で個人の恋愛を描くのが悪いのではありません。

 

同じ小松左京先生原作&東宝製作の「日本沈没」(1973)は「日本が沈没する、国民をどうするか」という骨太な政治ドラマと、主人公と恋人を軸とした未曾有湯の危機の中で悩む市井の人々のドラマが平行して描かれ、その対比が素晴らしかったです。

 

脚本のクォリティーは、明らかに「日本沈没」から退化してました。

 

さよならジュピター」には、企画段階から当時の錚々たるSF作家やSF関係者がアイディア出しに協力してるんですよ。

それでこれはないでしょう。

 

あと昔から、このイチャイチャシーンでもう一つ気になったことがあるんです。

 

ミネルヴァ基地に潜入するテロ集団は、元軍人みたいなプロ集団じゃなくて、すぶのド素人の民間人集団

 

そんな素人が、木星の世界的プロジェクトの最前線基地に行く宇宙船に、簡単にホイホイと武器を持って乗り込むことが出来るのっておかしくないですか?

 

ちなみにクライマックスでも、もう一度、素人テロリストが基地に侵入するんですが、「冒頭で侵入されてるのに、また警備ユルユル?!」と突っ込んでしまいました。

 

ストーリー上、テロリストが侵入するっていうのは必要だったんでしょうが、ここまでリアリティのカケラもないのはどうなんでしょう?

せめて木星太陽化プロジェクト内部に隠れ信者がいて、彼が手引きするぐらいのリアリティを持たせるべきでした。

 

反対に公開当時は「何でハードSFに、こんなカルト集団が出てくるの? リアリティないなー」とガッカリしたのに、今回見直して意外にアリかも、と思ったのが環境団体の存在。

 

教祖は頭の中お花畑みたいなオッサンで、海辺でギター片手に愛の歌を唄ってるだけで、全然過激じゃない。

テロを繰り返しているのは、教祖に気に入られたい取り巻き連中。

 

だが、しかし!

 

あれから40年近くたった今見ると、これリアルなんですよね。

 

国際レベルで発言力と支持が拡大している環境団体。

人間よりも環境保護優先を強行する主張。

教祖の周りに、勝手に意を汲んでテロに走る幹部信者。

 

現実に思い当たるフシがありません?

 

小松左京先生、とっても先見の明があったってことでしょうか。

 

主演の三浦友和さんの演技は、今見ると悪くないです。

しかし他の出演者外国人俳優を含めイマサン。

セリフをしゃべってるだけみたいな人や、役柄に対して「あるある」みたいなお決まりの演技しか出来ない人が多すぎます。

はっきり言えば、魅力的なキャラを演じられてる人が皆無ってこと。

ほとんどの登場人物が見終わった後に、忘れられてしまうレベル。

 

森繁久彌の地球連邦大統領なんて、ネームバリューだけの出演がミエミエ。

地球の危機なのに、緊迫感ゼロ。

こういうパニック映画の大物役って丹波哲郎さんのようなハッタリが必要なのに・・・

 

そして、この映画で語らなければいけないのが前宣伝から力がこもってた特撮

欧米に負けない特撮レベルを目指した、ということでかなり期待していたのに、劇場で見た時はガッカリしたんです。

 

しかし今回、印象が変わりました。

 

確かに当時の欧米SFより劣っています。

 

でも、アングルや、見せ方が明らかに昭和の特撮から脱却しようという工夫がいたるところにありました。

 

「巨大なものを、ちゃんと巨大に見せたい」

 

そんな気持ちがヒシヒシと伝わってきます。

 

勿論、残念なシーンや昭和の特撮から脱却出来ていないシーンもあり、全体的には道半ばというところです。

でもこの映画の(欧米SFの絵作りに)「追いつけ、追い越せ」精神が平成ガメラシリーズ、そして「シン・ゴジラ」(2016)、「シン・ウルトラマン」(2022)に繋がっていったに違いありません。

 

率直に特撮の出来としては65点ですが、価値のある65点だと僕は思います。

 

ガンヘッド」(1989)の特撮とは全然違います。

 

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ちなみにメカデザインはスタジオぬえ宮武一貴さん。

さすがハードSFデザインの巨匠だけあって、改めて見てもカッコイイですね。

設定資料集が欲しいです。

(そんな本ないんですよね~)

 

結論として、設定は悪くないし、特撮は欧米に負けないSFを作ろうという意気込みをヒシヒシと感じました。

 

