パグ太郎の<昭和の妖しい映画目撃者>

昭和の映画目撃談&時々その他いろいろ

【エクスタミネーター】これはファストムービーか?無駄をそぎ落としすぎアクション映画

1980年に突如として一部の雑誌で祭り上げられたアクション映画。

それがジェームス・グリッケンハウス監督の「エクスタミネーター」(1980)。

有名な俳優も出ていないということで、21世紀には「忘れられた作品」になってしまいましたが、昭和の時代にアクション映画好きだった人なら「ああ、そんな映画、あったね」と思い出してもらえるんじゃないでしょうか。

そんな映画を今回レビューしてみました。

 

(あらすじ)

ベトナム帰還兵の主人公は、ベトナムで自分を救ってくれた戦友とニューヨークの倉庫で働いていた。そこに盗みに入ったチンピラたちに暴行された戦友は全身麻痺になった。警察が頼りにならないと悟った主人公は、自分の手で犯人たちを処刑することを決心する。


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監督はジェームス・グリッケンハウス。

撮った映画の10本にも満たないですが、B級映画好きなら知る人ぞ知るアクション映画監督です。

 

劇場ではこの映画を見ていなくて、社会人になってからビデオで見ました。

もう30年ぐらい前の話です。

その時は極めてフツーのB級娯楽映画だったって感想でした。

でも内容は「悪い奴におしおきする話」っていうぐらいしか覚えてません。

 

同じグリッケンハウス監督の作品でも「ザ・ソルジャー」は、「映画館で見た時、面白かった」という記憶があるんですが、「エクスタミネーター」には特に面白かったっていう印象がないんです。

 

ちなみに内容については、この前レビューするまで「ザ・ソルジャー」は全く覚えてなかったんですけどね(笑)

pagutaro-yokohama55.hatenablog.com

 

でも一般的には「ザ・ソルジャー」よりも、「エクスタミネーター」の方が知名度は高いですし、実際に公開当時はそこそこ宣伝もされてました。

(あくまでもマニア基準です。一般の映画ファンからはどちらも忘れられてる可能性大ですけど)

 

「エクスタミネーター」の宣伝と言えばこのポスター。

エクスタミネーター ポスター

マニアの間で有名ネタなんですよ。

 

黒いフルフェイスのヘルメットに、ノースリーブの革ジャンに火炎放射器

 

主人公はこんな格好しないし、こんなシーンも出てきません。

 

前年にヒットした「マッドマックス」のパクリなのは誰の目にも明らか。

 

こんな詐欺みたいなポスターだから、きっと日本の配給会社が勝手に作ったんだろう、さすが昭和だなぁ、と勝手に思ったんです。

 

でも、違ったんです。

海外でもこのポスターなんです。

どうやらプロダクションポスター(制作会社が、撮影前にざっくりとした内容だけで資金集め用に作るイメージポスター?)のようです。

 

さて、話としてはチャールズ・ブロンソン主演の佳作「狼よ、さらば」(1974)の焼き直し。

身内がチンピラに殺され、自分の手で復讐を始めたんだけど、そのうち街の悪い奴をどんどん殺してくっていうプロセスがそっくりです。

 

ジェームス・グリッケンハウスは、そんな仕置き人話をサクサク進めてきます。

とにかく無駄がない、というか、悪人を見つける → はい、天誅、と、とってもシンプル&コンパクト

主人公が「俺がやっていることは本当に正義だろうか?」なんて現代風の悩みは1ミリもありません

主人公も含めて出てくるキャラもステレオタイプばかり。

唯一違うのは、病院で夜勤の女医と空いた病室でヤっちゃう刑事ぐらいでしょうか。

善人悪人が明確に分かれてるので、話が凄く分かり易いのが良い点です。

言い換えればヒネリが全くないってことですが。

 

どのエピソードも粗筋を簡単な映像でざっと見せられているような感じ。

まるでファストムービーです。

 

元々、ジェームス・グリッケンハウスは「アクションさえ撮れればなんでもいい」っていう潔い監督。

だから話は「アクションシーンを見せる最低限のものでいい」と思ってるフシがあります(脚本もグリッケンハウス)

この点はこの映画も「ザ・ソルジャー」も全く同じ。

 

ただベトナム帰還兵がNYで暴れるだけの話なので、「ザ・ソルジャー」ほどのアクションシーンはないです。

だってほとんどの相手がマフィアの親分やチンピラなので、ベトナム帰還兵の主人公が一方的にやっつけるだけ。

ラストの刑事とのチェースと銃撃戦が一番アクションシーンらしかったですね。

 

主人公のロバート・ギンティは、昔から「主人公なのに見てくれがカッコよくない」って言われてました。

確かに今一つカッコ良くないですが、酷評されるほど酷くなく、ちゃんと主人公に見えました。

 

さて、この映画で一番ダメだったのか、冒頭のベトナム戦争のシーン。

びっくりするぐらいチープ。

どう見てもベトナムのジャングルに見えない。

郊外の空き地でセットを組んでやってるレベル。

百歩譲ってお金がないとしても、もうちょっとライティングやアングル、構図で「それっぽく見える」工夫は出来たと思うんですよ。

モノクロの回想シーンにするとか、イメージシーンにして、セリフで語らせるとか・・・

まぁ、グリッケンハウス監督からすれば、そんなところに手間かけず、さっさと都会のアクションシーン(世直しシーン)を撮りたいって思ったんでしょうか。

 

閑話休題

 

そんな雑なところもあるし、話や人物像の深みはないですが、見終わった時は意外に面白かったと思えます。

でも、やっぱり「ザ・ソルジャー」の方が面白かったかな。

勿論、どっちも超B級ってことには変わりないですが(笑)。

 

また10年ぐらいしたら、

 

「ザ・ソルジャー」は面白かったけど、「エクスタミネーター」は面白かったんだっけ? あれ、どっちもどんな話か思い出せないや。

 

ってなってること間違いなしの映画でした。

 

今回はサブスク系(PRIME VIDEO、Netflix、U-Next)になく、DVDレンタル屋にもなか

ったので、またもやTSUTAYAの宅配レンタルを利用しました。

 

新品のDVDは手に入ります。

ジャケットは勿論、あの「マッドマックス」もどきです(笑)

 

【コンボイ】これぞ、アメリカ版トラック野郎だ!

SF映画ブームの中、公開されたトラック映画コンボイ(1978)。

監督はバイオレンスの美学で有名なサム・ペキンパー

主演は当時、俳優として大人気だったクリス・クリストファーソン(本職は歌手)。

宣伝にも力が入っていて、TVでCMが頻繁に流れてました。

話題の映画だったんですね。

今回はこの映画をレビューします。

 

(あらすじ)

トラック運転手の主人公は悪徳警官に嫌がらせを受けたことで、他のトラック運転手に無線で呼びかけ、隊列を組んでアメリカを横断する。しかし悪徳警官は諦めずに、彼を追い回すのだった・・・


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コンボイ」は当時の岐阜にしては珍しい同時上映のない、一本のみの上映

これ、一本上映って「スターウォーズ」のような大作・話題作の証なんです。

でも話題作の扱いだった割には、上映された映画館は自由劇場という、ちょっと小さい映画館。(その上、半地下の古い劇場だった)

実はたまたま同時上映にする、都合のいい映画がなかっただけなのかも。

とにかく話題の映画というだけで、何の予備知識もなしに映画館に行きました。

 

見終わった後の感想は65点

 

正直、つまらなくはなけど、楽しかった~という印象は薄いです。

今回見直したのは「当時の自分には分からない良さがある映画だったんじゃないか」っていう気持ちがあったから。

だって監督はあのサム・ペキンパーですよ!

「バイオレンスの美学」サム・ペキンパー!!

ひょっとしたら当時はお子ちゃまだったから、ヒリヒリするような殺伐さに満ちた暴力的な映画を理解できなかったんじゃないか、って期待してたんです。

 

コンボイ パンフレット表紙

 

しかし僕が見たのは、アメリカ版「トラック野郎」でした。

めっちゃ明るい映画。

 

オープニングから明るいカントリー調の主題歌。

 

コンボイ

コンボイ

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大型トラックを運転しながら、軽いノリで無線で仲間に話しかける主人公。

それに軽妙に応える相棒。

いい感じに軽い相棒役がバート・ヤングにハマってます。

 

主人公のあだ名が「ラバーダック(車の前にゴムのあひるをつけてるから)。

相棒のあだ名は「ラブ・マシーン」

ノリノリの会話で、愉快なトラック野郎たちが主人公の下に集まってきます。

 

え?これがペキンパー映画???

