1980年に突如として一部の雑誌で祭り上げられたアクション映画。
それがジェームス・グリッケンハウス監督の「エクスタミネーター」(1980)。
有名な俳優も出ていないということで、21世紀には「忘れられた作品」になってしまいましたが、昭和の時代にアクション映画好きだった人なら「ああ、そんな映画、あったね」と思い出してもらえるんじゃないでしょうか。
そんな映画を今回レビューしてみました。
(あらすじ)
ベトナム帰還兵の主人公は、ベトナムで自分を救ってくれた戦友とニューヨークの倉庫で働いていた。そこに盗みに入ったチンピラたちに暴行された戦友は全身麻痺になった。警察が頼りにならないと悟った主人公は、自分の手で犯人たちを処刑することを決心する。
監督はジェームス・グリッケンハウス。
撮った映画の10本にも満たないですが、B級映画好きなら知る人ぞ知るアクション映画監督です。
劇場ではこの映画を見ていなくて、社会人になってからビデオで見ました。
もう30年ぐらい前の話です。
その時は極めてフツーのB級娯楽映画だったって感想でした。
でも内容は「悪い奴におしおきする話」っていうぐらいしか覚えてません。
同じグリッケンハウス監督の作品でも「ザ・ソルジャー」は、「映画館で見た時、面白かった」という記憶があるんですが、「エクスタミネーター」には特に面白かったっていう印象がないんです。
ちなみに内容については、この前レビューするまで「ザ・ソルジャー」は全く覚えてなかったんですけどね(笑)
pagutaro-yokohama55.hatenablog.com
でも一般的には「ザ・ソルジャー」よりも、「エクスタミネーター」の方が知名度は高いですし、実際に公開当時はそこそこ宣伝もされてました。
(あくまでもマニア基準です。一般の映画ファンからはどちらも忘れられてる可能性大ですけど)
「エクスタミネーター」の宣伝と言えばこのポスター。
マニアの間で有名ネタなんですよ。
黒いフルフェイスのヘルメットに、ノースリーブの革ジャンに火炎放射器。
主人公はこんな格好しないし、こんなシーンも出てきません。
前年にヒットした「マッドマックス」のパクリなのは誰の目にも明らか。
こんな詐欺みたいなポスターだから、きっと日本の配給会社が勝手に作ったんだろう、さすが昭和だなぁ、と勝手に思ったんです。
でも、違ったんです。
海外でもこのポスターなんです。
どうやらプロダクションポスター(制作会社が、撮影前にざっくりとした内容だけで資金集め用に作るイメージポスター?)のようです。
さて、話としてはチャールズ・ブロンソン主演の佳作「狼よ、さらば」(1974)の焼き直し。
身内がチンピラに殺され、自分の手で復讐を始めたんだけど、そのうち街の悪い奴をどんどん殺してくっていうプロセスがそっくりです。
ジェームス・グリッケンハウスは、そんな仕置き人話をサクサク進めてきます。
とにかく無駄がない、というか、悪人を見つける → はい、天誅、と、とってもシンプル&コンパクト。
主人公が「俺がやっていることは本当に正義だろうか?」なんて現代風の悩みは1ミリもありません。
主人公も含めて出てくるキャラもステレオタイプばかり。
唯一違うのは、病院で夜勤の女医と空いた病室でヤっちゃう刑事ぐらいでしょうか。
善人悪人が明確に分かれてるので、話が凄く分かり易いのが良い点です。
言い換えればヒネリが全くないってことですが。
どのエピソードも粗筋を簡単な映像でざっと見せられているような感じ。
まるでファストムービーです。
元々、ジェームス・グリッケンハウスは「アクションさえ撮れればなんでもいい」っていう潔い監督。
だから話は「アクションシーンを見せる最低限のものでいい」と思ってるフシがあります(脚本もグリッケンハウス)
この点はこの映画も「ザ・ソルジャー」も全く同じ。
ただベトナム帰還兵がNYで暴れるだけの話なので、「ザ・ソルジャー」ほどのアクションシーンはないです。
だってほとんどの相手がマフィアの親分やチンピラなので、ベトナム帰還兵の主人公が一方的にやっつけるだけ。
ラストの刑事とのチェースと銃撃戦が一番アクションシーンらしかったですね。
主人公のロバート・ギンティは、昔から「主人公なのに見てくれがカッコよくない」って言われてました。
確かに今一つカッコ良くないですが、酷評されるほど酷くなく、ちゃんと主人公に見えました。
さて、この映画で一番ダメだったのか、冒頭のベトナム戦争のシーン。
びっくりするぐらいチープ。
どう見てもベトナムのジャングルに見えない。
郊外の空き地でセットを組んでやってるレベル。
百歩譲ってお金がないとしても、もうちょっとライティングやアングル、構図で「それっぽく見える」工夫は出来たと思うんですよ。
モノクロの回想シーンにするとか、イメージシーンにして、セリフで語らせるとか・・・
まぁ、グリッケンハウス監督からすれば、そんなところに手間かけず、さっさと都会のアクションシーン(世直しシーン)を撮りたいって思ったんでしょうか。
そんな雑なところもあるし、話や人物像の深みはないですが、見終わった時は意外に面白かったと思えます。
でも、やっぱり「ザ・ソルジャー」の方が面白かったかな。
勿論、どっちも超B級ってことには変わりないですが(笑)。
また10年ぐらいしたら、
「ザ・ソルジャー」は面白かったけど、「エクスタミネーター」は面白かったんだっけ? あれ、どっちもどんな話か思い出せないや。
ってなってること間違いなしの映画でした。
今回はサブスク系(PRIME VIDEO、Netflix、U-Next)になく、DVDレンタル屋にもなか
ったので、またもやTSUTAYAの宅配レンタルを利用しました。
新品のDVDは手に入ります。
ジャケットは勿論、あの「マッドマックス」もどきです(笑)