ただ作る側が設定&ビジュアルを充実させることに満足してしまって、そこで力尽きたのか、又は充実した設定&ビジュアルさえあれば映画化は成功したも同然という過信があったんじゃないでしょーかねー。(遠い目)

 

敗因は、リアルとリアリティを取り違えていること。

ハードSF映画に必要なのはリアルではなく、リアリティ。

観客が「本物っぽい」(リアリティ)を感じることが大切。

例えリアル(事実)でも、観客がリアリティを感じなければ意味ないんです。

(ヒットした医療ドラマが医療関係者から見ると嘘や間違いだらけ、っていうのと似てるかもしれませんね)

 

設定にはリアリティがあったのですが、ドラマの部分にもリアリティがなさ過ぎました。(主人公と恋人の関係もリアリティなし)

 

そこは「日本沈没」や「復活の日」(1980)を見習って欲しかったです。

あ、「復活の日」も小松左京先生が原作でした。

 

劇場で見る前の大きな期待と、見終わった時のほろ苦い気持ちが忘れられません。

さよならジュピター」は、当時のSF小僧にとってちょっと甘酸っぱい思い出なんじゃないでしょうか。

 

最後にエンディングにユーミンの主題歌「VOYAGER」が流れます。

いい曲ですし、歌詞も「さよならジュピター」を意識しているんじゃないんでしょうか。

ただ、ハードSFを目指した映画には、曲調がちょっとミスマッチな気がします。

 

VOYAGER ~ 日付のない墓標

VOYAGER ~ 日付のない墓標

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この映画はPrime VideoとNetflixのサブスクにはありませんでしたが、U-Nextにはあったので、そちらで鑑賞しました。

また新品のDVDは手に入るようです。

 

 

【ミッドナイトクロス】ジョン・トラボルタ低迷期の隠れた名作

ジョン・トラボルタって「サタデーナイト・フィーバー」(1977)と「グリース」(1978)で一躍注目されたものの、その後は急失速。

いろいろな映画にトライしたものの、タランティーノ監督の「パルプ・フィクション」(1994)までパっとしませんでした。

でも16年間の低迷期の作品の中にも良い作品はあります。

 

その一本がミッドナイトクロス(1981)。

 

封切時に映画館で見て、とても面白かった印象があります。

今見たらどうでしょうか?

 

(あらすじ)

主人公はしがないB級映画の音響効果マン。たまたま野外録音をしていた時に、目の前で車が川に転落。中にいた女性は助けたものの、同乗者は死亡。病院で謎の人物から、同乗者は政治家であり、この件は忘れるように言われる。

腑に落ちない彼がテープを再生すると、そこには銃声が録音されていた。また死んだ政治家は大統領の有力候補だと知り、彼は車から助け出した娼婦と一緒に真相を探っていく・・・


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監督はブライアン・デ・パルマ

この直前には「フューリー」(1978)、「殺しのドレス」(1980)、この直後に「スカーフェイス」(1983)を作り上げ、まさに上り調子の頃です。

 

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まさにこの映画は「低迷期のトラボルタの映画」ではなく、「上昇期のデ・パルマの映画」

良質な映画になったのは必然ですね。

 

話はシンプルな巻き込まれ型。

「音」という証拠を持った主人公が、暗殺を隠蔽したい組織から追われるという話。

テンポよくハラハラドキドキさせてくれるし、飽きることはありません。

 

そのシンプルな話をデ・パルマは比較的正統派の演出で盛り上げます。スリリングなシーンを、ちゃんとスリリングに演出が出来る技量はさすが。

 

まず冒頭のB級ホラー映画を撮影現場のシーン。

殺人鬼が女性を襲う場面の撮影ですが、殺人鬼の視点でカメラが女子寮に入っていくんですが、これがとってもヒッチコックっぽい。

 

証拠の「音」を、別人が偶然撮影した車が川に落ちる連続写真と組み合わせ、パラパラ漫画みたいに発砲の瞬間を映画のように再現するシーンは、今見ても面白いですし、ヒロインのナンシー・アレンが殺し屋(ジョン・リスゴウ)に地下鉄で追われるシーンのアップテンポの演出が良かったですね。

 

そして何よりもクライマックスで、アメリカ国旗と何発もの花火を背景に、トラボルタがナンシー・アレンを抱きしめるところを、カメラを動かしながらワンショットで捉えたシーンは美しく、印象的でした。

 

クライマックスからラストまでの一連の展開は本当に秀逸です。

特にラストシーンは、サスペンス映画の中で僕的ベスト1です。(後述)