 

彼の代表作「ワイルドバンチ」(1969)の悲壮なクライマックスとは違い過ぎます。

 

更にお約束のライバルとなる悪徳警官が登場

名優アーネスト・ボーグナインが憎々し気なだけでなく、どことなく情にもろそうなところを見せる等、期待通りに演じてます。

一生懸命やっても、最後の最後で捕まえられない敵役って、ヤッターマンルパン三世スカイキッドブラック魔王によく出てくるヤツですよね?

 

そして最後はヒロイン役のアリ・マッグロウ。

これがねー、とっても残念な感じなんですよ。

モテモテの主人公が惹かれるっていう設定なんですけど、魅力が全くない

これは配役失敗でしょう。

 

とにかく全編、クリス・クリストファーソンと楽しいトラック野郎たち(女性のドライバーもいますが)が、警官とやり合いながら隊列(これをコンボイっていうらしいです)を組んで明るく、楽しくアメリカを旅する話。

あれ?仕事あるのに隊列なんか組んでいていいの?って、真面目なサラリーマンが多い日本人なら思っちゃうんじゃないでしょうか。

 

TVで中継されたことで人気者になったり、それを利用とする政治家が出てきたりというエピソードも出てきますが、どうでもいい感じです。

 

寧ろ、出産する嫁さんのところに向かった仲間が、途中で悪徳警官に捕まったことを知り、主事項が仲間たちと留置場に向かうところが素直に山場。

トラックが並んで向かうシーンは、「ワイルドバンチ」を彷彿させますが、悲壮感はありません。

 

留置場に着くと、「そんなのありえんだろう」みたいなノリでトラック軍団が車ごと警察署に突っ込んで破壊しまくります。

「リアリティなんか知らねぇよ、こいつぁ、アメリカ版トラック野郎だ!」っていう明るいノリです。

 

ラストは州兵が重武装で待ち構えているところに、主人公だけ突っ込んでいき、銃弾の雨を浴びまくるんですが、そこだけは僕らが知っているサム・ペキンパー映画

 

しかし、最後の主人公の葬式で、「実は生きてました」「お前生きてたのかぁ!また捕まえてやるぞぉ」(生きてたことがちょっと嬉しい)とルパン三世と銭形警部みたいなオチはやっぱり「アメリカ版トラック野郎」。

 

見終わった後に思うのは、とにかくクリス・クリストファーソンの主人公が男臭くて、カッコ良く見える映画だったてこと。

コンボイ」はサム・ペキンパーの映画ではなく、この時期に大人気だったクリス・クリストファーソンの映画ってことじゃないですかねぇ。

 

だからと言って凄く面白い作品ではなく、やっぱり65点の映画でした。

 

サム・ペキンパー監督にとっては、やっつけ仕事だったんじゃないかと思うんですが、Wikipediaによれば、コンボイ」はサム・ペキンパー作品の中で一番売れたそうです。本人は不本意だったんだろうなぁ。

 

サム・ペキンパー監督とクリス・クリストファーソンは、この映画の5年前に「ビリー・ザ・キッド/21歳の生涯」(1973)っていう映画でタッグを組んでます。(クリス・クリストファーソンビリー・ザ・キッド役)

これがペキンパー映画だったのか気になります。未見なので、近々見てみたいと思ってます。

ちなみに「ビリー・ザ・キッド/21歳の生涯」はボブ・ディランの主題歌「天国への扉(Knockin' on Heaven's Door )」が有名。

名曲としてその後、いろんなアーティストにカバーされてます。

エリック・クラプトンガンズ・アンド・ローゼズのバージョンが有名)

 

Knockin' On Heaven's Door

Knockin' On Heaven's Door

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サム・ペキンパーはこの後、しばらく映画を撮らず、5年後に「バイオレント・サタデー」(1983)という映画を撮って、59歳で急逝しました。

「バイオレント・サタデー」も劇場で見ましたが、話がチンプンカンプンで、全く面白くなかったです。

これも見直してみたい作品なんですが、サブスクにもレンタルにもなく、DVDも廃盤。中古盤も入手困難みたいです。僕的にはプチ幻の映画です。

 

さて小ネタ。

この映画のCMで流れていた曲があるんですが、日本独自のイメージソングだったそうです。

何と作曲者は松任谷正隆さんでした。


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なんと、うちの押し入れを探したら、この曲のシングルレコードが出てきました!

自分でも買ってたことをすっかり忘れてました。

 

コンボイ」イメージソング シングル盤ジャケット

 

 

当時はそうい「日本オリジナルの曲をイメージソングとして使う」のが流行ってました。

ナイル殺人事件(1978年版)でも「ミステリ~、ナーアーイル」って主題歌がTVからしょっちゅう流れてました。

映画のエンディングでも流れてましたが、実は日本独自の曲で、日本公開用に曲を差し替えたとのこと。曲自体、かなりヒットしました。

 


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これも押し入れにシングル盤がありました。

当時、なけなしの小遣いで買ってた思うと、ちょっと複雑な気持ちです。

ナイル殺人事件 日本イメージソング シングル盤ジャケット

買ったのは近鉄百貨店の別館「近鉄アミコ」の2階にあった電波堂というレコード屋さんでした。

電波堂ではいっぱいレコード買ったなぁ。

 

他にも「チェンジリング」(1980)というホラー映画(イーストウド監督のミステリーではない)では、日本のテクノバンド・ヒカシューの「パイク」がイメージソングだったんですが、ちょっとおどろおどろしくて印象的な曲でした。40年経った今も忘れられません。

パイク

パイク

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今回はついつい音楽ネタをたくさん書きすぎちゃいました。

 

そう言えば当時、SFブームだったせいか、トラックが宇宙を走ってる「コンボイ」の宣伝ポスターがあったと記憶してるんですが、知ってる人いますか?(調べたけど確認出来ず)

配給会社が東宝東和ならやりかねないのですが、日本ヘラルドなので僕の記憶違いの可能性もあります(笑)

 

この映画はPRIME VIDEOとNetflixにはなかったので、U-Nextのサブスクで見ました。

国内版DVD/Blu-Rayは廃盤のようです。

 

【大怪獣ガメラ】イライラさせる子供と、その子供を無視する大人たち

ガメラ」シリーズの記念すべき第一作「大怪獣ガメラ(1965)。

ちょっと今までレビューしてきた映画より古めですが、せっかく見たので簡単にレビューしたいと思います!

 

(あらすじ)

北極に核爆弾を搭載した国籍不明機が墜落、爆弾が破裂した。この影響でアトランティスの伝説の巨大怪獣ガメラが覚醒。熱エネルギーを食料とするガメラは日本に餌を求めて上陸。一旦は冷凍爆弾とダイナマイトによりひっくり返り、身動きが取れなくなるが、ジェット飛行で飛び去ってしまい、日本各地のコンビナートや街を襲う。これと止めるため科学の英知を集めたZ作戦を実行されることになった・・・


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僕が子供の頃はガメラと言えば、ゴジラと並ぶ「映画の怪獣」

大映製作の第一次シリーズは「ガメラ対深海怪獣ジグラ」(1971)で終了したんですが、幼稚園児だったので劇場で見た記憶がありません。

ただ幼稚園の時に「ガメラ対大魔獣ジャイガー」(1970)の絵を描いてたので、見に行ってたのかも。

 

僕がガメラを見た記憶は小学生の夏休みのTV

昭和の時代って、夏休みになると午前10時から12時は、子供向けのちょっと古い特撮TVや映画が毎日放送されてたんです。

僕の住んでた東海地方だと「キャプテン・ウルトラ」や「仮面の忍者赤影」が多かったですね。

とってもいい時代でした。

 

その流れで時々ガメラも放送されるんですが、子供受けのいい「対決シリーズ」となった2作目以降ばっかり。

要はガメラは正義の味方で、悪の怪獣と戦うやつです。

街を破壊する怪獣ガメラが子供受けに路線変更するのは、ゴジラと同じパターン。

ゴジラが人類の味方になるのが5作目の「三大怪獣 地球最大の決戦」(1964)だったのに対し、ガメラ2作目の「大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン」(1966)ですぐに子供の味方になる身代わりの早さです。

 

子供向けのガメラは、それなりに人気があったんですよ。

だって子供は怪獣プロレス好きだから。それに分かり易いし。

当時はガメラの主題歌「ガメラマーチ」を歌える子が多かったと思います。

ガメラマーチ

ガメラマーチ

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この歌を聞いてもらうだけで、映画が完全に子供向けってことがわかっちゃいますよね。

ちなみに対決シリーズは、お約束として必ずガメラは一回派手にやられます。

スプラッターというぐらい、血がドバーっと出てやられる

この一回めちゃめちゃにやられるっていうのが、子供心にハラハラして、ガメラを応援したくなるにくい仕掛けでした。

 

閑話休題

 

さて、そんな人気シリーズですが、一作目だけTV放映がなかったんです。

(僕が住んでた地方だけかもしれませんが)

 

そんなワケで、第一作だけは断片をちょろちょろ見たことがある程度で、ちゃんと全編見たことがありませんでした。

時間を調べると78分と超お手軽だったので、今回視聴してみたんです。

 

ガメラって「ガメラマーチ」があんな感じだから、1作目も緩い子供向けだろうと思ってました。

これが意外と大人向けだったんです。

 

でも、意外と、っていうレベルです。

 

話は全般的にゴジラの影響を受けてるのか、なかなか真面目な展開。

科学者たちが大真面目にガメラ対策を立てる筋立ては、オースドックスでありながら、白黒の画面と相まって緊迫感があります。(この映画は白黒です)

さすがに映画史に残る「ゴジラ」の一作目と同レベルではありませんが、十分食い下がってます。

 

が、途中で何故かカメを偏愛する少年が出てきて迷走していきます。

自分が飼っているメのためなら、家族の注意もシカトする少年です。

 

彼が灯台から落ちそうになるとガメラが手で受け止めて助けます。

ガメラってオレが可愛がってたカメが大きくなったんじゃないか?

俺はガメラと心が通じている。

ガメラはイイ奴だ!と勝手に思い込みます

そもそも灯台を壊したのはガメラなんですけどね

 

普通、ここからの展開って「子供の純粋な気持ち」VS「冷徹で計算づくの大人」って構造じゃないですか。

 

でもね、ここから少年の暴走が始まるんですよ。

みんなが避難する中、抜け出す。

避難先の親戚の家でトラブルを起こす。

ガメラ退治作戦の場所に忍び込み、自衛隊の人に迷惑をかける。

 

きっと当時の子供でも「いい加減にしろよ!」って怒ってたと思います。

 

科学者たちは、そんな彼のガメラ愛を完全に無視し、サクサクとガメラ退治の計画を進めていきます。

 

完全に対立構図が「ただのわがままな子供」VS「彼を無視して、着々と計画を進める大人」になるんですよ。

 

もっとはっきり言いましょう。

 

この子、悪役ですよね?

自分はガメラに助けられたけど、街中ではバンバン人が死んでますから。

その上、ガメラ追放計画が上手くいかないと露骨に喜んでるし。

観客はガメラより、この子の方が先にいなくなればいいのにと、絶対思ってたハズ。

 

更にこの後、驚愕の展開が。

 

彼はガメラを宇宙に飛ばす最新のロケット施設を見せてもらったら、急に「僕、この施設、大好き」

 

えっ?

 

そしてガメラがロケットに乗せられて火星に飛ばされる姿を見ながら、

 

「僕も博士みたいになりたい」

ガメラ、さよーならー」

 

はっ???

 

こんだけ人を振り回しといて、もうガメラはいいのか?

 

全然スッキリしません。

 

子供にも受けも狙ったんでしょうが、最初のゴジラみたいに大人向けエンターテイメントに徹した方が、絶対に完成度は高くなったと思います。

まぁ、最初から子供とガメラの友情(少年の一方的な片想いですけど)をがっつり出すぐらいですから、正義の味方としてシリーズ化するのは既定路線だったのかもしれません。

 

ひょっとしたら、ゴジラが正義の味方化した「三大怪獣 地球最大の決戦」(この作品の前年公開)が大ヒットしたので、急遽方針を転換したのかもしれませんね。

 

怪獣映画の肝である特撮ですが、これが意外と頑張ってるんですよ。

構図やカメラアングル、人と怪獣やロケット施設との組み込み方など、想像してたよりレベルは高いです。シーンによってはゴジラに引けと取らない出来なんじゃないでしょうか。

 

でもね、決定的にダメなところがあるんですよ。

それはガメラのアクション。

これが完全に着ぐるみのドタドタ。歩く姿なんてデパート屋上のステージショーかと思いました。

手はブラブラ、歩くときは足の裏を見せながら歩く(そんな動物いないです)。

これじゃ怪獣プロレスです。

(昭和のゴジラシリーズも後半は、このガメラみたいな動きだったんですよね・・・)

肝心のガメラがこれでは、頑張ってる他の特撮部分が報われません。可哀想

 

さて、総評としては、正直飽きることはなかったですが、それは僕がB級映画、特撮好きで、「ダメな話、ダメな特撮でもそれなりに愛せる」からです。

平成ガメラのような、映画としてのクォリティの高さはありません。

そういう意味では特撮ファン向け。

ガメラの記念すべき一作目だから、一度は見ておいた方がいいよ」と言う映画です。

 

最後にガメラを火星に飛ばして問題解決って、産廃の違法投棄と同じですよね?

 

オリジナルの「ガメラ」シリーズ(大映製作)は、角川書店が版権を持っているみたいで、配信はKADOKAWAチャンネルじゃないと見れません。

そんなワケで今回はDVDレンタル屋さんで借りました。

 

新品のDVDは手に入るようです。

【エンゼル・ハート】ミッキー・ロークとアラン・パーカーの名コラボ

今回レビューするのはエンゼル・ハート(1987)。

監督のアラン・パーカー、主演のミッキー・ローク共にキャリアのピーク時に作られた作品です。

原作の話題性もあって、公開当時はそれなりに話題を集めてました。

最近はすっかり忘れられているようなので、今回見直してみます。

 

(あらすじ)

1955年のNY。私立探偵ハリーの元に、第二次世界大戦から神経症となって帰国したものの、行方不明となった兵隊で元歌手のジョニーを探して欲しいという依頼が来る。ハリーが調査を始めると、彼が会った人間が次々と惨殺されていくことに・・・

 


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実は公開当時に劇場で見れていません。

その後、名画座でも見れず、レンタルビデオで見たと思います。

 

監督・脚本は「ミッドナイト・エクスプレス(1978)」で注目され、その後「フェーム(1980)」「ピンク・フロイド ザ・ウォール(1982)」「バーディ(1984)」と良作を連発していたアラン・パーカー。この映画作成は、まさに脂の乗り切った時期です。

 

主演のミッキー・ロークも「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン(1985)」「ナインハーフ(1986)」とヒットを飛ばし、当時はちょい悪オヤジ的なセクシー俳優ともてはやされていました。

僕らの世代はミッキー・ローク=カッコいい」っていうイメージの人が多いんじゃないでしょうか。

最近の怪優ぶりしか知らない人には全く想像できないですよね。

 

そんな旬な二人が、「悪魔のバイブル」と呼ばれ、アメリカで廃刊運動が起こった原作を映画化したのがこの作品。

そりゃ当時は話題になります。

 

そう言えば何で「エンジェル」じゃなくて「エンゼル」なんでしょうね。

森永のお菓子みたいです。

 

ジャンルとしてはホラーになるのかもしれませんが、全般的にはミステリーの要素が強い映画です。

 

人探しを依頼された、しがない探偵が、手懸りを追う先々で情報を持っている相手が殺されていく。本当の依頼はただの人探しではなく、大きな裏があるのではないか・・・という筋立てはハードボイルド小説の鉄板モデル。

このプロットで一番有名なのは、レイモンド・チャンドラーの「さらば愛しき女よ」です。(1975年の映画版はなかなか良いです)

 

そんなワケでこの映画もハードボイルド的なノリで進んでいきます。

 

まずハードボイルドって、主人公が冷めたキャラじゃないといけないじゃないですか。

この映画の主人公も、よれて、イマイチやる気のない、どことなく冴えない探偵。

いつも淡々と、捻じれたタバコを咥えて、偽の身分証明書を見せ、相手から情報を引き出そうとする。

ミッキー・ロークが、このハードボイルドのお手本のような探偵を、ごく自然に演じてるんです。

 

まさに適役。

 

この冷めた探偵だからこそ、ラストに真実が分かり、一気に感情を爆発させるクライマックスの絶望感がよく出てたんだと思います。

 

ちなみにこの映画はホラーですが、純粋に彼のハードボイルド探偵(刑事)は「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」で見ることが出来ます。

こちらもお勧めです。

 