ただ見終わった後に無力感が残るので要注意です。

 

ミッドナイトクロス パンフレット表紙

本当にブライアン・デ・パルマがノリに乗ってる時期だったと思います。

ノッっている時期って、感覚で撮影しても上手くいくんでしょうね。

それぐらい「残念」と思えるようなシーンは皆無でした。

 

そしてこの映画にピッタリの演技を見せたジョン・トラボルタ

 

主人公は「昔は警察の盗聴班で働いていたんだけど、今はしがない音響効果マン」。

いつも露骨に感情を出すことなく、どこか覚めていているが、行動力も切れ味もあるキャラ。

 

この役は彼以外想像出来ないし、彼じゃなかったらここまで面白くならなかったハズ

 

盗聴班の時に、盗聴器を仕込んだ潜入捜査官が自分のミスで、相手に素性がバレて殺された、それが原因で警察を辞めた、っていうトラウマを淡々と話す姿なんかトラボルタの真骨頂ですね。

 

またどこか淡々としていた彼がクライマックスで感情を露呈し、そしてまたラストシーンに向かって淡々となっていく、そんな流れを自然体で演技する上手さ。

 

既に「パルプ・フィクション」以降の映画で見られる、演技派のジョン・トラボルタがいるんですよ。

 

だからこの時期にもっと作品に恵まれなかったのは、やはり「サタデーナイトフィーバー」(1977)と「グリース」(1978)の連続ヒットが大き過ぎて、「踊るチャラい人」っていうイメージが払しょくできなくて、本当に彼に合った映画のオファーがなかったことなんでしょうねー。

(そう言えばケヴィン・ベーコンアメリカでは未だに「フットルース」(1984)の人って見られることがあるようですね)

 

更にサタデーナイト・フィーバー」の続編「ステイン・アライブ」(1983)が酷評されたことも、長い低迷期の一因かも。

この映画のジョン・トラボルタチャラいキャラを残したまま、監督のシルベスター・スタローンの命令で筋肉モリモリになったのがイメージ的にイタすぎる。

当時の宣伝写真を見た僕も「おいおい、これはないよ」って思いました。

まぁ、そもそもスタローンに音楽映画を監督させるっていう発想がデンジャラス。

 


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結局、この時期、本当の彼の魅力に気づいていたのはブライアン・デ・パルマクエンティン・タランティーノ以外いなかったってことなんでしょう。

 

他の監督や製作者が偏見を持たずにトラボルタを見てたら、もっと早くに彼の面白い映画がたくさん見れたんじゃないかと思うと残念でなりません。

 

トラボルタの相棒となる娼婦を演じるのはナンシー・アレン

僕はナンシー・アレンこそ、世界で一番可愛い娼婦を演じられる女優だと思ってます。

 

超絶お気に入り♪

 

でも、この映画のナンシー・アレンは「殺しのドレス」や「フィラデルフィア・エクスペリメント」(1984)に比べると、ただ可愛いだけの側面が強くて、相手を支える強さというもう一つの魅力が引き出せてないのが残念。

 

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ブライアン・デ・パルマナンシー・アレンは一時結婚してました。

殺しのドレス」は結婚の翌年なのでラブラブだったんでしょうが、片や「ミッドナイトクロス」の2年後には離婚してるんです。

そういうところにナンシー・アレンの演出の差が出ちゃってるんですかね。

 

小ネタなんですがジョン・トラボルタは「サタデーナイト・フィーバー」でブレイクする前にブライアン・デ・パルマ監督の「キャリー」(1976)で、ナンシー・アレンと主人公をイジメるカップルとして共演しています。

(古くから知ってるから、ブライアン・デ・パルマはトラボルタの本当の魅力に気づいてたのかも)

 

偏執狂の殺し屋を演じてるのは、ブレイクする前のジョン・リスゴウ。

この人は元々精神不安定な役を得意としてるんで、違和感は全くなしです。

 

さて、ここで僕的に「どうしても語りたい」ラストシーン。

 

身を案じて盗聴器を持たせたものの、その甲斐なくヒロインは殺されてしまいます。

主人公は警察時代と同じく、またもや守ることは出来ませんでした。

そして巨悪を暴くことも敵いませんでした。

 

彼の手元に残ったのは、最後に盗聴器を通して録音された彼女の声。

雪の降る公園で終わったら旅行に行こうとか、たわいない話をしている彼女のテープを聞く主人公。

 

そのテープの最後には、主人公に助けを求める彼女の叫び声が入ってます。

 