彼に仕事を依頼する謎の男は、超名優ロバート・デ・ニーロ

実は全てを知っていて、主人公をもてあそぶように真実へと導く男を上手に演じていますが、彼の場合、どんな映画でも、どんな役でも上手に演じるので驚きはないです。

あー、デ・ニーロだー、さすがだなぁ、というレベル。

多分、7割ぐらいの実力でやってるんじゃないんでしょうかね(笑)

 

あとシャーロット・ランプリングっていう有名女優さんが出てます。

重要な役ではあるんですが、意外にあっけなく殺されてしまうので、なんか勿体ない気がしました。

 

この映画のポイントの一つが、話の後半の舞台がニューオリンズということ。

原作はずっとニューヨークが舞台のようですが、映画化にあたりアラン・パーカーニューオリンズに変えてるんです。

アラン・パーカーは脚本も担当)

 

「キャットピープル(1982)」の時にも書きましたが、アメリカの南部はブードゥー教や迷信などの土着文化が強い地域。

まさにニューオリンズはクライマックスの「怪談話」に向かっていくにはうってつけの場所。この変更はナイスアイディアでした。

 

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実際に映画の中でも、ニューオリンズの雰囲気やブードゥー教が不安感を引き立てるのにとても効果的でした。

あまりに物語に「ニューオリンズ」がしっくり溶け込んでいるので、原作より映画の方が面白いんじゃなかろうかと思いました。

 

さて、話はクライマックスの直前まで「探しているジョニーには何か重大な秘密があって、それを知られたくない人間が、先手を打ってジョニーのことを知る人間を次々と殺していく事件」という、普通の探偵物として進んでいきます。

 

殺人シーンがややドギツイ目ですが、「羊たちの沈黙(1991)」に近いノリなので、ミステリー&ハードボイルドの雰囲気を壊すことはありません。

前情報がなければ、絶対にホラーなんて思わないはずです。

 

そんな雰囲気から一転してホラーな展開になるのは、真実が分かるラスト20分。

ホラーと言っても怪物や無敵の殺人鬼は出てきません。

ただ、この話が最初から「怪談話」だったということが分かるんです。

ここで観客は、普通の探偵ものに見えていたいろいろな場面が、実は別の意味のあるシーンだったんだと知るんです。

この展開は「シックスセンス」(1999)に似てますね。

 

この構成は上手いです。

 

ただ残念なのが、謎解きで伏線らしきものが全部回収されているように見えないこと。

メインのネタはちゃんと説明されるので、「この映画、ワケがわからない」ということはありません。

反面、「何故、記憶を失ったジョニーがブロードウェイに捨てられたのか」等すっきりと理解出来ない部分が残りました。

今回見直しても、そこだけは丁寧さに欠けるなぁ、という感想は変わりませんでした。

 

この映画のもう一つの見どころは、丁寧に作られた映像です。

まさに1955年のアメリカのハードボイルドの雰囲気に浸れます

 

乱雑な探偵の事務所や主人公のよれよれの恰好、古びた街並み等といったハードボイルドの教科書のような「絵」を、アラン・パーカー監督は全く手を抜くことなく作り上げてるんですよ。

 

この監督って、何気ないスタイリッシュな絵作りが上手く、予告編を見るだけでもワクワクさせられました。

 

また音楽もアンニュイなジャズがベースで、なかなか良いんです。

夜中に間接照明の部屋で流す音楽って感じ。

CDは廃盤ですが、サブスクでは聞けます。

Harry Angel

Harry Angel

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役者、演出、話全てが良く出来た作品なので、このまま忘れ去られていくのは惜しいです。

 

この映画はサブスク(Nextflix、Prime Video、U-Next)にはなかったので、DVDレンタル屋で借りました。

権利関係でサブスクでは配信出来ないんでしょうか。

 

ちょっと高めですが、Blu-Rayは手に入るようです。

 

【フューリー(1978)】デ・パルマには超能力が似合う

超能力ものって好きなんですよね。

だって超能力って中二病の夢じゃないですか。

 

超能力映画って結構ありますよね。

「キャリー」「炎の少女チャーリー」「AKIRA」「エスパイ」・・・

そんな中で、密かに推しの映画があります。

それが今回調査をした「フューリー」(1978)。

地味なんですが、なかなかの佳作なんです。

 

(あらすじ)

超能力を持つ息子を元同僚にさらわれてしまった元スパイの主人公。彼はスパイ組織から追われながらも、何とか息子の居場所を見つけ取り戻そうとする。そんな中で息子と共鳴する超能力を持った少女がいることを知り、研究所から連れ出そうとするが・・・


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監督は「アンタッチャブル」(1987)「ミッションインポッシブル」(1996)のブライアン・デ・パルマ

この映画も「殺しのドレス」同様に、大作監督になる前の一本です。

 

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彼が超能力を扱うのは、「キャリー」(1976)に続いて二本目。

「キャリー」が70年代を代表するホラー映画なのに比べて、「フューリー」は存在を忘れてる人も多い地味な作品。

 

でも、僕的には彼の作品の中で結構好きな方。

まぁ、同じく彼の忘れられた作品「ミッドナイトクロス」(1981)が好きだから、ちょっと僕の嗜好が変わってるのかな、とも思ってたんですが・・・

 

フューリー パンフレット表紙

いやいや、今回見て、やっぱり普通に面白い!

 

この映画の超能力は、自分の好き勝手に使えるんじゃなくて、感情が高ぶると発動するという設定。

だから超能力者たちの感情が高ぶる → ドラマ的に盛り上がる → 超能力発動 → 更に盛り上がる、となかなか上手な構造になってるんです。

 

この映画も公開時に劇場で見たんです。

その時の記憶に残ってるのは、全部超能力を使っているシーン

勿論、話も超能力が発動されるポイントポイントしか覚えてなくて、主人公が元敏腕スパイだなんてすっかり忘れてました。

 

でもこの映画、超能力を扱っているんだけど、超能力者がメインじゃないんです。

あくまでも連れ去られた息子を探す父親(超能力なし)の話。

このベースとなっているドラマが結構出来がいいんですよ。

改めてこの辺りのサスペンス演出の上手さは、さすがデ・パルマ監督。

この屋台骨がしっかりしているのが、この映画の面白さの要因ですね。

 

また超能力の国家利用を企む主人公の元同僚を演じるのは名優ジョン・カサベテス。

彼のふてぶてしいまでの悪役ぶりが、実はこの映画の肝。

やっぱりサスペンス映画って、悪役の存在感が映画の出来・不出来を左右しちゃいます。

いくら主人公が魅力的でも、対する悪役が小物っぽい雰囲気だと盛り上がらないですよね。

 

反対に主人公のカーク・ダグラスマイケル・ダグラスの実父)はちょっとくたびれてるかなぁ。

元々アクションスターの側面がある人なので、スパイ時代のノウハウを使って追っ手をかわする主人公役が的外れというワケではないと思うんですよ。

ただね、おじいちゃんっぽさが出てるんです・・・ラブシーンなんてちょっと痛々しい

この役は同じような年齢の役者でも、もう少し若さを感じさせる人にやらせた方が良かったと思いますね。

 

さて超能力は、話の上ではメインじゃなくとも重要なファクターです。

次にこうの映画が面白いのはやはり超能力の見せ方

特に前半は印象的なシーンが多いです。

 

・ ヒロイン(超能力者)が模型の列車を脳波の強さで動かす実験をやると、列車が暴走して脱線

・ アラブ人テロリストに父親を殺されたと思い込まされてる息子が、遊園地で遊ぶアラブ人を見て、彼らが乗っている遊具のボルトを外して、吹っ飛ばす

 

他にも相手に触れるとその人の記憶や考えが読めてしまう代わりに、相手は目や鼻から大量出血、なんていうのもあります。

 

そしてクライマックスは大友克洋の「童夢聖悠紀の「超人ロックか?という大サイコキネシス発動大会。

このシーンは映画的(視覚的)な面白さが見るものをぐいぐい引っ張ってくれます。

 

最後はこれで終わったと思ったところで、もう一発。

受身気味だったヒロインが、一気に攻めに変わるカタルシスは最高です。

かと言って、ブライアン・デ・パルマ監督お得意の「夢でした」ではないのでご安心を。

 

デ・パルマ監督の作品にしては、とってもストレートなタイプの映画です。

良い意味で観客の期待通りに進んでいくと言っていいでしょう。

だから、かなり見やすいと思います。

だからと言って「ありきたいでつまらない」ということはなく、話の展開も適度にドキドキさせてくれるし、超能力の表現や話への織り込み方も良いです。

贅沢を言えば、「殺しのドレス」ほどデ・パルマ監督得意のヒッチコック風味のドキドキのカメラワークがないのが残念でした。

 

70年代によくあった派手さのない小作品ですが、佳作なので是非みなさんにも見て貰いたいです。

 

ちなみに音楽は「STAR WARS」のジョン・ウィリアムス。

僕は彼の小作品が好きで、このサントラもお勧めです。


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この映画はAMAZON PRIMENetflix、U-Nextのサブスクにもなく、近くのDVDレンタル屋になかったので、今回もTSUTAYA DISCAS(DVD宅配レンタル)のお世話になりました。

 

また新品のDVDも入手出来ないようです。

ちなみにサントラCDも入手困難。

このまま幻の映画になってしまうんでしょうか・・・

 

【ピンク・フラミンゴ】史上最低のお下劣映画の真相はいかに

80年代からカルト映画好きのマストアイテムと呼ばれている奇作。

変態家族が変態ぶりを競うという、おかしな内容。

そして絶対的な存在感を放つ主演女優(?)

その映画こそカルトの金字塔ピンク・フラミンゴ(1972製作/1986日本公開)。

遂にその映画にチャレンジする時が来ました。

ピンクフラミンゴ チラシ

(あらすじ)

変態三昧がたたって偽名でトレーラーハウスで生活するディヴァイン。同居する家族も卵しか食べない母親、やることしか考えてない息子、覗きが趣味の娘と一癖も二癖もある。大衆紙が「ディヴァインこそ、世界で一番お下劣な人間」と評したことで、ある変態夫婦が対抗心を燃やした・・・

 

(予告編にはお下劣なシーンはほとんど出きませんので、悪しからず)


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随分前から名前は知ってました。

多分、日本公開前から。

でも、勇気がなかったんですね。

そもそもレンタルビデオ屋でも置いてあるところは稀。

少なくとも当時僕が住んでいる家の近くのレンタルビデオ屋にはありませんでした。

(ここのレンタルビデオ屋には変な客がいたみたいで、普通のヒット映画を借りたら、映画の後半に裏ビデオがダビングされてたことが3回ぐらいありました)

 

そんなワケで今回、初体験してみました。

こんなに時間をかけてしまうなんてカルト映画オタク失格ですね。

 

見たのはノーカット・無修正版。

無修正版といっても、完全に無修正ではなく、何か所かボカしがありました。

それでも「あー、そこまで見せちゃうんだ」っていうシーンがあるので、見る時は要注意です。

それもエロさはゼロ

特にカップルで怖いもの見たさで見るとか、親がいるところで見るのは絶対に止めた方がいいです。

(勿論、恋人や親がこの手の映画好きのカルトマニアや変態さんなら話は別ですけど)

 

映画のテーマ(?)は変態合戦。

でもやってることは露出だったり、覗きだったり、と意外と小学生レベル

生肉を肉屋の店頭で股に挟んだりするのはちょっとどうかな?と思うのもありますが、ショッキングに思えるものはそんなにありません。

 

女性を地下室に閉じ込めて、子供を産ませ、その子供を売り飛ばす、っていうのに「うっ」とくる人もいると思いますが、ここ近年のゴア系や非道系の映画やネタを見慣れた目には、普通にブラックジョークに見えます。

 

僕が長年警戒していたような「見ていてシンドクなる」ようなことはないです。

(繰り返しますが、普通の人にはシンドイと思います)

 

ただし超有名なラストシーンは予想通り強烈でしたが。

(どんなラストシーンか興味のある方は、Wikipediaで調べてみて下さい)

 

期待してたより衝撃度は低くく、現代のサブカルチャーファンだったら、サラっと見られるんじゃないですかね。

 

確かにこの映画が作られた50年前は、かなりの問題作だったんでしょう。

でも50年の間にスプラッター映画が出来、更に進化したゴア系の残酷映画が出来、「JACKASS」のような超グロいおバカ映画が生まれたせいで、エログロ、変態度合いといったモラルのハードルが下がっちゃったんですねー。

 

そう考えると、まだそういう刺激に慣れていなかった80年代に、この映画を経験しておきたかったです。

もしあの時代に経験していたら、トラウマになったかもしれないし、人生変わったかもしれないと思うと、とても残念です。

 

しかし、この映画が「史上最低のお下劣映画」であることには変わりません。

モラルのハードルも今よりずっと高い70年代だったからこそ、生まれた映画でしょう。

だから反対にモラルが緩くなった今の時代に、同じような映画が生まれる可能性はないからです。

だから永遠の「史上最低のお下劣映画」です。

まさに70年代の文化遺産

だからと言って、皆様に見ることを勧めるワケではありません。

あしからず。

 

主演のディヴァイン(ドラァグ・クイーン)のインパクトありますね。

変態行為なしでも、巨体や奇抜なメイク、喋りや立ち居振る舞いで存在感は抜群。

この映画はDVDのジャケットやポスターも真っ赤なドレスを着た彼女一人姿ですし。

 

でも意外と変態プレーをするのは脇を固める人間が多く、彼女が出ずっぱりというワケではありません。

それでも見終わった後に残るのは、「ディヴァイン、見たいなぁ」という気持ち。

だからこの映画は「ディヴァインの映画」です。

 

ジョン・ウォーターズ監督が彼女(彼?)を主演に7本も撮ったのが分かる気がします。(最後の「ヘアスプレー」(1988)は普通のミュージカル)

ほとんどが「妖しい映画」のようです。

 

この「ピンク・フラミンゴ」も当然(?)AMAZON PRIMENetflix、U-Nextのサブスクにはありません。

近くのDVDレンタル屋にもありませんでした。

というワケで、今回も最終兵器「TSUTAYA宅配」を利用しました。

 

調べたところ、U-Nextのサブスクでは、この監督・主演コンビの「マルチプル・マニアックス」(1970)が見れるようなので、いつかトライしたいです。

 

ピンク・フラミンゴ」の新品DVDはあるようですが、結構いい値段します・・・

【シークレット・レンズ】高校生の時にはチンプンカンプンだった映画は、実は奥が深かった

映画を見ていて、何となく大筋は見えてるけど、ディティールがよく分からない、この登場人物のストーリー上の立ち位置が分からない、というパターンにはよく出会います。

しかし最初から最後まで見たのに、話がチンプンカンプンだった、って映画は、そんなにありません。

ショーン・コネリー主演の「シークレット・レンズ」(1982)は、まさにそんな映画です。

 

(あらすじ)

主人公はニューヨークの地方テレビ局のレポーター。中東を取材中に、女性ジャーナリストと知り合い、更に武器商人と出会う。女性ジャーナリストは実はCIAのスパイで、武器商人が持っていた原爆の情報をイスラエルに伝えようとするが、殺されてしまう。主人公が取材を進めるうちに、原子爆弾を巡ってCIA、現米大統領、ライバルの次期米大統領候補、某国の国王などの思惑が複雑に絡んでいることに気付く・・・


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今回見る気になったのは、「高校生の時、全く理解出来なかったが、今見たら理解出来るんだろうか?」という素朴な疑問からです。

 

30年以上、サラリーマンをやってきたお陰か、今回は話を理解することができました。

だが、改めて思ったのは、

 

高校生の僕に理解しろ、というのは無理!

 

でした。

 

この映画は、当時の国際政治情勢を圧縮したブラックコメディ。

中東の米傀儡政権、中東テロリスト、イスラエル、CIA、米大統領民主党っぽいです)、次期大統領候補(共和党っぽい)、中立を装う武器商人・・・

これらが、いろいろと駆け引きをして話が進んでいきます。

 

とにかく当時のネタになりそうな情報がてんこ盛り。

いや、詰め込み過ぎ。

今見ても、基礎知識がないと「何言ってるんだかよく分からない」状態。

 

当然、遊び惚けていて、世界情勢に疎い高校生に理解するのは到底無理です。

 

話は、裏で手を結んでいるとか、反対に裏では裏切ってるとか、そんな複雑な展開が足早に進みます。

時々、あらすじを読んでいるだけの気分になるほど、雑な展開もあり、辻褄合ってる?強引じゃね?という場面もしばしば。

 

はっきり言えば、観客置いてけぼりです。

 

やっぱり高校生で理解するのは無理。

 

更にブラックコメディという割に、笑えるようなシーンは皆無

ショーン・コネリーが007っぽく、ユーモアとシリアスの間のような軽妙な演技をしているのが救い。

あと80年代を代表するの小悪党役者のヘンリー・シルバが、妙に大げさな演技でテロリストの親玉を演じてますが、これも笑えると言えば笑えるのかなぁ・・・

 

反対にハーディ・クリューガーの武器商人やキャサリン・ロスのCIAのスパイなんて、大真面目な演技で笑える要素ゼロです。

 

そもそも筋立て自体も「博士の異常な愛情」(1964)のような強烈な政治への皮肉はありません。

どこで観客をニヤリとさせようとしてるか、最後まで謎

これだったらブラックコメディにせずに、シリアスな政治ドラマにした方が良かったんじゃないかと思います。

 

ちなみにショーン・コネリーのレポーターは狂言回しで、問題の解決には一切ノータッチ。

ただ狂言回しという役柄は悪くなかったと思います。

反対にショーン・コネリーじゃなかったら、暗くて、重くて、理解困難な映画になてった恐れがあります。

 

最後に彼は何故かカツラを取ってみせるんですが、それもユーモアなんでしょうか?