冒頭の撮影現場のシーンで、監督が殺される役の女優の叫び声にNGを出してます。

他の女優を試してもNG。監督は音響効果担当のトラボルタに「何とかしてくれ」っ頼んでました。

 

彼はそのシーンに、ナンシー・アレンの叫び声を使います。

 

ラストに試写会で叫び声を聞いた監督が「これ、いいね!」と言う横で、トラボルタがタバコを吸いながら、やや涙目で「いい叫び声だ」と呟くシーンが物悲しくて最高です。

 

この伏線回収は賛否両論あると思いますが、僕は大好きです

 

そして何といっても、このラストシーンを彩るのは、ピノ・ドナジオの物悲しくも美し旋律。

これも僕的にはサントラのトップ3に入る名曲です。

何故、CDが廃盤なのか理解出来ません。

 

Blow Out Theme

Blow Out Theme

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劇場公開時に「面白かった」という当時の感想に間違いはありませんでした。

超大作でもないし、超完成度が高いわけでもありません。

でも僕はこの映画が本当に好きなんだなぁ、と再認識しました。

 

この映画の元ネタはミケランジェロ・アントニオーニ監督の「欲望」(1967)。

これは偶然撮影した写真を引き伸ばすと、銃口が映っていた、という話。

原題は「BLOW UP」(引き伸ばし)。

で、「ミッドナイトクロス」の原題は「BLOW OUT」(吹き消す)。

 

「欲望」は未見なので、これも近いうちに見ておきたいです。

 

初公開時に見たのは岐阜の自由劇場という小さな映画館で、同時上映は「さよならジョージア」(1982)という青春映画でした。

「さよならジョージア」は当時、日本でも人気のあったクリスティ・マクニコルという女優が主演の青春映画。

スターウォーズ」シリーズのマーク・ハミルが彼女を想う警官役で共演してます。

印象に残ってるのは、マーク・ハミルが道の真ん中で警官の制服を脱ぎ捨てて、下着だけ(それとも全裸だった?)で彼女の車に乗り込み、二人で去っていくラストシーン。

ってか、そのシーンしか覚えてないんですけどね。

 

「さよならジョージア」のDVDは見たありません。

そもそもマイナー過ぎて、ソフト化されてないんじゃないでしょうか。

 

ミッドナイトクロス」の方もPRIME VIDEO、Nextflix、U-Nextのサブスクにもなかったですし、DVDレンタル屋にもなかったので、宅配レンタルを利用しました。

 

新品のDVDはプレミアムがついているようです・・・

 

【ムーの旅】諏訪探索

えー、ムーの旅、第3弾になります。

 

今回は諏訪。

目的は勿論、諏訪大社

なんてったって、日本三大奇祭に数えられる御柱祭の舞台ですから。

 

御柱祭は7年に1度。そして今年はその年なんです。

かの有名な柱(大木)を山から卸す「木落し」は終わってますが、御柱の年なら諏訪大社に行っておくべきでしょう。

 

普通に行ってもつまらないので、横浜からローカル列車だけを使って、上諏訪駅を目指します。

横浜を8時に出て、上諏訪駅に12時に到着。

 

諏訪大社は4つの社から構成されてます。

 

1. 諏訪大社 上社 前宮(上諏訪

2. 諏訪大社 上社 本宮(上諏訪

3. 諏訪大社 下社 春宮(下諏訪)

4. 諏訪大社 下社 秋宮(下諏訪)


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下諏訪の秋宮 写真にある狛犬は青銅製としては日本一だとか。

 

この4つの社はそれぞれ離れています。

レンタカーで回るが圧倒的に効率いいんですが、ここはバス、電車、徒歩で行きます。

 

・・・いやー、しんどかった。

 

上諏訪駅から本宮まではバスで20分

本宮から前宮は徒歩で20分

前宮から最寄りの茅野駅まで徒歩40分

下諏訪駅まで電車で移動して、そこから春宮まで徒歩20分、春宮から秋宮まで徒歩で30分弱、秋宮から下諏訪駅まで徒歩20分。

 

ね? 結構歩いたでしょ?

正直、公共交通機関が全く充実してません。

でも、そんな苦労をしても見に来た価値はありました。

御柱が見れたんです!


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本宮の御柱

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前宮の御柱

 

御柱は各社毎に奉られていました。

眼福です。

 

ちなみに上社の本宮には、江戸時代に活躍した史上最強の力士「雷電爲右エ門」の銅像がありました。


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雷電が長野出身だからですね。

雷電と言えば、最近はヒットマンガの「終末のワルキューレ」でシヴァ神と大バトルしてたので、知ってる人も多そうです。

 

今年は御柱の年ということで、諏訪の町中にはいたるところに御柱祭を知らせる登りが立っていました。

それだけでなく、人気のない公園にも過去の御柱が飾ってあったり、マンホールの蓋が御柱デザインと、やっぱり諏訪は御柱の町です。


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ちなみに御柱の次に印象に残ったのは春宮の横にある「万治の石仏」。


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かわいいでしょ?

これ、諏訪のゆるキャラになると思うんだけどなぁ。

ちなみに願い事を心の中で唱えながら三週すると願いが叶うそうです。

 

最後にもう一つ。

春宮にあった案内板。


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「徒歩 600m」

「車で0.8㎞」

 

あのー、徒歩だろうが、車だろうが距離は変わらないんですが・・・

きっと、「徒歩で行った方がいいですよ」「車が適してます」ってことなんでしょうね(笑)

 

【アニマル・ハウス】今だから分かる?スーパーダメ大学生コメディ

「アニマル・ハウス」(1978製作/1979日本公開)。

ブルース・ブラザース」(1980)「狼男アメリカン」(1981)のジョン・ランディス監督の名を一躍有名にしたコメディ。

当時、大爆笑喜劇という触れ込みだったので、劇場まで行ったんですよ。

でも、残念ながら中学生だった僕と友達は面白さが全く分からなかったんです・・・

さて、今見るとどうなんでしょうか?

 

(あらすじ)

アメリカの某大学。

男子学生クラブの中でも最も格式の高い「オメガハウス」にやんわりと入部を拒否された、落ちこぼれ新入生二人組は、学校の中で最もお下劣な最低集団「デルタハウス」に入部することになる。

しかし学長は「オメガハウス」と手を組んで、「デルタハウス」を追放しようとしていた・・・

 


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アニマル・ハウス パンフレット表紙

 

岐阜での封切は自由劇場っていう、ちょっと小さな劇場。

同時上映は「アメリカン・グラフィティ」(1973)。

アメリカの青春映画で、監督は「スターウォーズ」(1977)を撮る前のジョージ・ルーカス。日本公開は1974年で、この時はリバイバル上映でした。

評価の高い映画で、全編に流れるオールディーズを集めたサントラもヒットしました。

 

 

「アニマル・ハウス」は当時流行ったナショナル・ランプーン誌(ハーバード大学のユーモア専門誌からスタートした有名雑誌。1998年に廃刊)が作った第一弾映画。

 

舞台は1962年のアメリカの大学。

同時上映の「アメリカン・グラフィティ」の時代設定も1962年。

この組み合わせは1962年のアメリカの学生生活縛りだったんですね。

(「アニマル・ハウス」は大学生、「アメリカン・グラフィティ」は高校生ですが)

 

この1962年は、実は隠れキーワードだったんじゃないでしょうか。

当時のアメリカはベトナム戦争に本格介入が始まったばかり。

また黒人の公民権運動は真っ最中でした。

 

つまり、まだ白人と黒人の間に壁があり、学生はベトナム戦争に疑問を抱いてない時代なんです。

 

だから、この映画の大学生に黒人はいません。

黒人が出てくるのは、白人の学生パーティーの会場で歌うバンドと、黒人たちが集まるバーに主人公たちが迷い込んだ時だけです。

だから黒人たちが集まるバー(白人禁止)に、彼らが入った瞬間に敵対視されるのが「笑い」になるわけです。

 

また、のちに大学で吹き荒れる反戦デモのかけらもなく、軍事教練をするチームが学内にあるぐらいです。(これもイジリのネタになってる)

 

これは今回見て、「なるほど~」と思った点でした。

 

さて、この映画の宣伝で主役扱いされていたのは、ジョン・ベルーシ

唯一無二の存在で、傍若無人のキレキャラをやらせたら右に出るものはいません。

役柄も超ハチャメチャキャラなので、存在感はあります。

でも主役ではありません。

寧ろ、話と関係なくずっと暴れている感じ。

 

狂言回しは「デルタクラブ」の会長とオッター+新人二人。

彼らを中心に、ダメ集団「デルタハウス」のメンバー、メンバーと付き合ってる女学生(カレン・アレン)、マリファナでラりってる大学教授(ドナルド・サザーランド)が入り乱れて進んできます。

 