全く笑えないし、必要がないと思うんですけど。

 

これじゃ、ショーン・コネリーのフィルモグラフィから忘れ去られちゃいますよね。

 

シークレットレンズ パンフレット表紙

 

このパンフレット、まるで007ですよね?

よく見たら手に持ってるのカメラ

当然、劇中にショーンコネリーがビキニの美女が絡むシーンはないですし、背景にあるような戦車やヘリコプターがばんばん出てくるようなシーンはありません。

これぞ、昭和の宣伝!

 

このポスターを見てアクション娯楽作だって勘違いした高校生の僕は悪くないですよね??

 

 

ちなみにこの映画を見たのは岐阜のロイヤル劇場。

二本立てで、併映は「ピラニア2/殺人魚フライングキラー」。

「殺人魚フライングキラー」のレビューで、「こんな二本立てをデートに選んで、本当にやっちまったと思いました。」書きましたが、今回「シークレットレンズ」も見直して、本当にその通りだ、と深く反省しました。

(デートなのに下調べが杜撰過ぎるって、当時の僕を叱ってやりたい)

改めて、この映画デートで呆れずに、次の映画デートにも付き合ってくれた彼女は立派な人でした。

ありがとう。(平身低頭)

 

 

pagutaro-yokohama55.hatenablog.com

 

ちなみにあまりにマイナー過ぎるのか、AMAZON PRIMENetflix、U-Nextのサブスクにもなく、近所のDVDレンタル屋さんにもありませんでした。

というワケで今回もTSUTAYA宅配レンタルの力を借りて視聴しました。

 

でも何故か新品のDVDは普通に入手出来るようです。

【Phil Lynott – Songs For While I’m Away】フィルのことがよく分かる70点のドキュメンタリー

僕が大好きなバンドはThin Lizzy

アイルランドのロックバンドで、主に70年代に活躍し、84年に解散。

リーダーで作曲家でカリスマだったフィル・ライノットが86年に他界したことで、Thin Lizzyは永遠に消滅してしまいました。

そんな彼の生涯を追ったドキュメンタリー「Phil Lynott – Songs For While I’m Away」が発売されたので購入しました。

 

 

(あらすじ)

アイルランド人の母親と黒人の父親を持つフィルは、アイルランドで育ち、ローカルバンドとして始まったThin Lizzyを世界的なバンドに導く。しかし80年頃から徐々にスランプとなり、バンドは84年に解散。フィルはソロ、新バンドと模索する中で急逝する。

 


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彼の生涯を2時間という枠の中で、上手にまとめてます。

インタビューも豊富で、インタビューされる人の選び方も悪くないです。

フィルの生前の音声も結構使われてます。

またアイルランドの街でふんだんにロケをしたりと、Thin Lizzy愛があります。

Thin Lizzy=フィル・ライノットと言えばアイルランドですからね。

 

無名時代~Thin Lizzy大ヒット前までの話は、見たことがない映像も多くてThin Lizzyファンとして凄く楽しめました。

 

インタビューの中では、やはりヒューイ・ルイスが一番「おおお」となりました。

彼が売れる前にThin Lizzyの前座をやったことや、Thin Lizzyの名盤「Live and Dangerous」にゲストで参加していることは、ファンの間では有名な話なんですが、ちゃんとこういうドキュメンタリーで話をしてくれるのは、ファンとして嬉しかったです。

 

(「Baby Drive Me Crazy]という曲でハーモニカを吹いてるのがヒューイ・ルイス。曲の途中のメンバー紹介でフィルが「ハーモニカはヒューイ・ルイス!」って言ってます)

Live And Dangerous [Analog]

Live And Dangerous [Analog]

Amazon

 

Thin Lizzyのアルバム6枚のジャケットを描いたジム・フィッツパトリックが出てるのもファンとしてはニヤリだったんじゃないでしょうか。

(彼がジャケットを描いてた人って説明はなかったですが)

 

あとゲーリー・ムーアが抜けた後に、急遽助っ人として参加したミッジ・ユーロ(ウルトラボックス)がコメントしているのもマニア向けの「面白い人選」でした。本人は全然音楽のジャンルが違うから、呼ばれてビックリ、だったそうです。勿論、当時のファンもビックリしたと思います(笑)

このドキュメンタリーで彼がThin Lizzyで演奏する映像は初めて見ました。明らかに服装や演奏ポーズがバンドに合ってないのがおかしかったです。

 

(Youtubeにもありました)


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劇中の選曲も悪くなかったですね。

かなりツボを押さえた選曲だったんじゃないでしょうか。

僕の大好きな「それでも君を」もあったし。

アイリッシュメロディを取り入れた名曲「Black Rose」がなかったのは残念ですが、そこは同じくアイルランドのことを歌った「Eemrald」を使ったので、重複をさけたのかもしれません。

ただ「Eemrald」を使うなら、あの中間部の印象的なツインのハモリフレーズまで流して欲しかったです。


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実は何よりも印象的だったのはダブリンの街中に、あんなにフィルのイラストや写真、落書きがあること。

本当にアイルランドThin Lizzy=フィルは愛されてたんですね。

あれを見るとアイルランドに行ってみたくなります。

 

ただしThin Lizzyファンだからと言って、このドキュメンタリー全てが良いと思ったワケではありません。

 

一番気になったのは、元メンバーのインタビューの少なさ

出てきたのはギタリストのエリック・ベルとスコット・ゴーハム、キーボーディストのダーレン・ワートンだけ。

 

幼馴染で、フィルと並んでバンドを最初から最後まで支え続けたブライアン・ダウニーが出演しないのは寂しいですね。エピソードもいっぱいあったでしょうに。

あとは黄金期のギタリストであるブライアン・ロバートソンの証言も欲しかったなぁ。(ただブライアンは、いつも酔っぱらってるから、インタビューしたけど、映画に使えなかった可能性あり)

 

ギタリストと言えばゲーリー・ムーアのことにほとんど触れられてないのは何かあるんでしょうか。

彼は10年前に亡くなっているので、インタビューは無理ですが、フィルにとってアイルランド時代からの重要な人物なので、もっと触れて欲しかったです。

エリック・ベル脱退後は、すぐにツインになったんじゃなくて、ゲーリーと一緒に何曲か作って発表してるし、彼が正式参加したアルバム「Black Rose」は最高傑作と言われてるし、Thin LIzzy解散後にゲーリーがフィルを誘って曲を作って大ヒットさせてるし。

 

全体的にも、黄金期と呼ばれるスコット・ゴーハム&ブライアン・ロバートソンのツインギター時代の後のことは駆け足のように、はしょられてるのは不満でした。

特にスノーウィー・ホワイトとジョン・サイクスがギターを弾いてた時代や、解散後のソロ活動や新しいバンド「Grandslam」が完全に素通りなのは、かなり片手落ちです。

スランプになった時の、彼のあがきもちゃんと描いて欲しかったです。

(個人的にスランプ~解散期の3枚のアルバムは好きなんです。特に最後の「Thinder and Lightening」はメタルっぽくてThin Lizzyらしくないと言われてますが、めっちゃめちゃ聴き込みました)

 

 

そんなワケで、重要人物が登場しなかったり、ファンとして語って欲しかったエピソードを飛ばしていることを差し引くと70点ぐらいの出来です。

せめてThin Lizzyの後半~死ぬまでの時期もきちんと描いた3時間ぐらいの完全版を作って欲しいです。

その時は間違ってる作曲者のクレジット(「Got to give it up」の作曲者はスノーウィ・ホワイトではなく、スコット・ゴーハム)や、アメリカツアーの時に写ってる写真(日本の地下鉄と新幹線の中)は修正して下さい(笑)