カレン・アレンは「レイダース/失われた聖櫃」(1981)や「スターマン/愛・宇宙はるか」(1984)でも可愛いかったですが、この映画でも相変わらず可愛いです。僕のお気に入りの女優の一人です。

 

そしてドナルド・サザーランド

この人はめっちゃ好きです。

「M★A★S★H」(1970)や戦略大作戦(1970)と同じく、この映画でもぶっ飛んでる非常識キャラですが、そういう役を演じさせると本当に上手い

息子(「24」のキーファー・サザーランド)は、まだ父親の域には達してないと思います。

 

ちなみに主人公たちのライバル「オメガハウス」のメンバーに「あれ?ケヴィン・ベーコンに似てる奴がいるなぁ」と思ったら本人でした。

この映画がデビュー作だそうです。

 

そして今回判明したのが、ギャグの大半が下ネタだった、ということ。

この下ネタを中学生の僕が理解できなかったことが、面白く感じなかった要因の一つかも。

 

だから、今回見た率直な感想は、結構面白い!

これが大人になるってことですね。

 

そして何よりも、僕がこの映画を見た数年後に、ぐーたらのダメ大学生を経験したことも大きいです。

そのお陰で、この映画のキャラ達のバカバカしさをずっと身近に感じることが出来ました。(笑)

 

人生経験って偉大だ。

 

きっとあの時代を懐かしむ気持ちもあったんでしょう。

 

でも、冷静に考えれば、なんであんなダメ人間製造機みたいな時間を懐かしむのか不明過ぎますけど。

 

この映画って言ってしまえばドタバタ喜劇なんです。

一歩間違うと混沌としちゃうところを、ジョン・ランディス監督は登場人物やエピソードをテキパキとさばいていて、観客を迷子にさせません。

この辺りに才気を感じさせますが、やはり映画の完成度という点では「ブルース・ブラザーズ」や「大逆転」(1983)のレベルにはないです。

 

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実は同時上映の「アメリカン・グラフィティ」の面白さも分からなかったんです。

こっちも今見たら分かるんでしょうか。今度見てみたいと思ます。

 

さて、この映画、実はスタッフが結構豪華。

製作がアイヴァン・ライトマン(「ゴーストバスターズ」シリーズの監督)、脚本がハロルド・レイミス(俳優として有名)だったんですよ。

みんな、「アニマル・ハウス」から巣立っていったんですね。

 

この映画、エンドクレジットで「登場人物のその後」っていうフェイク解説があるんです。

そのうちの一人が「彼は後にナショナル・ランプーンの編集長になった」とあるので、脚本家としてクレジットされているダグ・ケニー(ナショナル・ランプーンの共同設立者)の半自伝かもしれませんね。

 

ダグ・ケニーの自伝映画「意表をつくアホらしい作戦」(2018)はNexflixのオリジナル作品として配信されてます。

ちょっと日本語タイトルがアレですが、こっちも是非見てみたいです。

 

ちなみにナショナル・ランプーンを描いたドキュメンタリー映画もあって、「Drunk Stoned Brilliant Dead: The Story of the National Lampoon」(2015)というんですが、日本未公開&未ソフト化のようです。

 


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どこかが日本語字幕付きのDVDを出してくれないですかね?

 

「アニマル・ハウス」はPRIME VIDEO、Nextflix、U-NextのサブスクにはなかったのでDVDレンタル屋を利用しました。

 

現在、DVDは入手可能です。

このDVDはスペシャルエディションで、特典として「その後のデルタハウスのメンバーはどうなったか?」というフェイクインタビュー集が付いてます。勿論、オリジナルの役者さんが演じてるとか。

これは見てみたいので、買ってしまうかも、です。

 

 

【ムーの旅】京都探索 ②

えー、今日は意外とフツーでした。

 

まずは宇治の平等院へ。

キリストの墓に比べれば、かなり鉄板の観光地。

 

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なんでこんなベタな場所に行くかというと、僕にトラウマがあるからです。

 

小学校の時の修学旅行は京都・奈良でした。

勿論、平等院もコースに入ってました。

でもバスが渋滞しまして、バスガイドさんがあっさり

 

「時間がありませんので、宇治の平等院には寄らないことになりました

 

その時から、平等院が心のどこか引っ掛かってたんです。

行くべきところに、行けなかった、というトラウマ。

しかし遂にトラウマから解放される時が来ました!


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フツーにキレイでした。

フツーの話ですみません。

 

宇治と言えば、抹茶。

駅前のポストも抹茶です。

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僕も中村藤吉本店という店(これも鉄板店らしい)で冷たい抹茶を頂きました。

 

次は稲荷に移動。

 

稲荷では、お約束のいなり寿司を食べて、さぁ、出撃。

そうなんです、次の目標は「伏見稲荷大社」。

 

僕はムー好き。

普通の観光客とは違う。

インスタ映え狙いで、千本鳥居に行くわけないじゃないですか!


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ごめんなさい。

とってもフツーです。


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キツネの鈴も買ってしまいました。


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夕方は鴨川をブラブラするという、やっぱりフツーの観光客。

 

もうムーの旅ではない気が・・・

【ムーの旅】京都探索 ①

ムーの旅は続きます。

 

今回は京都。

 

「キリストの墓」のような超絶エキサイティングな場所はありませんが、数多くのパワースポットがあります。

ちなみに僕はパワースポット好きではなく、雑誌ムー好きです。

 

朝9時に新幹線で到着すると、京都駅近くの喫茶店でモーニングを食べて、いざ出陣。

 

最初の訪問地は晴明神社

そうです、あの陰陽師安倍晴明の神社です。


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安倍晴明と言えば、五芒星

あのマークを見ると、テンション上がります。


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やはり人気みたいで、本日の祈祷はすでに満員。

それでも大丈夫!

祈祷は郵送でもやってくれるそうです。


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・・・式神が家まで来てくれるんでしょうか?

 

御朱印も印刷物で、自分で御朱印帳に貼り付ける形式

さすが、売れっ子神社です。

 

更にお守り売場とは別に安倍晴明公式グッズ売場があります。

そこには五芒星や陰陽をモチーフにしたグッズがいっぱい。

勿論、グッズ売場の壁には野村萬斎主演の「陰陽師」(2001)のポスターがあったのは言うまでもありません。

 

その次は御金神社に。

住宅地にある、めっちゃ小さい神社なんですが、前の通りには警備員が立つぐらい大人気

 

何故か。

 

それは名前の通り、金運を招く神社だからです!


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鳥居からし金ピカ

(岐阜市にも金ピカの鳥居がある金神社っていうのがあります)

 

ここで凄かったのが、絵馬の数

もうこれ以上は付けるところがないぐらい、ぎっちり絵馬が結び付けられてました。

 

勿論、全てお金持ちになりたい願い。

 

リアルで、生々しい欲望の塊ですね。

 

まぁ、僕も同じなんですが(笑)

 

絵馬の数を見て、僕の願いの番が回ってくる確率のことを考えるのは止めようと思いました。

 

その後、お昼にニシンそばを食べたり、新京極をぶらぶらしたりと、普通の観光客と変わりませんでした。

 

最後に新京極で見つけた八ツ橋の人形がこれ。


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勿論、ミルキー八ツ橋を買いました(笑)

【ジャバーウォッキー】幻の映画は幻のままで

横浜にある名画座シネマジャック&ベティのサイトを見たら、テリー・ギリアム監督の幻の単独監督デビュー作「ジャバーウォッキー」(1977製作/1980日本公開)が上映スケジュールにあるじゃないですか。

 

今回公開されたのは、4Kレストア版が出来たからです。

上映期間は僅か1週間だったので、早速見に行くことにしました。

このコラム始まって以来、初めての劇場鑑賞レビューです!

 

(あらすじ)

中世のとある王国。がめつい王様は農民から搾り取っていたが、ジャバ・ウォッキーという怪物が出現し、農民を襲い始めた。農民が逃げることを恐れた国王は、ジャバー・ウォッキーを倒すため、最も強い騎士を選ぶトーナメントを開催する・・・

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テリー・ギリアムは僕にとって神です。

 

特に「バンデットQ」(1981)、「未来世紀ブラジル」(1985)、「バロン」(1988)は何度も見ました。

 

僕がテリー・ギリアムに初めて接したのは、小学生の時に見た英TV「空飛ぶモンティ・パイソン」(1969-1974)でした。

オープニングや、コメディとコメディの間に唐突に入ってくる変なアニメの作者がギリアムだったんですね。

 


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暫くして、高校生のときに名古屋の映画館で「モンティ・パイソン&ホーリー・グレイル」(1975)と「ライフ・オブ・ブライアン」(1981)のモンティ・パイソン二本立てを見て、再びモンティ・パイソンにハマることになります。

 

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そんな中で、「モンティ・パイソン&ホーリー・グレイル」の共同監督がテリー・ギリアムだと知り(監督第一作)、1983年には単独で監督した「バンディットQ」(1981)が日本で公開されました。