 

この映画は他の国では配信しているようです。

しかし、例え日本で配信があったとしても、Thin Lizzyファンの僕は、ブルーレイを買っていたハズです。

 

余談ですがThin Lizzyは1996年からジョン・サイクスとスコット・ゴーハムを中心に再結成し、今もツアーをやっています。

僕も96年に中野サンプラザで見ました。

好きな曲ばかり演奏してくれるので嬉しかった半面、やっぱりフィルがいないThin Lizzyはただの同窓会バンドです。

 

個人的にフィル亡き後に、一番Thin Lizzyを感じさせてくれたのは、ゲーリー・ムーアが2005年に地元アイルランドの首都ダブリンでやったフィル・ライノット・トリビュートですね。これは泣けます。

ボーナストラックで、ゲーリー・ムーア、スコット・ゴーハム、ブライアン・ロバートソン、エリック・ベル、ブライアン・ダウニーのインタビューがあり、これも泣けます。

特にドラッグについてと、フィルの死ぬ間際の話はかなり生生しく、この映画にない部分を見事に補ってます。併せて見るといいんじゃないでしょうか。

 

このコンサートを主催したゲーリー・ムーアも既に亡くなって10年・・・

合掌

 

【キングコング(1976)】70年代風の深みを与えようとして見事に失敗

キングコングって何度も映画に登場してますよね。

最初にキングコングが映画に登場したのは「キングコング」(1933)。

その後、続編、リメイク、リブート、ゴジラとのバトル、メカコングとの戦いといろいろと登場。オリジナル版だけでも1976年と2005年に2回リメイクされてます

僕の世代にとって、最初にリアルタイムで触れたのは1回目のリメイクキングコング(1976)。

高層ビルの上で、戦闘機を鷲掴みにして吠えてるイラストにワクワクしました。

キングコング パンフレット表紙

(あらすじ)

時代は現代。未発見の島を見つけた石油会社は、そこに石油が埋蔵されてると睨んで、探査船を送る。その島に謎の生物が潜んでいると考えて密航した生物学者、救命ボートで漂流しているところを助けられた女優の卵を乗せて、探査船はついに島に到着。しかし無人だと思っていた島には原住民がおり、ヒロインをさらってわコングの花嫁として捧げられることになった・・・

 


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まぁ、この後はヒロインに恋したコングを捕まえて、ニューヨークで見世物にして一儲けしようと思ったら、逃げられて、最後はヒロイン片手に高層ビルに登る、っていうのはオリジナルと同じです。

その点ではオリジナルに比較的忠実なリメイクと言えます。

 

この映画は公開時に劇場で見ました。

岐阜駅の近くにあった日劇という、古くてうらぶれた映画館です。

ほとんど客がいなかった記憶があります。

でも大作扱いだったのか、当時の岐阜では珍しい同時上映なしの、一本上映でした。

 

余談になりますが、この頃(昭和50年前後)って話題の映画の公開前に、TVで1時間半~2時間の特番があったんですよ。

人気があったのが「007」、「SF映画」、「ホラー映画」(これは夏場がメイン)。

内容は映画の内容や見どころ紹介は勿論のこと、メイキングや同じジャンルの過去映画の紹介もありました。

007であれば「過去のジェームス・ボンドの秘密兵器を一挙見せます!」だし、ホラー映画では「(過去の)映画に登場したモンスター大集合!」、SFなら「全て見せます、宇宙人、超科学兵器!」と番組を膨らませてました。

 

勿論、このキングコングにも特番がありました。

その中で一番宣伝しまくってたのが、「今回のキングコングは最新の機械で動かしてる」ってこと。

 

そりゃ子供心に期待しましたよ。

めっちゃ、凄い映像が見られるんだって。

 

でも映画館を出る時は、「・・・・」でした。

 

そんなワケで、今回のレビューまで、46年間一瞬たりとも「もう一度見よう」という気になりませんでした。

 

監督のジョン・ギラーミンはオールスター大作「タワーリングインフェルノ」(1974)をヒットさせた後、ちょっと締まりのない大作をよく請け負って作ってた人。でもすぐに失速しちゃいました。

それでも見始めると意外にしっかりしてるなぁ、って思ったんですよ。

画面作りとかスケール感があって、なかなか上手い。

あれ?当時つまらないと感じたのは、こういう普通の映画的な良さが分からなかったのかな?と思ったんです。

 

が、それは間違いでした。

 

まず第一波がやってきます。

 

ジェシカ・ラング登場です。

のちにアカデミー主演賞を受賞する名女優です。

なんとこの映画がデビュー作。

 

演技は問題がありません。

問題はキャラ設定。

完全にスーパー天然さん。

謎の島へも「上陸したい、上陸したい」とピクニック気分。

更に上陸するなり、「私をつかまえてごらん。おほほほほ」って感じで、一人で森の方にダッシュ

 

他の登場人物が大人映画的にリアルな設定(未発見の油田探し、謎の生物生存の可能性を探る動物学者)なのに、彼女だけが非リアルな行動を繰り広げます。

 

頭の中がお花畑の彼女に振り回される他の登場人物たち・・・

見ていてイラっとします。

ヒロインに感情移入なんて無理。

 

そして第二波。

 

この謎の島のジャングルに入ると、それまで重厚だったロケ中心の画面が、急にしょぼくなります。

背景の山は絵、地面はコンクリートの上に土を盛っただけ、植物もジャングル特有の自然に茂ってる雰囲気ゼロのスカスカ度・・・露骨にスタジオで組んだセットです。

 

あれ、このスタジオセットの雰囲気、どっかで見たことあるぞ・・・

 

遂にコング登場。

 

・・・

 

これ、着ぐるみだよね?

 

・・・

 

昔、早朝の神田駅でサルの着ぐるみをきてフラフラしている人を見たことがあります。

あの後ろ姿に似てます。

 

機械仕掛けのキングコングだったはずじゃ・・・

 

そしてコングは大蛇と戦います。

着ぐるみのコングが大蛇を自分から体に巻き付けて、一人で芝居をしてるように見えます。

大蛇の頭だけが不自然にコングに嚙みつこうと左右に動くんです。

どうやら頭をつってるピアノ線で動かしているようです。

 

あれ、このモンスター同士のバトルの雰囲気、どこかで見たことあるぞ・・・

 

思い出しました。

これ、完全に子供向けになった昭和のゴジラ東宝チャンピオンまつり)でよく見た特撮です。

セットで作られたジャングル、明らかに人が入ってることが分かる着ぐるみの動き、怪獣プロレスと揶揄された不自然なバトル。

昭和生まれの子供たちには馴染みの東宝特撮です。

 

ハイテクじゃなかったのか???

 

あとで知ったんですが、機械はごく一部で、やはり基本は着ぐるみだったようです。

 

この着ぐるみのコング、何が一番問題かっていうと、体型。

手足の長さが明らかに人間。

ゴリラって手が長いのに、手足の比率が普通の人間と同じなんですよ。

(まぁ、人が入ってるんだから、仕方ないかも)

それがめっちゃ不自然。

 

その辺りは同じ着ぐるみでも、東宝の「キングコングVSゴジラ」(1962)のキングコングの方が作り物で腕を長くして、コング体型を再現しようと頑張ってたと思います。

 

この島で一番印象に残っていうのは、コングはジェシカ・ラングをさらうと、手のひらの上にのせて、指で服を脱がせようとするシーン。

この時のコングの顔が、リアルにニヤケてるんですよ。

セクハラ親父の顔です。

そんなところはリアルにしなくていいのに。

そんで、一瞬、おっぱいがポロンと出るんですよ。

同年代の友達(当時小学生)が今でも口を揃えて「覚えているのはあのシーンだけ」と言うぐらい印象的なシーンです(笑)

ってか、もうこの時点で、モンスター映画として破綻してますよね?