 

「バンディットQ」は岐阜の自由劇場という半地下みたいな小さな映画館で見たんです。

同時上映はアニメ「幻魔大戦」(1983)という、ちょっと奇妙な組み合わせ。

地方はこの組み合わせで統一されてたみたいですね。

 

この時の「バンディットQ」(原題「Time Bandits」)は日本では子供向け映画の扱いになったため、幾つかの子供向けではないエピソードがカットされた短縮改悪での公開でした。

モンティ・パイソン出身者らしい毒が抜かれた感じでしょうか。

この映画の宣伝配給はあの東宝東和

モンティ・パイソン愛のかけらもない公開の仕方でした。

 

東宝東和の武勇伝は「バーニング」(1981)と「メガフォース」(1982)のレビューを参照して下さい)

 

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その悪評のせいか(?)、国内発売のソフトはノーカット版になってました。

(残念ながら現在、新品DVDは入手困難)

 

この頃、テリー・ギリアムの初単独監督作品が「ジャバーウォッキー」だと知ったのです。

しかし日本での劇場公開はとうの昔に終っているわ、ソフト化もほとんどされてないわ、で、見るチャンスがないまま、40年の月日が経ち、この映画のことをすっかり忘れてました

 

だから、タイトルを見てキュンとしましたね。

高校生の時に思い焦がれてたものを思い出した、あの感覚。

見ないわけにはいきません。

 

ジャバーウォッキー チラシ

 

シネマジャック&ベティで映画を見るのは初めて。

伊勢佐木長者町の、猥雑な界隈にあるのがいいですね。

僕は伊勢佐木町の混沌としているところが好きなんです。

場所も昔、横浜日劇があった反対側

懐かしすぎます。

 

館内にも旧横浜日劇のイラストが描かれています。

永瀬正敏さん主演の探偵濱・マイクシリーズ(1994-1996)を思い出す人も多いんじゃないでしょうか。

(旧横浜日劇の二階が探偵事務所、という設定)

 

館内はほどよい狭さ。

僕的には、名画座ってこじんまりしてる方がいいんですよ。

好きな人達の集まりっぽくて。

 

この日の観客は10人ぐらい。

夜9時からの一回だけの上映ですが、日曜の夜ってことで、こんなもんですかねー。

みんな、映画好きな雰囲気の人ばかりで、懐かしい感じがします。

 

さて、前段が長くなりましたが、映画本編は65点ですね

 

ギャグなんだか、シリアスなんだか、軸足が定まってません。

 

モンティ・パイソン風のギャグはいたるところにあるんですが、照れてるのか、突き抜けてないんです。

こっちも「きっと笑わせたいんだろーなー」とは分かるんですが、そんなに笑えない。

 

じゃ、話自体はどうかっていうと、意外にヒネリの少ない真面目な話。

「バロン」のような虚構と真実の迷路みたいな構造でもなければ、「未来世紀ブラジル」みたいに強烈な文明批判をしてるわけでもない。

そしてどちらも笑いと話が一体化してるんです。

話を引き立てるために必要な笑い。

 

でもこの映画は、普通の話にギャグをくっつけてるだけ。

 

テリー・ギリアムがとりあえず一人で監督してみて、どうなるか見てみよう、そんな感じ。

モンティ・パイソンでもなく、かといって後年のギリアムでもない、中途半端な作品です。

 

この映画の見どころの一つとして、リアルな中世世界の再現があります。

そこには僕らが知ってるカッコいい中世はありません。

 

汚くて、混沌とした中世。

 

騎士も鎧が重くて、従者の助けがないと馬に乗れないですし、剣も切るものではなく、叩きつけるのがメイン。

 

そんなリアルを笑いのネタにしてるんですが、モンティ・パイソンのように上手く仕上げられてないのが残念です。

 

きっとこの映画を作った結果、「自分はモンティ・パイソンみたいなものは無理だ」って悟ったのかもしれませんね。

この後の作品では無理に笑いを誘うことがなくなりました。

 

そういう意味で、「ジャバーウォッキー」は有意義な習作だったのかもしれません。

でも個人的に凄く期待していただけに、ちょっとがっかり。

 

幻の映画は幻のままにしておくのが良かったかも。

 

ちなみに国内ソフト化は、ビデオテープ時代にされているだけで、DVDやブルーレイはありません。(海外版はあります)

当然、レンタルはありません。

今回の4Kレストア版を契機にソフトが出ることを期待しましょう。