 

次の波はニューヨーク。

 

コングは大暴れし、人は踏みつけるは、電車は壊すわ、被害甚大。

高層ビルによじ登ると火炎放射器で攻撃されるコング。

(ちなみに今回登るのは911で崩壊した、今はなき貿易センタービル)

だが、主人公の動物学者が「やめろ!」

そしてコングが反対側のビルに飛び乗って、火炎放射器から逃れると、「やったー!」

 

まぁ、動物学者だから仕方ないんだろうけど、人がいっぱい死んでるのに「やったー」はないよね・・・

ヒロインもコングを殺さないで!を連発。

時代の流れとして、モンスターにも理解のある人物設定をしたんでしょう。

でも、あまりに人物像や話の深堀が出来てないので、ただ単に「他人の迷惑かえりみず、自分の主張だけを通しまくる」過激な環境保護団体みたいになってました。

 

これじゃ、主人公たちに感情移入は無理です。

見ている方もコングを応援した方がいいのか、倒された方がいいのか迷います。

 

きっと当時としての流行りの「悪がそのまま悪とは限らないし、善が必ずしも本当に善とは限らない」っていう風潮を、コングや登場人物に持ち込んだっぽいです。

きっと60年代のアメリカンニューシネマ以降の脱ハリウッド路線の影響でしょう。

でもその持ち込み方がヘタクソ過ぎて、映画に深みを与えるどころか、マイナスでしかありませんでした。

 

そもそもモンスター映画って、ある程度「悪と正義の対立構造」を作っておかないと楽しくないんですよね。

 

そして子供たちの心を打ち砕いた最後の波が、コングを倒す攻撃ヘリコプター。

 

え?ヘリコプター?

戦闘機ではなく、ヘリコプター?

 

またもやポスターに騙されました。

更にポスターは「昼」だけど、映画でこの場面は「夜」

勿論、コングの体型も全然違うし。(しつこい?)

 

日本の特撮とは違ったハイテクで動くリアルなコングが画面いっぱいに暴れ、最後は最新の戦闘機とのバトルを期待していた子供たち。

だが彼らが見たのは、「露骨に着ぐるみのコングがちょこちょこ暴れ回り、最後はヘリコプターにハチの巣にされる東宝特撮のグレードアップ版みたいな映画」でした。

 

やっぱりあの時の感想は正しかったようです。

だって今回も見終わった後、「もう一度見ることはないな」って思いましたから。

 

まぁ、責任の半分は過剰に期待をさせたポスターと特番にあるとは思いますが。

 

ジェシカ・ラングもこの映画を黒歴史にしてるんじゃないんでしょうかね。

 

この映画はサブスク(AMAZON PRIME、Nextflix、U-Next)にはなかったので、レンタルDVD屋で借りました。

 

新品のDVDは手に入るようです。

【マジックボーイ】テータム・オニールって覚えてますか?更にその弟って知ってますか?

テータム・オニールって覚えてますか?

僕ら世代には、そこそこ人気にあった女優さんです。

70年代には巻頭に彼女のカラー写真がデカデカと載ることも多々ありました。

すんげー可愛いというワケではないんですが、ソバカスがあって、愛嬌があって、隣のちょっと可愛い女の子っていう雰囲気が、日本人のファンには刺さったんでしょうね。

 

そのテータム・オニールには弟がいたんです。知ってました?

名前をグリフィン・オニール。

彼も俳優で、数本の映画に出ています。

その一本が「マジックボーイ」(1982)。

U-nextのサブスクで見つけた時は、思わず「おお、懐かしい!」となりました。

 

忘れてた小学校の友達に会った気分です。

 

(あらすじ)

今は亡き天才手品師を父に持つ主人公は、日々手品の腕を磨いている。しかし家族は父親の跡を追うことにいい顔をしない。ある日、手品屋で、市長のドラ息子に言いがかりをつけられ、頭に来た主人公は彼のポケットから財布を盗む。しかしその財布はドラ息子が市長から盗んだものであり、財布には秘密が隠されていた・・・


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これ、封切の時に衆楽劇場という映画館で見ました。

同時上映はナスターシャ・キンスキー主演、コッポラ監督のミュージカル「ワン・フロム・ザ・ハート」(1982)。

勿論、目的は「ワン・フロム・ザ・ハート」でした。

「ワン・フロム・ザ・ハート」は音楽が素晴らしく、このサントラでトム・ウェイツを好きになりました。

話が逸れちゃいましたが、ついでに見た「マジックボーイ」は、派手さはないけど悪くないな、と思ったんです。

 

そう言えばこの映画、制作総指揮がコッポラでしたね。

あの時の二本立ては、コッポラ繋がり

 

しかしコッポラが製作だからといって、全然大作ではありません。

寧ろ小作。

きっと製作費は「ワン・フロム・ザ・ハート」の何分の一かなんだろうなぁ。

 

マジックボーイ パンフレット表紙

グリフィン・オニールの役は手品の才能があり、父親のように偉大なマジシャンになりたいと願う少年。彼が市長のドラ息子(ラウル・ジュリア)のドタバタに巻き込まれる話。

 

改めて見ると・・・

 

全体的に間延びするところはないので、飽きるようなことはありません。

正直、ひねった展開も、深みのある人物像もないので、見終わった後に心に残るものは(僕としては)ありませんが、軽いコメディタッチの青春映画というフォーマットからすれば十分合格点でしょう。

 

マジックを使ってピンチを切り抜けるシーンが全編にテンポ良くちりばめられているので、マジシャンが主人公という設定はちゃんと生かされてました。ここは期待通りですね。

 

物語の中盤に、食堂でナンパした年上の女の子を前に、張り切って父親が得意だった水槽脱出をやるものの、うまくいかず、間一髪おじさんに助け出されるくだりがあるんですよ。

これがちょっとシリアスなムードで、軽いノリの中で良いアクセントになってました。

(この女の子が、フツーっぽいんだけど、妙に可愛い)

 

あとラストの郵便ポストに逃げ込むのは、ナイス!と思いましたね。

(でもポストにナイフを捨てちゃダメだと思いましたがw)

 

こういうヒネリのない映画って、キャスティングや出演者の持ち味の良し悪しがダイレクトに出ちゃうものですが、グリフィン・オニールの脇を固める役者たちは、適材適所が多く、またこの映画の方向性をちゃんと理解した演技をしていて、安心感があります。

(その分、意外感はゼロですが)

 

出演者の中で、特にいいのがイカレたドラ息子を演じるラウル・ジュリアです。

相変わらず硬軟織り交ぜた演技は本当に上手。

この映画のキモは主人公ではなく、ラウル・ジュリアでしょう。

存在感はピカイチです。

この人、シリアスな役も上手くって、「推定無罪」(1990)で、ハリソン・フォードの弁護士役をやってるんですが、これも上手かったですねー。本当に早世(享年54歳)が悔やまれます。

 

ホント、期待せずに見たら、「ちょっと得した気分」になる映画です。

あ、褒めてるのか、けなしてるのか分からないですね。

 

ただし、全てにおいてソツない、良い出来かというと違います。

 

まず主人公がマジックの天才には見えない

 

ちょっと目端の利く小学生が、教えてもらったトリックや技を使ってるだけにしか見えない。

 

要は小手先っぽいんですよね。

 

原題は「The Escape Artist」=脱出の芸術家」となってるんだけど、芸術家感ゼロ。

他のマジシャンの模倣レベルにしか見えません。

 

そして、結構気になったのがグリフィン・オニールの演技力

この主人公に求められるのは、子供っぽさを残しながら、大人たちと丁々発止をするしたたかさ。

いい意味で大人ぶった面を出せたら良かったのかと。

だけど、そういう微妙なキャラを体現できず、「頑固で、意地っ張りな子供」にしか見えないことがありました。

 

弟を叱るときに言ってはいけないセリフを言っていいですか?

 

「姉ちゃんは、そういう役がちゃんと出来てたのにねぇ」

 

庇うワケではないですが、彼は彼なりに頑張ってました。

ただ演技の才能が今一つ感じられないだけです。

 

特に相手役が演技達者のラウル・ジュリアですから、余計に目立つのかもしれませんね。

 

オニール兄弟のお父さんはライアン・オニールっていう有名俳優。

お姉さんのテータイムは10歳の時にお父さんと共演した傑作コメディ「ペーパームーン」(1973)でブレイク。

3年後に出演した少年野球映画「がんばれ、ベアーズ」(1976)の大ヒットで、日本で人気を不動のものとしました。でもその後は大した映画出演もなく、テニス界のスーパースター、ジョン・マッケンローとの結婚を期に引退しました。

夫婦で日本のCMに出ていたこともあります。


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弟のグリフィンも、この映画を入れて数本で早々と俳優を止めたみたいです。

もうちょっと本人の演技力に見合った役を選んでたら、役者を続けていたかもしれませんね。

 

最初に書いたように、U-nextのサブスクで見れましたが、AMAZON PRIMENetflixにはありませんでした。

新品のDVDも手に入らないようです。